決め方を考える! ボルダルール

決め方を考える! ボルダルール
政治の世界だけでなく、社会のいろいろな場面で「投票」が行われています。中学入試に投票についての問題が出ていました。

問題に挑戦!

問題
みなさんは学校で多数決を行うことはありますか。クラスの代表1名を決めるとき、候補者が多くいるため多数決で決める場合、通常は一番多くの支持を集めた人が代表となります。しかし、この選び方が本当に公正な選び方といえるのでしょうか。
(広尾学園中学校 2021年 一部抜粋)
多数決というのは、1人1票投票して、いちばん多く票を集めた人が選ばれるというものですよね。

決め方のルールは多数決以外にもある、と問題は続きます。
問題
その方法の一つが「ボルダルール」という投票の方式です。この方式では、投票の際に順位をつけてもらい、1票につき1位3点、2位2点、3位1点、といったように順位ごとに点数をつけます。多数決と比較して、ボルダルールで選ぶことの長所は何でしょうか。
(広尾学園中学校 2021年 一部抜粋)
ボルダルールは、18世紀にフランスの数学者ボルダが初めて提唱したものです。
実は、このルールを適用すると多数決とは異なる結果になることもあるんです。

多数決とボルダルール

どういうことなのか、慶應義塾大学経済学部の坂井豊貴教授に聞きました。
坂井教授
「普通、僕たちが物事を決めるときは、多数決が多いんですよ。多数決というのは、いろいろな候補の中から、『いちばん好きな人はこれ』というふうに選びます。実は意思表示の幅があんまり大きくないんですよ。ボルダルールだと、1位はこの人、2位はこの人、3位はこの人というように意思表示します」
どういうことなのか、9人の有権者が、候補者ABCの中から1人を選ぶケースで考えてみましょう。
多数決では、4人がA候補、3人がB候補、2人がC候補を選んだとします。
坂井教授
「多数決のもとでは、人々は自分がいちばん支持する候補に投票します」
ということは、この場合4人が1位に推しているAさんが勝つわけですね。
坂井教授
「だけれども、Aさんは過半数の支持を得てないですよね」
確かに、9人中4人ですね。

ボルダルールのしくみ

次に、ボルダルールの場合を考えてみます。
例えばA候補を1位に選んだ4人は、2位にC候補、3位にB候補の順に投票すると仮定します。
ボルダルールでは、1位のA候補に3点、2位のC候補に2点、3位のB候補に1点が加算されます。
同じ考えの3人も投票すると、A候補が、12点、B候補が、4点、C候補が、8点となります。
次に、B候補を1位に選んだ3人は、2位にC候補、3位がA候補として投票。
A候補に3点、B候補に9点、C候補に6点が加わり、それぞれ15点、13点、14点となります。
そしてC候補を1位に選んだ2人は、2位がB候補、3位がA候補として投票すると、A候補に2点、B候補に4点、C候補に6点が加算され、A候補17点、B候補も17点、C候補は20点になります。
多数決ではA候補でしたが、ボルダルールではC候補が選ばれます。
坂井教授
「多数決は、全体から支持を受けなくても勝てるんですよ。比較的多数派のグループにめちゃくちゃ強い支持を受けたら勝てます。一方、ボルダルールは万人配慮型でないと勝つことは非常に難しいです。C候補は広い層から割と高い支持を受ける候補ということになります」
投票の常識が覆されるような驚きですね。

“票の割れ”が結果に影響

坂井さんは多数決では、いわゆる「票の割れ」が結果に影響を与えることもあるといいます。
2000年のアメリカ大統領選挙がその顕著な例だと指摘します。
共和党のブッシュ候補と民主党のゴア候補、そこに第3の候補が立候補しました。
坂井教授
「最初は民主党のゴアが、共和党のブッシュに勝つ、かなりその予想がかたかった。ところが結果は、そうなりませんでした。ゴアに相対的によく似た第3の候補、ラルフ・ネーダーというのが立候補したんですね。そうするとどうなるか。ゴアの票の一部がネーダーに流れるわけです。要するに、似た候補の間で票が割れるんですよ。そうすると漁夫の利でブッシュが勝つ。本来なら多数派の支持を得ていた候補というのが、票の割れで分散してしまって、第2の候補が勝ってしまうということになります」

賞の選考にボルダルール

ボルダルールは賞の選考で、よく取り入れられているといいます。
大リーグのMVPも、ボルダルールを応用したルールで決まります。
マンガ大賞や本屋大賞もボルダルールやそれに似たルールが使われていると言います。

なぜ賞を選ぶときには、ボルダルールがよく使われるのでしょうか。
坂井教授
「いわゆる普通の多数決は、全然うまく決められないということを知ってるんだと思います。あともうちょっと細かい意思表示を人はしたいんですよ。Mー1グランプリというのがありますよね。決勝では審査員が点数を与えたりしますよね。例えば、あるお笑いコンビに90点あげたりとか、でもあのお笑いコンビは85点だなと、微妙な違いを例えば数字で表現したいんです。『1個だけ100点つけなさい』というのが多数決なんですよ」

決め方を考える

中学校の入試問題で、ボルダルールを問う問題が出ていますが、その意図、あるいは意義を坂井さんはどう考えるのでしょうか。
坂井教授
「何が大事かというと、ボルダルールを使えばそれでいいという話ではありません。多数決という方法もある、ボルダルールという方法もある。それで、比較できるというのが大事なんです。2つあると、3つめ、4つめと思考が広がるんですね。そうすると、われわれの社会には、実はもっといろいろな可能性があるんだということに気が付くんです」
国政選挙では、スロベニアやナウルでボルダルールやそれに似たルールを使っているそうです。
ほかにも、多数決でも決選投票を行うとまた結果が違ってくることもありますし、実は物事の決め方というのは、いろいろあるんですね。
どこか、多数決で決めるものだと思い込んでいないでしょうか?どんな方法で、みんなの意思をくみ取って決めるのがいいのか、そこから議論することも大事ではないかと感じます。
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