「秋の褒章」俳優の内野聖陽さんなどが受章へ

長年にわたって、その道一筋に打ち込んできた人や、芸術やスポーツの分野で功績のあった人などに贈られる「秋の褒章」の受章者が発表され、俳優の内野聖陽さんや、作家の小川洋子さん、それに競泳の大橋悠依さんら東京オリンピック・パラリンピックの金メダリストなど、合わせて808人と22の団体が受章することになりました。

ことしの「秋の褒章」を受章するのは、人命救助活動で功績のあった人に贈られる「紅綬褒章」が3人。

ボランティア活動で功績のあった人や団体に贈られる「緑綬褒章」が9人と22の団体。

長年にわたって、その道一筋に打ち込んできた人に贈られる「黄綬褒章」が244人。

芸術や文化、スポーツ、それに学術研究の分野で功績のあった人に贈られる「紫綬褒章」が90人。

公共の仕事で顕著な功績があった人に贈られる「藍綬褒章」が462人です。

このうち「紫綬褒章」は、
▽徹底した役作りと確かな演技力に定評があり、NHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」では、ヒロインの父親の役を務めた俳優の内野聖陽さん、
▽現代社会に生きる人たちの不安などを描く映画作品を数多く発表し、巨匠・黒澤明監督にちなんで「もう一人のクロサワ」とも称される、映画監督の黒沢清さん
▽芥川賞作家で、全国の書店員たちが「いちばん売りたい本」を投票で選ぶ「本屋大賞」の第1回の受賞作「博士の愛した数式」などの作品で知られる小川洋子さんらが受章します。

さらに
▽夏のオリンピックで日本の女子選手として初めて1つの大会で2つの金メダルを獲得した競泳の大橋悠依さんや
▽東京オリンピックの新競技、スケートボードで日本選手として史上最年少の13歳で金メダルを獲得した西矢椛さんら、東京オリンピック・パラリンピックの金メダリスト77人も受章します。

「秋の褒章」の受章者は、例年、皇居で天皇陛下からお言葉を受けることになっていますが、新型コロナウイルスの影響で、去年に続き、取りやめになりました。

俳優 内野聖陽さん「目指すもの まだまだ遠く長い道のり」

紫綬褒章を受章する内野聖陽さんは、神奈川県出身の53歳。

1996年のNHKの連続テレビ小説、「ふたりっ子」に出演して注目を集め、舞台やテレビドラマ、映画などさまざまな作品に出演するようになります。

2007年に放送されたNHKの大河ドラマ、「風林火山」では戦国武将の武田信玄に仕えた主人公の天才軍師、山本勘助を演じて話題になりました。

最近ではNHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」で、ヒロインの父親役を演じています。

受章について内野さんは「褒章というものは、伝統芸能など決まった分野に与えられるというイメージを持っていて、テレビや舞台、映画などいろいろな媒体で活動している俳優とは無縁のものだと思っていたので驚きました。すごくうれしいですが、自分の目指すものは、まだまだ遠く長い道のりなので、もっと豊かになっていきたいと思っています。いろんな方向からアプローチして役を作っていき、自分自身が想像がつかないような人間の諸相を見てみたいと思っています」と話しています。

映画監督 黒沢清さん「職人としての腕上がった証ならうれしい」

紫綬褒章を受章する映画監督の黒沢清さんは、神戸市出身の66歳。

大学時代から8ミリ映画を撮り始め、昭和58年に映画監督として本格的にデビューしました。

監督と脚本を務めた1997年公開の「CURE」で注目を集め、その後も、現代社会に生きる人たちの不安などを描く作品を数多く発表してきました。

国際映画祭でも高い評価を受けていて、2001年にはフランスのカンヌ映画祭で「回路」が国際批評家連盟賞を受賞したほか、去年はベネチア国際映画祭で「スパイの妻」が監督賞に選ばれています。

2005年からは東京藝術大学大学院映像研究科の教授を務めていて後進の育成にも力を注いでいるほか、映画に関する評論も数多く手がけています。

受章について黒沢さんは「細く長く続けてきたことが、このような評価につながったのだろうと思います。きょうまでかろうじて途切れることなく続けられた理由は、ひとえに幸運だったからです。映画をひとりで撮ることはできないわけですから、みんなで作業して、私は見守る、つまり現場監督です。そういう職人としての腕が、わずかずつではありますが上がった証としての紫綬褒章だとしたら、これほどうれしいことはありません。世界の巨匠たちに比べれば、私などまだまだ駆け出しです。これからも脇目もふらずただ映画を続けていく、そんな覚悟が固まってきました」とコメントしています。

小説家 小川洋子さん「今までと同じことをやり続けよう」

紫綬褒章を受章する小説家の小川洋子さんは兵庫県西宮市在住の59歳。

岡山県出身で、早稲田大学を卒業後、1988年に小説家としてデビューし、1991年に「妊娠カレンダー」で芥川賞を受賞しました。

透明感のある筆致で、喪失や記憶をテーマにした物語を数多く紡ぎ出し、2004年に「博士の愛した数式」が第1回本屋大賞の受賞作としてベストセラーとなるなど、日本を代表する女性作家の1人として活躍し、芥川賞の選考委員を務めています。

また最近は「密やかな結晶」がイギリスで最も権威のある文学賞「ブッカー賞」で翻訳部門の最終候補にノミネートされるなど海外でも高い評価を受けています。

受章について小川さんは「自分としては好きな小説をただ書き続けてきただけですが、大変ありがたく思っています」としたうえで、今後については、「来年、還暦になりますが、これから全く違う世界を書こうという気持ちはなく、今までと同じことをやり続けよう、むしろそれでいいんだと思っています。夜明けの淵をさまよいながら、行くあてもなく、救いの手を差し伸べてくれる人もないような、そういう人の声を書き続けていくんだろうなと思います」と話しています。

アニメ映画監督 湯浅政明さん「支持と ありがたく捉える」

紫綬褒章を受章するアニメーション映画監督の湯浅政明さんは福岡県出身の56歳。

大学を卒業後、多くのアニメーション作品に携わり、2004年に公開されたアニメーション映画の初監督作品、「マインド・ゲーム」では多くの賞を受賞して注目を集めました。

2017年にはフランスで開催された世界最大級のアニメーション映画祭、「アヌシー国際アニメーション映画祭」の長編部門で、「夜明け告げるルーのうた」が最高賞にあたる「クリスタル賞」を受賞して大きな話題となりました。

また、ことしイタリアで開かれたベネチア国際映画祭で若手監督や革新的な作品を集めた「オリゾンティ部門」に「犬王」がノミネートされるなど、国内外で高い評価を受けています。

受章について湯浅さんは「もうそんな歳なのだなとは思うものの、まだ何かを成し遂げた自覚もなく、これからへの支持とありがたく捉えて、再び足場を整え、成す様、休みながら進んでゆきたいと考えています」とコメントしています。

五輪 競泳で2冠 大橋悠依選手「引き続き 自己ベストを」

紫綬褒章を受章する大橋悠依選手は、東京オリンピックの競泳で、女子400メートル個人メドレーと女子200メートル個人メドレーの2種目で金メダルを獲得しました。

1つの大会での2冠達成は夏のオリンピックでは日本の女子選手として初めての快挙でした。

大橋選手は受章について「すごく名誉ある章だと思うのでうれしい。これまでの頑張りを認めていただいた形だと思うし、受章した者として恥ずかしくないような人になりたい」と話しました。

また、東京オリンピックを振り返り「2つの金メダルはうれしかったが、それ自体に価値はなくて今後、どうやって自分のプラスにしていくかが意味のあることだと思っている」と話していました。

そして、今後について「立場や経験から得た考え方でまた違う水泳人生を始められると思う。一区切りして、新しいスタートを切り、引き続き自己ベストをねらっていきたい」と気持ちを新たにしていました。

五輪 空手で「金」 喜友名諒選手「名誉ある受章で光栄」

紫綬褒章を受章する喜友名諒選手は沖縄県出身の31歳。

東京オリンピックの空手男子形で金メダルを獲得しました。

喜友名選手は「名誉ある受章でうれしいし、光栄に思う。自分が受け取っていいのかなという思いもある」と率直な心境を話しました。

東京大会については「小さい時からずっとテレビで見ていた舞台で金メダルを獲得できて改めてよかった」と振り返ったうえで「オリンピックの金メダリストという自覚を持っていきたい」と決意を示しました。

地元、沖縄県の人たちに対しては「県民の方々の応援が力になったので感謝している。今後も沖縄の人たちに少しでも元気を与えられたらいい」と話しました。

そして、今後について「空手を通して、いろいろなことを学ぶことができたので、次世代の子どもたちの大きな夢になるようなきっかけを与えたい」と意気込みを話していました。

五輪 ボクシング「金」入江聖奈選手「金がもたらしてくれた」

紫綬褒章を受章する入江聖奈選手は鳥取県出身の21歳。

東京オリンピックのボクシング女子フェザー級で金メダルを獲得しました。

ボクシングに日本の女子選手としては初めて出場し、俊敏なステップワークや得意の左ジャブなどの持ち味を発揮して快挙を成し遂げました。

また、明るい性格やカエルが好きな一面など、競技以外でも大きな話題を集めました。

入江選手は「監督や両親にすごいものだと聞いた。そのようなものをいただけるとは驚きです」と喜びの心境を話したうえで「金メダルがもたらしてくれたのだと思う。東京オリンピックでは人の温かさを感じ、自分の夢をかなえることができて、一生、忘れられない大会になった」と振り返りました。

地元、鳥取県の人たちに向けては「たくさんの人に見守られながらの金メダル獲得だった。これからも鳥取県の皆さんに喜んでいただけるような競技結果をお届けしたい」と話しました。

今月、都内で行われる全日本選手権に東京大会後の初めての公式戦として出場する予定で「周りから金メダリストとして見られると思うが、それに伴う内容で勝ちを求めていきたい」と抱負を話していました。