バイデン大統領 G20と「COP26」に向け出発 強い指導力示せるか

アメリカのバイデン大統領は、G20サミット=主要20か国の首脳会議と国連の気候変動対策の会議「COP26」に出席するため、ヨーロッパに向けて出発しました。外交政策の中核に据える気候変動対策などで一連の会議をリードし、アフガニスタンからのアメリカ軍の撤退をめぐる混乱などで傷ついた国際社会からの信頼を取り戻し、強い指導力を示したい考えです。

アメリカのバイデン大統領は、今月30日と31日にイタリアのローマで開かれるG20サミットと、来月1日と2日にイギリスのグラスゴーで開かれるCOP26に出席するため、28日午後、首都ワシントン近郊の空軍基地を大統領専用機で出発しました。

バイデン大統領が就任後、外国を訪れるのは、ことし6月にG7サミット=主要7か国首脳会議などでヨーロッパを訪問して以来、2回目です。

アメリカは、8月、アフガニスタンからの軍の撤退で大きな混乱を招いたほか、9月にはオーストラリアに原子力潜水艦の技術を提供することを発表し、オーストラリアとの潜水艦開発計画が破棄されたフランスの強い反発を受けました。

ホワイトハウスのサキ報道官は27日の会見で、一連の対応で各国との間に認識のずれがあったことを認めたうえで、今回の大統領の訪問については「パンデミックへの対応や世界経済の回復に向けて利害の調整などを行うことになる」と述べ、国際協調を推進する考えを強調しました。

バイデン大統領としては、今回の一連の会議で外交政策の中核に据える気候変動対策などで各国をリードし、傷ついた国際社会からの信頼を取り戻すとともに、強い指導力を示したい考えです。

バイデン政権 気候変動対策への取り組みと課題

アメリカのバイデン政権は、気候変動対策を最優先課題に掲げ、外交政策の中核に据えるとともに国内では、中間層の拡大に向けた経済対策の一環としても位置づけています。

バイデン大統領は、ことし1月の就任初日に前のトランプ政権で離脱した温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰するための文書に署名しました。

さらに、気候変動問題を担当する大統領特使を新たに設け、オバマ政権で国務長官を務めるなど外交経験が豊富なケリー氏を起用。

ケリー氏は特使として、各国を訪れパリ協定の目標達成に向けて協力を求めてきました。

そして、ことし4月にはバイデン大統領みずから気候変動サミットを主催し、アメリカの温室効果ガスの排出量を2030年までに2005年に比べて50%から52%削減する新たな目標を表明したうえで、各国にさらなる取り組みを求めました。

バイデン政権としては、気候変動対策に力を入れることで、国内の産業界の技術革新を図り、労働者の所得を増やし、中間層の拡大につなげたい思惑もあります。

ホワイトハウスは温室効果ガスの削減に取り組むことで、電気自動車の製造に携わる労働者や革新的な技術を用いる農業従事者など数百万人の中間層の雇用が創出できるとしています。

ただ、温室効果ガスの排出量を2030年までに半減する目標が達成できるのか危ぶむ見方も出ています。

バイデン政権は目標の達成に向けて大型の歳出法案の中に、電力会社に再生可能エネルギーなどの調達を促す「クリーン電力プログラム」を盛り込みました。

しかし、議会上院で与野党の勢力がきっ抗するなか、野党・共和党だけでなく、与党・民主党の一部の議員も反対の立場で、計画が実現するかどうかは不透明な状況です。

バイデン大統領 リーダーシップ発揮できるか

アメリカのバイデン大統領にとって今回のヨーロッパ訪問は、アフガニスタンからの軍の撤退をめぐる混乱などで傷ついた信頼を取り戻し、国際社会に強い指導力を示すための重要な場となります。

バイデン大統領が外国を訪問するのは、ことし6月にG7サミットが開かれたイギリスなどを訪問して以来、2回目です。

このときは「アメリカ第一主義」を掲げたトランプ前政権から、同盟国や友好国との連携を重視する国際協調路線への転換を鮮明に打ち出しました。

ところが8月、アフガニスタンからの軍の撤退に伴って大きな混乱を招き、長年戦ってきたイスラム主義勢力タリバンの復権を許したほか、先月にはオーストラリアに原子力潜水艦の技術を提供すると発表し、オーストラリアとの潜水艦の開発計画を破棄される結果となった同盟国フランスを激怒させました。

こうした対応は、国際社会でのアメリカの信頼を損ねたとされるほか、アフガニスタンの問題をめぐっては、アメリカ国内でバイデン大統領の支持率にも打撃を与えました。

各種世論調査の平均値を見ますと、アフガニスタンで混乱が広がった8月下旬に初めて「不支持」が「支持」を上回り、今月27日時点で「支持」は42.4%と、就任後最も低い水準となっています。

こうした中で国際会議に臨むバイデン大統領としては、特に気候変動対策でリーダーシップを発揮し、中国や発展途上国などから温室効果ガスのさらなる排出削減を引き出したい考えです。

ただ、アメリカ自身の削減目標を達成するための柱となる、電力会社に再生可能エネルギーへの転換を促す1500億ドル規模の優遇措置が野党・共和党だけでなく、与党・民主党の一部議員の反対で実現が危ぶまれています。

外交の専門家で、アメリカ外交問題評議会のリチャード・ハース会長は、NHKのインタビューに対し「バイデン大統領はこれまでのところ、重要法案を通すことができずにいる。アメリカはほかの国をことばだけでは説得できない。ことばには行動が伴う必要があり、アメリカ自身が目に見える行動を示さなければならない」と述べ、気候変動対策を盛り込んだ法案の成立を抜きにして、バイデン大統領が国際的に指導力を発揮することは難しいという見方を示しています。

専門家 “国を挙げた取り組み示す狙い”

COP26の会議に参加するアメリカのバイデン大統領の狙いについて、アメリカのシンクタンク「アメリカ進歩センター」で気候問題分野の上級部長を務め、バイデン政権に助言を行っているフランセス・コロン氏は「バイデン大統領は12人を超える閣僚級のメンバーを伴って参加する。政権のすべての人材とアメリカのすべての力を結集し気候危機に取り組んでいることを示すことになる」と述べ、国を挙げて気候変動対策に取り組んでいる姿勢を国内外にアピールする狙いがあると指摘しました。

その上で、気候変動問題を担当するケリー特使が、中国やインドなど各国を訪問してきたとしたうえで「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするというより大きな目標に向けて各国に働きかけてきた。この目標の達成に向け、さらなる取り組みを呼びかけるだろう」と述べ、各国に対し、より具体的な取り組みを求めていくという見方を示しました。