熱海 土石流で関係先捜索 盛り土の崩落防ぐ措置怠った疑い

ことし7月、静岡県熱海市で起きた大規模な土石流をめぐり、警察は崩落の起点にあった盛り土を造成した不動産会社と今の土地所有者が崩落を防ぐ措置を怠った疑いがあるなどとして、28日午後、関係先を捜索しました。

ことし7月3日に熱海市の伊豆山地区で大規模な土石流が発生し、大量の土砂が住宅地に猛烈な勢いで押し寄せて、26人が亡くなり、今も1人が行方不明になっています。

警察は28日午後、崩落の起点にあった盛り土を造成した不動産会社が、崩落を防ぐ措置を怠った疑いがあるなどとして、神奈川県小田原市にある会社など、関係先を捜索しました。

また、盛り土を含む土地の今の所有者についても、関係先を捜索しました。

土石流をめぐっては被害者の団体の会長で、亡くなった瀬下陽子さんの長男の雄史さんが、ことし8月に警察に告訴状を提出していました。

告訴状では、▽盛り土を造成した不動産会社の代表は、水が集まりやすい谷の最上部に盛り土を造成したにもかかわらず崩落を防ぐ措置を怠ったとして業務上過失致死の疑いが、▽今の土地所有者は安全対策の工事の必要性を認識しながら放置し続けたとして、重過失致死の疑いがあると主張しています。

警察は不動産会社の代表や今の土地所有者に事情を聞いたり、押収した資料などを詳しく分析したりして、実態解明を進めることにしています。

造成会社と現在の所有者は

盛り土を造成した不動産会社の代理人を務める弁護士はNHKの取材に対し、「警察からは家宅捜索を行っていると聞いた。必要な対応はしていきたい」と話しています。

また、盛り土が造成された土地の今の所有者の代理人を務める河合弘之弁護士は、今月県が「盛り土」をめぐるこれまでの対応を記した文書の記録を公表した際に「所有者は市や県の指導に従い、盛り土について土地を購入してから土石流災害が生じるまで一切の工事をしていません」などとコメントしています。

熱海 斉藤市長「事実関係の解明を」

熱海市の斉藤栄市長は28日報道陣の取材に対し、「警察が強制捜査に入ったと聞きました。詳細は把握していないが、この捜査によって事実関係が解明されることを期待しています。警察からの協力の要請にはしっかりと応えていきたい」と述べました。

遺族「捜査で証拠確保 大きな意味」

警察が盛り土を造成した会社の関係先を捜索したことを受けて、被害者の団体の会長で、亡くなった瀬下陽子さんの長男の雄史さんは、「警察が捜査を始めるまではもう少し時間がかかると思っていたが、迅速に動いてくれたことは心強く思う。行政側からは盛り土に関するさまざまな関係資料が出てきているが、警察の捜査によって業者側の当時の対応が分かるような証拠が確保されることは大きな意味があると思う。今後の捜査のいきさつを見守りたい」と話していました。

また、被害者の団体の弁護団長を務める加藤博太郎弁護士は、「今回の土石流は単なる天災ではなく人災であり、警察の捜査によって真実の解明に近づくのではないかと考えている」と話していました。

盛り土 これまでの経緯

【平成21年3月 造成始まる】
土石流の起点にあった盛り土は、神奈川県小田原市の不動産会社が平成19年に静岡県の熱海市に造成を届け出て2年後の平成21年3月に谷を埋める形で造成が始まりました。
現場では計画を超える大量の土砂が運ばれ続け、熱海市が土砂の搬入や工事の中止を繰り返し指導しましたが、盛り土は届け出の高さ15メートルを大幅に超えるおよそ50メートル、土砂の量は今回崩壊しなかった分も含めて県の推計で届け出の2倍にあたる7万立方メートルを超える量になったとみられています。

【平成23年 市が危険性を認識】
平成23年、土地の権利が不動産会社からいまの所有者に移ったあとも市は危険性を認識し、県と対応を相談したうえで不動産会社側に安全対策を実施するよう命じる文書を作成したものの発出を見送っていました。
市は、発出を見送った経緯について、それまで安全対策工事の要請に応じていなかった会社側が工事を一部進めるなどしたことで盛り土の地盤の安定化が図られたなどとして、「一定の安全性が担保されたと判断した」と説明しましたが、その後、工事は中止されたままとなっていました。

【平成24年 盛り土に”ひび”】
そのよくとしの平成24年に撮影された写真では盛り土に”ひび”が入っていたことが確認され、県の資料では当時の状況について「浸食が発達しつつある」としています。

【平成25年 土地所有者側が土砂崩壊を想定】
さらに平成25年には、いまの土地所有者側が土砂の崩壊を想定し、対策工事の施工について県に文書で伝えていたことがわかっています。
文書には「前の土地所有者が放置した伊豆山漁港及び逢初川下流水域への土砂崩壊による二次災害防止の安全対策工事を施工する」と記されています。

土地所有者 代理人の弁護士「所有者本人は覚えがない」

一方、これについていまの土地所有者の代理人を務める弁護士は「所有者本人は今回の文書には覚えがないと言っている。今回崩落した箇所については、以前も土砂が下流に流れたことがあったので、行政側から『触らないでおいてほしい』という話があったと聞いている」としていて、危険だという認識はなく安全対策も行っていないと説明しています。