初のノーベル化学賞 福井謙一博士の研究メモ1300点 京大に寄贈

ノーベル化学賞を日本人として初めて受賞した福井謙一博士が書き記した研究メモおよそ1300点が、京都大学に寄贈されたことが分かりました。メモの内容は、化学から医学まで多岐にわたっていて、整理に当たった研究者は、福井博士の興味の幅の広さが分かる貴重な資料だとしています。

福井謙一博士は、京都大学工学部の教授だった1950年代に当時、最先端だった量子力学を駆使して化学反応の仕組みを明らかにし、1981年に63歳で日本人として初めてノーベル化学賞を受賞しました。

福井博士が亡くなってから20年余りがたち、自宅にあった資料などが去年、京都大学に寄贈されたことが分かりました。

資料の中には、福井博士が30代から40代のころに書き留めたとみられるメモが1300点余り含まれていて、日頃、浮かんだアイデアなどをカレンダーの裏などに書き留めています。
その中では、当時、薬害を起こした「サリドマイド」という薬に関する新聞記事の横に、赤いペンで、サリドマイドを少し変化させた物質の化学式が書き込まれていて、整理に当たった研究者は、薬害を起こさない構造を検討した可能性があるとみています。

また、「早急に考察すべき問題」として、がんの発生の原因となる遺伝子の異常について、化学的なエネルギーを元に考察する11枚にわたるメモも含まれています。

さらに別のメモでは、がん細胞の分裂する速度を詳細に検討しているほか、植物に含まれる化学物質や虫よけに使われる物質の分子構造のメモなどもあり、福井博士の興味が、化学から医学などまで幅広い分野に及んでいたことが分かります。
福井博士から指導を受け、現在は京都大学の福井謙一記念研究センターに所属して、整理に当たった田中一義名誉教授は「福井博士は、寝るときにも脇にメモ用紙を置いていたと言われるほどの『メモ魔』だった。興味の幅の広さが、優れた成果を生み出す土台となっていたことが分かる貴重な資料だ」と話しています。

このメモは、今後、京都大学のデジタルアーカイブのホームページで、画像データとして公開する予定だということです。