イタリアでワクチン接種進む 背景に「グリーンパス」

イタリアでは、人口の70%を超える人がすでに新型コロナウイルスのワクチン接種を済ませ、ヨーロッパでも最も接種が進んでいる国のひとつです。
背景には、ワクチンの接種や検査による陰性結果を記録した「グリーンパス」と呼ばれる証明が日常生活の多くの場面で必要になったことがあります。

ことし8月からは、レストランや美術館、長距離の交通機関などを利用する場合に証明の提示が必須となったほか、9月1日からは、学校の教職員や大学生に証明の所持が義務づけられました。

さらにイタリア政府は、10月15日から、すべての労働者に所持を義務づけ、その対象は2300万人にのぼります。

イタリアは、去年の春、ヨーロッパで最も早く感染が拡大し、長期間にわたって小売業や観光業を中心に経済が大きな打撃を受けました。

政府としては、踏み込んだ措置によってワクチン接種を促すことで、次の感染拡大の波を防ぎ経済活動への影響を最小限に抑えるねらいがあります。

イタリア各地にホームセンターを展開する企業は所持の義務化を受けて、出勤時間に入り口で証明を所持しているか確認していて、従業員がスマートフォン上のQRコードで証明を提示すると、担当者は専用のアプリで読み取って接種記録などを確認しています。

この企業では、去年、イタリアで感染が拡大した際に、全国120余りの店舗で休業や営業時間の制限を余儀なくされたほか、営業を再開してからも従業員に感染者が相次いで人手不足となるなど、売り上げにも大きく影響したということです。

企業によりますと、証明の所持が義務づけられてから、従業員のワクチン接種率が上がったということです。

この企業で「グリーンパス」を担当するピエルマルコ・テスタさんは「変異ウイルスによって今後、何が起きるか分かりません。こうした方法は日常的に実践することが難しいことでありませんし、職場での感染を抑え、安全性を高めるためにも役立ちます」と話していました。

また、従業員の男性は「安全な環境で、同僚もみなワクチンを接種しているので、安心して働くことができます」と話していました。

ECDC=ヨーロッパ疾病予防管理センターのまとめでは、イタリアの人口あたりの感染者数はスペインや地中海の島国マルタに続いて少なく、感染は抑えられてます。

「グリーンパス」について、ローマで市民に聞いたところ「ワクチン接種を進めるためによい方法だ」などと、前向きに評価する声が多く聞かれました。

G7のワクチン接種状況と接種証明などの対応

G7=主要7か国では、ワクチンの接種状況と接種証明の提示などの対応が国によって異なっています。

イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、ワクチンの接種を終えた人の人口に占める割合は、10月24日の時点で
▼カナダが73.56%と最も高く、
▼イタリアは70.8%、
▼日本は69.94%、
▼フランスは67.5%、
▼イギリスは66.77%
▼ドイツは65.64%、
▼アメリカは56.67%、となっています。

各国の感染状況については、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと(10月23日の感染者数)、1日あたりの感染者数は
▼イギリスが4万5102人、
▼アメリカが2万6998人、
▼ドイツが1万3863人、
▼フランスが6357人、
▼イタリアが3905人、
▼カナダが1118人、となっています。

各国では、ワクチン接種が進んだことや感染状況の改善に伴って、行動制限の緩和が進められています。

このうち経済活動を維持しながら感染を抑制する取り組みとして広がっているのが、飲食店の入店時にワクチンの接種を終えた証明を提示するよう義務づける措置です。

このうちフランスとイタリアでは、全国一律でレストランなど飲食店の入店時や長距離の交通機関を利用する場合などに、接種証明の提示が義務づけられています。

ドイツは、全国一律での接種証明の提示の義務化は行われておらず、州によって対策は異なります。

またカナダでも、一部の州で接種証明の提示を義務づけています。

イギリスでは、スコットランドやウェールズでナイトクラブなどの入店時に接種証明の提示が必要ですが、イングランドでは接種証明の義務化は見送られています。

アメリカでは、ニューヨーク市などで屋内の飲食店や劇場などの施設で接種証明の提示が義務づけられている一方、南部フロリダ州では飲食店などがワクチン接種の証明を求めること自体が禁止されるなど、地域によって対応が大きく異なっています。