ヨーロッパ 台湾と関係強化を図る動き活発 中国は強く反発

ヨーロッパ各国との貿易や投資の拡大を図るため、台湾の閣僚が率いる経済視察団が、現在、チェコを訪問しているほか、台湾の外交部長も24日、スロバキアなど複数の国に向けて出発する予定です。
ヨーロッパでは、台湾との関係強化を図る動きが活発になっていて、中国政府は強く反発しています。

台湾の経済視察団 閣僚のほかに企業関係者など60人以上が参加

台湾の経済視察団には、※キョウ明※キン国家発展委員会主任委員など2人の閣僚のほか、ITや精密機械の企業関係者など60人以上が参加していて、一行は、スロバキア、チェコ、リトアニアの3か国を歴訪しています。
視察団は、最初の訪問国スロバキアでは、宇宙開発、電気自動車などの分野で協力を深める覚書を交わし、スロバキア政府によりますと、スロバキア側も経済視察団をことし12月に台湾に派遣する計画だということです。
また、台湾の内閣にあたる行政院は21日の記者会見で、呉※ショウ燮外交部長が24日、スロバキアやチェコなどに向けて出発する予定だと発表していて、ヨーロッパでは、台湾との関係強化を図る動きが活発になっています。

これについて中国外務省が、「強烈な不満と断固たる反対を表明する」と強く反発したのに対して、スロバキア政府の高官はNHKの取材に対し、「これは経済の問題であり、経済関係に介入することは認められない」と反論しました。


※キョウは「龍」の下に「共」。
※キンは「金」の下に「金」を横に2つ。
※ショウは「かねへん」に「りっとう」。

チェコやスロバキアの市民からは

台湾の経済視察団が訪れているチェコやスロバキアの市民からは、中国の人権状況などを理由に台湾との関係を強化すべきだという声が聞かれました。

このうちチェコの首都プラハで話を聞いた30代の女性は、「中国の政治状況はよくないし、人々に自由がないように思う。台湾を支持しない理由はない。中国と大きなビジネス関係を持つよりも、よいことだと思う」と話していました。

20代の男性も、台湾は半導体の世界的な生産拠点で、ヨーロッパのサプライチェーン上、重要だとしたうえで、「最近、中国との関係は悪化していると思うが、それでもかまわない。台湾との関係を維持すべきだと思う」と話していました。

また、スロバキアの首都ブラチスラバでは、「中国は大きな国だ。慎重にしつつも、中国と関係を築くことが大切だと思う」などと、中国とも良好な関係を維持すべきだという声も聞かれました。

スロバキア 12月に経済使節団を台湾に派遣する計画

台湾の経済視察団は、21日から訪れていた最初の訪問国スロバキアでは、宇宙開発、電気自動車などの分野で協力を深める7つの覚書に署名しました。

署名式の中で、台湾の経済部の陳正※キ次長は、「今回の訪問を通じてわれわれは、台湾とスロバキアとの間で協力を深めるための、とてつもなく大きな機会があることがわかった」と述べ、関係強化に意欲を示しました。

署名式に参加した視察団の一行は、台湾で生産したスロバキアの国旗をイメージしたマスクをつけるなど、友好ムードを演出していました。
一方、スロバキア経済省のガレク次官は署名式のあと、NHKの取材に応じ、ことし12月、みずからをトップに、政府高官や企業関係者ら合わせて40人程度の経済視察団を台湾に派遣する計画だと明らかにしました。

またスロバキアでは、半導体を必要とする自動車の製造が盛んだとして、「半導体に関わる台湾の企業にもスロバキアに来てほしい」と話していました。

そして、台湾の外交部長がスロバキアを訪問することに中国が反発していることについて、ガレク次官は「中国からのいかなる投資や協力についても私たちは前向きだ」と中国との関係に配慮を示す一方で、「これは経済の問題だ。どんな国であれ、経済関係への介入は認められない」と反論しました。

※「キ」は「しめすへん」の右に「其」。

中東欧など 近年は中国側の対応に不満広がり距離をとる

中東欧などの国々は、2012年に中国との間で経済協力の枠組みを創設して関係の強化を目指してきました。

しかし、巨大経済圏構想「一帯一路」などを通じて、関係を深めようとする中国側から投資やインフラ事業などが期待したほど実現されていないとして徐々に不満が広がり、近年では中国と距離をとり、台湾との関係を強化する動きが出てきています。

このうちリトアニアは、ことし5月に中国との経済協力の枠組みを離脱したほか、国内では中国側からの抗議にもかかわらず、「台湾」の名を冠した出先機関の開設準備が進められています。

またチェコでは去年、大統領に次ぐ地位にある上院議長が、議員や企業関係者などおよそ90人の訪問団を率いて台湾を訪れ、蔡英文総統と会談したり、議会で演説を行ったりしました。

さらに、ことしに入ってからは、スロバキアとポーランドも連帯を示すためなどとして、新型コロナウイルスのワクチンを台湾に提供しました。
中国とヨーロッパの関係に詳しい中欧・アジア研究所のマテイ・シマルチーク氏は、NHKの取材に対して、「中東欧の多くの国々は投資などの約束が実現されず、中国に幻滅するようになってきた」と指摘しました。

そのうえで「そこに、人権問題や国際関係で強まる中国の影響力があわさって、中国に対して否定的な見方をする人が多くなってきている」と述べ、香港や新疆ウイグル自治区の人権状況や、南シナ海での軍事拠点化の動きなどへの警戒感がヨーロッパ全体で強まっているとしています。

またシマルチーク氏は、「EUにおいて中東欧は、いわば親台湾の政治を進めるけん引役となっている。台湾の呉※ショウ燮外交部長がこうした国々を訪れることは2年前には予想できなかったことで、驚きもあるが、今回訪問先に選んだのは自然なことだ」と指摘し、いずれの国も「1つの中国」政策を維持しながら、台湾との経済的、政治的な関係を強化していくという見通しを示しました。