東南アジアでのコロナ感染拡大 鶏肉の国内販売に影響

東南アジアでの新型コロナウイルスの感染拡大により、鶏肉の国内販売に影響が出ています。鶏肉の生産がさかんなタイで工場の操業が一時停止するなどした結果、商品の供給が不足したり、輸入価格が上昇したりしています。

食品メーカーのニチレイフーズは、タイの食品加工工場について、東南アジアでの感染拡大で周辺の国から働きに来ていた従業員が入国できなくなるなどして人手不足となり、一時、操業を停止しました。

現在は再開していますが、生産態勢は通常より縮小した状態が続いているため、タイで製造している冷凍食品のうち鶏のから揚げの一部商品について、今後、販売を停止する可能性があるとしています。

また、日本水産が感染拡大による人手不足でタイにある委託先の製造ラインの操業が制限されていたため、先月予定していた鶏肉のつくねの冷凍食品の販売を見送ったほか、味の素冷凍食品は、タイの工場から出荷している鶏肉の冷凍食品の供給量が当初の想定よりも少なくなり、日本のスーパーなどで品薄になっているということです。

タイ 加工済み鶏肉の日本輸出 急激に落ち込む

タイでは8月、一日あたりの新型コロナウイルスの新たな感染者が一時、2万人を超えるなど急速に感染が拡大し、これによって工場で従業員の感染や人手不足が起き、生産が止まったり、稼働が落ち込んだりしたことが輸出の減少につながりました。

タイの食品工場では、ことし4月以降、150か所以上で感染が確認されています。

農林水産省の農林水産物輸出入概況によりますと、日本は焼き鳥やから揚げ用などに加工された鶏肉を毎年50万トン程度、金額にして2500億円程度輸入していて、タイはこのうちおよそ6割を占める最大の輸入相手になっています。

しかし、タイ商務省によりますと、加工済みの鶏肉の日本への輸出はことし8月に急激に落ち込み、金額ベースで去年の同じ月と比べて29%減少したということです。

輸入価格が上昇

主な産地での感染拡大の影響は輸入価格にも表れていて、農畜産業振興機構によりますと、家庭用や業務用として日本に輸入されている冷凍の若鶏の価格は、1キロ当たりで、ことし4月には207円でしたが、8月には230円まで上昇し、前の年の同じ月と比べても12%値上がりしています。

また、今後の鶏肉の需給見通しについては、今月の輸入量は、タイとブラジルからの供給が減少すると見込まれ、前の年の同じ月をかなりの程度下回ると予測しています。

この結果、今月末の在庫は、国産ものも含め、前の年の同じ月を大きく下回ると予測し、過去5年間の平均と比べても17%余り少なく、大幅に下回ると見込んでいます。

市場関係者は「タイの工場での鶏肉製品の生産は、新型コロナの感染拡大を受け依然、滞っているとみられる。輸入品の在庫も減少傾向にあり、今後、輸入量や価格などの面で国内取引へのさらなる影響が懸念される」と話しています。

都内スーパー アメリカや中国産に仕入れ切り替えも

都内のスーパーでは、鶏肉を使った商品の品ぞろえに影響が出ています。

東京 練馬区のスーパーでは、先月ごろからタイ産の鶏のもも肉や、つくねなどの加工品の調達が難しくなり、商品によっては必要な量を確保できないものも出始めているということです。

また、例年、年末のクリスマス商戦に向けて、タイ産のローストチキンを仕入れていますが、ことしも500本を卸売会社に注文したところ「現地での生産が遅れ、どのくらい確保できるか不透明になった」として、販売中止の連絡があったということです。

このため急きょ、これまで扱いがなかったアメリカ産や中国産のものに仕入れを切り替える対応を迫られています。

さらに、タイ産が品薄になる中、ブラジル産の仕入れ価格も大きく値上がりしているとして、半年ほど前まで、税抜きで2キロ680円で販売していたブラジル産の冷凍鶏もも肉の店頭価格を現在は、980円に値上げしました。

それでも、販売競争が厳しい中で、仕入れ価格の上昇分をすべて転嫁することはできないといいます。
「アキダイ」の秋葉弘道社長は「ブラジル産の冷凍もも肉も、本来ならばもっと高い価格で売らないと商売が成り立たない。世界的に物流も滞っているという話も聞くので、影響がいつまで続くのか心配です」と話していました。