台湾から視察団がヨーロッパ訪問 相次ぐ関係強化の背景は?

ヨーロッパ各国との貿易や投資の拡大を図るため、台湾の閣僚が率いる経済視察団が、最初の訪問地スロバキアに到着しました。関係を強化する動きに対して中国は「強烈な不満と断固たる反対を表明する」として強く反発しています。

一方、ヨーロッパ議会は、EU=ヨーロッパ連合に対し、台湾との政治的な関係を強化するよう勧告する文書を採択しました。

視察団には2人の閣僚も参加

台湾の経済視察団は、ヨーロッパのスロバキア、チェコ、リトアニアの3か国を訪問する予定で、21日、スロバキアの首都、ブラチスラバに到着しました。

視察団には、キョウ明キン(きょう・めいきん)国家発展委員会主任委員と呉政忠 科技部長の2人の閣僚のほか、ITや精密機械の企業関係者など合わせて66人が参加しています。
スロバキア当局の関係者によりますと、一行は、スロバキアのビジネス関係者や経済担当の政府高官と会談する予定だということです。

視察団が23日から訪れるチェコでは、去年、上院議長が台湾を訪問しているほか、26日から訪れるリトアニアをめぐっては、それぞれの出先機関を新たに設置する準備が進められています。

台湾 外交部長も同時期にヨーロッパ訪問へ

この経済視察団の訪問とは別に台湾当局は、呉ショウ燮(ご・しょうしょう)外交部長が来週、スロバキアなどヨーロッパの国々を訪問すると発表し、中国は強く反発しています。

台湾の内閣にあたる行政院の羅秉成 報道官は、21日の記者会見で、呉ショウ燮外交部長が来週、スロバキア、チェコ、ポーランドを訪問すると発表しました。

外交部の欧江安 報道官によりますと、呉部長は今月26日にスロバキアで開かれるフォーラムで演説し、そのあとに訪れるチェコでは、上院議長や首都プラハの市長と面会する予定だということです。

ただ、呉部長がいつまで滞在するかなど、詳しい日程は明らかにされていません。

※ショウは「かねへん」に「りっとう」。

報道官 関係深めるのは「普遍的価値を共有しているから」

台湾からは別の閣僚が率いる経済視察団も20日夜から今月30日までの日程で、スロバキア、チェコ、リトアニアを訪問中です。

ヨーロッパでは、新疆ウイグル自治区の人権問題や、中国による台湾への軍事的圧力の強化などを背景に中国への警戒感が高まる一方、台湾との関係強化を図る動きが続いています。

羅報道官は「ヨーロッパ中部・東部の国が台湾と関係を深めているのは、強権体制に抵抗して民主化のプロセスを歩んだ経験と、自由や民主主義といった普遍的な価値を共有しているからだ」と指摘しました。

中国は、みずからと国交を結ぶ国が台湾の外交部長の訪問を受け入れることに強く反発しています。

中国外務省 訪問を認めたことに強く反発

これらの訪問の動きについて中国外務省の汪文斌報道官は21日の記者会見で、「台湾は中国の領土の不可分の一部であり、中華人民共和国政府が、中国の唯一の合法的な政府であることは、鉄の事実で、国際関係における原則だ。関係する国がこうした訪問を認めたことに強烈な不満と断固たる反対を表明する」と強く反発しました。

そのうえで、台湾当局に対し、「外国の助けを借りみずからの地位を高めようと政治をもてあそぶことは、最終的には必ず行き詰まる」と述べ、けん制しました。

ヨーロッパ議会は台湾との関係強化を勧告

一方、ヨーロッパ議会が21日採択した文書は、EUに対し、台湾との政治的な関係を強化するよう勧告するものです。文書では、台湾海峡の平和と安定に向けてEUと加盟国に積極的な役割を求めるなど踏み込んだ内容となっていて中国からの反発も予想されます。

ヨーロッパ議会は、EUに対し、台湾との政治的な関係を強化するよう勧告する文書について採決を行い、21日、賛成多数で採択されました。

文書では、まず、およそ半世紀ぶりに台湾に言及したことし4月の日米首脳会談の共同声明についても触れていて、中国をめぐる国際的な安全保障の動きを反映させたものとなっています。

一方で「1つの中国」政策についても言及し、中国側に一定の配慮を示した形です。

そのうえで文書ではEUに対し、中国が台湾への軍事的な圧力を強めていることについて深刻な懸念を示すとともに、台湾海峡の平和と安定に向けて加盟国と積極的な役割を果たすことなどを勧告しています。

台湾にあるEUの窓口機関の名称変更も勧告

また、台湾との関係が経済と貿易の分野にとどまらない幅広い関係であることを示すため、台湾にあるEUの窓口機関の名称を変更するとともにこの中に「台湾」の文字を盛り込むよう勧告しています。

文書に拘束力はありませんが、採択されたことで議会の総意とみなされます。

EUは、9月発表したインド太平洋戦略で、台湾との経済的な関係強化の方針を打ち出しましたが、今回の勧告は、政治的な関係強化まで求めるもので中国からの反発も予想されます。

ヨーロッパでも中国を脅威ととらえる認識ひろがる

文書を採択した背景には、ヨーロッパにおいても中国を脅威ととらえる認識が広がっていることがあります。

具体的には、中国は、世界各地で「一帯一路」の構想を掲げてインフラ整備を支援するなど経済的な存在感を強めたり、ヨーロッパ各国にある大使館を通して自国の主張を発信する活動を活発化させたりしているとして警戒感が強まっています。

また、ヨーロッパでは、台湾は中国からの圧力にもかかわらず自由や民主主義といった価値観を守っていると見られていて、こうした価値観を重視しているヨーロッパ議会としては、台湾と連帯する姿勢を強調したいねらいもあるとみられます。

さらに、世界的に半導体不足が続くなか、半導体の分野で存在感を示す台湾と戦略的な関係を築きたい思惑もあります。

今回のEUに対する勧告には拘束力はありませんが今月19日、勧告の内容を巡って行われた討論の場で、EU側は「『1つの中国』政策のもと台湾との関係や協力を発展させることに関心がある。台湾は同じ考えをもったパートナーでEUは、台湾の民主主義や法の支配、人権などに基づく体制を支持していく」と述べ台湾への関与を強めていく姿勢を強調しています。

取りまとめの議員「EUは中国一辺倒になるべきではない」

今回の勧告を取りまとめたベイマース議員はNHKの取材に対して「ヨーロッパ議会は、ヨーロッパやそのほかの地域でも、中国共産党による影響力と支配がこれ以上大きくなるのを止めなくてはならないと強く感じている。アジアで中国以外の国や地域と関係を深めることは、中国が民主主義を抑圧しようとした場合の重要な保険となる。EUは中国一辺倒になるべきではない」と話しています。

中国外務省「強烈に非難するとともに断固反対」

文書採択について、中国外務省の汪文斌報道官は21日の記者会見で、「国際関係の基本原則や『1つの中国』の原則などに著しく違反しており、強烈に非難するとともに断固として反対する」として強く非難しました。

その上で、汪報道官は、「ヨーロッパ議会は、中国の主権と領土を損なう言動や、挑発、対抗を直ちにやめるべきだ。関係する国々は、国家主権と領土を守る中国人民の揺るぎない意志と強大な能力を見くびらないほうがいい」と述べました。