熱海 土石流 市が盛り土の危険認識も 対策命じる文書 発出せず

ことし7月、静岡県熱海市で起きた土石流災害で、熱海市の斉藤市長は10年前に上流部の盛り土の危険性を認識し、安全対策を命じる文書を作成しながら、発出を見送っていたことを明らかにしました。

斉藤市長は「一定の安全性が担保されたと判断した。当時の判断は正しかった」などと述べたうえで、行政の責任については明言を避けました。

ことし7月に熱海市伊豆山地区で起きた土石流災害で、熱海市の斉藤栄市長は18日、記者会見を開き、上流部にあった盛り土をめぐるこれまでの対応について説明しました。

この中で斉藤市長は、10年前の平成23年に市が危険性を認識し、県と対応を相談したうえで盛り土を造成した会社側に安全対策を実施するよう命じる文書を作成したものの、発出を見送っていたことを明らかにしました。

その理由については、それまで防災工事の要請に応じてこなかった業者が工事を一部進めるなどし、盛り土の地盤の安定化が図られたなどとして「一定の安全性が担保されたと判断した」と述べたうえで、当時の判断については「正しかったと思っている」と述べました。

一方、今回の土石流の被害については「重く受け止めている」と述べましたが、市の責任については現在も続いている市の調査や第三者としての県の調査に委ねる考えを示し、明言を避けました。

遺族が会見「行政に重大な過失」

静岡県と熱海市の会見を受けて、遺族や被災者でつくる「被害者の会」の会長で、亡くなった瀬下陽子さんの長男の瀬下雄史さんが会見を開きました。

瀬下さんは「調査結果は非常に公明正大と言えるものが出てきた。今回の資料を見るかぎり、明らかな過失があったと言える。行政に重大な過失があったと言わざるをえない」と述べました。

そのうえで「なぜ放置されていたのか、適切だったのかという点は行政で明らかにしてほしい。もみ消さずに事実を出してもらい、適切な対応だったのか防ぐことができたのかどうか、つまびらかにしてほしい」と訴えていました。

また、加藤博太郎弁護士は「防ぐことができた人災であったことが明らかになった。行政に対しては直ちに法的責任の追及は考えておらず、被災者に真摯(しんし)に向き合ってもらって真相解明を自発的に行ってほしい」と述べました。

遺族や被災者、合わせて70人は土石流の被害について、盛り土を造成した不動産会社の代表や今の土地所有者などに対して、先月、静岡地方裁判所沼津支部に32億円余りの賠償を求める訴えを起こしています。

静岡県 難波副知事 “命令出すべきだったと思う 検証が必要”

熱海市が安全対策を命じる文書を作成しながら、発出を見送っていたことについて、静岡県の難波副知事は会見で「命令について県には資料が残っていないが、県も十分な協議をしたと思う。私は命令を出すべきだったと思うが、なぜ市が発出をしなかったのかまだよく分かっておらず、これから検証していかなければいけない。ただ命令を出していたら会社側が従っていたかは別問題だと思う」と述べました。

土地所有者側「誠に遺憾」

18日の熱海市の記者会見を受けて、盛り土が造成された土地の今の所有者の代理人を務める河合弘之弁護士が声明を発表し「事実関係を確認するべく、当方に対してヒアリングを行う必要があるにもかかわらず一切経ておらず誠に遺憾です。所有者は市や県の指導に従い、盛り土について土地を購入してから土石流災害が生じるまで一切の工事をしていません」とコメントしています。