中国GDP伸び率縮小 経済減速が鮮明に その背景は?

中国のことし7月から先月までのGDP=国内総生産の伸び率は、去年の同じ時期と比べてプラス4.9%でした。前の3か月よりも伸び率が縮小し、中国経済の減速が鮮明になっています。

中国の国家統計局が18日に発表した、ことし7月から先月までのGDPの伸び率は、物価の変動を除いた実質で、去年の同じ時期と比べてプラス4.9%でした。

プラス成長は6期連続ですが、伸び率は、7.9%だった前の3か月よりも縮小し、回復を続けてきた中国経済の減速が鮮明になっています。

また、前の3か月と比べたGDPの伸び率も、プラス0.2%にとどまりました。

先月にかけて中国経済は、欧米などでの経済活動の再開を受けて輸出の増加が続いた一方、世界的な半導体不足や国内での電力供給の制限などで企業の生産が伸び悩みました。

また、この夏、国内で一時、新型コロナウイルスの感染が再拡大したことで個人消費も振るいませんでした。

さらに、不動産大手「恒大グループ」が巨額の負債を抱えて経営難に陥るなど、政府の規制強化を背景に不動産投資も減少しています。

不動産市場の動揺はなお続いているほか、エネルギー価格や原材料価格の国際的な高騰が企業経営を圧迫していて、中国経済は、今後、減速傾向がさらに強まる懸念も出ています。

中国国家統計局「経済に調整圧力が現れた」

中国国家統計局の付凌暉報道官は「7月からの第3四半期に入り、世界経済の回復の鈍化や原材料価格の高騰、国内での感染の再拡大など国内外のリスクが増えて、経済に調整圧力が現れた」と述べました。

一方、電力の供給不足や不動産市場の動揺といった課題については、経済全体への大きな影響は抑えられるとの認識を示しました。

その上で、「経済の持続的な回復と質の高い発展に向かう状態には変わりない。財政力や金融政策の余地も依然として大きく、状況に応じて経済の安定を保つ措置をとることができる」と述べました。

背景1 「ゼロコロナ」の厳しい感染対策 個人消費が停滞

中国経済の減速の背景には個人消費の停滞もあります。
その大きな要因は政府が「ゼロコロナ」を目指して厳しい感染対策を続けていることです。特に「デルタ株」の感染が広がった夏の観光シーズンには省を越える移動が制限され、旅行客が減ったことで観光業などが打撃を受けました。

各地の観光地からは悲鳴があがっています。
内陸部の河南省・安陽は、世界遺産に登録されている殷の時代の都の遺跡があり、漢字の起源とされる甲骨文字が刻まれた骨などが発見された場所です。
安陽には、感染拡大前は年間およそ5000万人の旅行客が訪れ、人気の観光地でした。
しかし、ことしは夏場にとられた移動制限で省の外からの旅行客が大きく減りました。
それに加えて同じ河南省でクラスターが発生したことを受けて遺跡の施設が一時、閉鎖され、1年で最もにぎわう時期に観光客が訪れない事態となりました。

また、遺跡の管理会社の責任者は、「去年から徐々に回復が続いていたのに、省をまたぐ移動が制限されたことで、また行き詰まってしまいました」と話していました。
中国全体で見ても8月は、非製造業の景況感指数が47.5と、およそ1年半ぶりに節目となる「50」を下回りました。
また、消費の動向を示す「小売業の売上高」は、伸び率が前の月から6ポイント縮小し、飲食業の売り上げに限ってみるとマイナスに転じました。

中国ではワクチンの接種が進みその回数は合わせて22億回を超えていますが、感染が広がるたびに移動制限などの措置が繰り返され、観光や飲食などのサービス業の回復の遅れにつながっています。

背景2 不動産業者の資金繰り厳しく…政府の規制強化で

中国経済の大きな懸念材料の1つが不動産市場の動揺です。
経営難に陥っている恒大グループは、ことし6月末の時点で全国で1200余りの物件を販売中だとしていますが、各地で建設中の物件の工事が止まっています。
上海中心部から車で1時間余りの場所にある江蘇省太倉市ではテーマパークや商業施設とともに合わせて3万戸の高層マンション群を開発する計画が立てられていました。
開発面積は500万平方メートルに及び、地域には開発プロジェクトを大々的に宣伝する展示センターも設置されていましたが、中国メディアによりますと建設会社への支払いが滞り、工事が停止したということです。

家族がおよそ2000万円を支払いマンションを購入したという男性は「一生かけてためたお金で買った不動産が手に入らなければ焦らずにいられるでしょうか。政府がしっかり対応して社会を安定させることを望みます」と話していました。
また、テーマパークなどの開発が進められていた場所では、給料の未払いが起きていて、清掃員として働いていた男性は「給料がずっと支払われておらず泣いている人もいます。恒大グループを恨まずにはいられません。彼らが金を支払えば私たちも給料を手にすることができるはずです」と話していました。
背景には、長年、バブルと指摘されてきた不動産市場の過熱を抑えようという政府の規制強化があります。

この結果、ことし1月から9月までの全国の住宅着工面積は去年の同じ時期と比べて3.3%減少しているほか、月ごとにみた全国の住宅販売面積も7月にマイナスに転じたあと、9月にかけて3か月連続でマイナスになっています。
このため、建設資材の生産の減少にもつながるなど、関連産業にも影響が広がっています。

また、不動産開発に伴う収入は地方政府の財源にもなっていることから、開発の減少は財政の悪化を招くリスクも指摘されています。

一方で、不動産業者を安易に救済すれば市場の過熱が抑えられないほか、住宅価格の高騰は格差の拡大にもつながっているとされるため、格差の是正を掲げる習近平指導部としては難しいかじ取りが迫られています。
中国では、ほかにも多くの不動産業者の資金繰りが厳しくなっていて、今月に入って、いずれも香港市場に上場する不動産会社の「花様年グループ」と「新力グループ」が相次いで債務の支払いができないと発表しました。
地元メディアは、全国で10万近くある不動産業者のうち、ことしに入って、規模が小さい業者など、およそ300社が経営破綻しているとも報じています。

専門家 政府の対応 今後のカギに

中国の不動産業界に詳しい上海易居不動産研究院の厳躍進 研究総監は、中国政府の規制強化について「中国では多くの家庭の資金のほとんどが不動産に投入される不健全な状態になっている。中国政府はバブルのような状態を是正し、不動産が経済を縛ることを防ぐ必要があり、引き締め政策は一過性のものとはならないはずだ」と指摘しました。
その一方で「不動産市場の引き締め政策は一時的なものに終わるわけにはいかないが、市場の安定も重視しなければならない。中国政府は1つの企業や不動産業界が抱えるリスクが金融システム全体に波及する『システミック・リスク』となるのを防ぐことを基本方針とすると思う」と述べ、経済全体への影響を抑えるための政府の対応が今後のカギになるという認識を示しました。