WEB特集

カップめん1位は「コメ王国」 新潟に見る“食の変化”を探る

コシヒカリをはじめとするコメ王国・新潟県。

その最大都市、新潟市の人たちがこぞって食べるもの、それはなんと「カップめん」

てっきり、コメ離れが加速しているのかと思いきや、事情はそれほど単純ではないようです。コメ王国にいったい何が起きているのか探りました。
(新潟放送局記者 野原直路 豊田光司)
総務省の家計調査によると、新潟市は1世帯あたりの「カップめん」への支出額が52の政令指定都市・県庁所在地で堂々の日本一。

一方、コメは29位という衝撃の結果となっています。

最大級のカップめん売り場

なぜ、コメ王国でカップめんが人気なのか。

その背景を探るため、はじめに新潟市中央区のスーパーを訪ねました。

新潟・長野・富山でスーパーを展開する企業で、最大級のカップめんの売り場面積を誇るこの店。
長さおよそ12メートルの棚に、多種多様な商品がびっしり並んでいます。

さっそく、買い物客の皆さんにカップめんを手に取る理由を聞いてみました。
「やっぱりカップめんは安いし、簡単ですね」

「会社で食べるのがお弁当なので、そのときにみそ汁代わりに」

「手軽に食べられます。うちも1日に1回くらいはめん類食べていますから」
理由はさまざま。

皆さん、かなり頻繁に食べているようです。

一方、売り場の担当者は。
原信紫竹山店 加食・住居部門 坂井彰チーフ
原信紫竹山店 加食・住居部門 坂井チーフ
「新潟市がカップめん1位と聞いてびっくりしました。カップめんというと首都圏の若いサラリーマンのイメージが強かったんですけど、新潟市が1番と聞いて実感がないというのが正直な感想です」
残念ながら理由は分からないとのこと。

そこで目に入ったのが「ご当地商品」の存在でした。
陳列棚には、燕・三条系「背脂ラーメン」や、長岡の「生姜醤油ラーメン」など新潟ならではの品々も並んでいます。

スーパーの担当者によると、遠方で暮らす親戚や子どもにおみやげとして「ご当地商品」を大量に購入するケースがあるそうです。

ただ、新潟以外でも売られているので、支出金額1位の理由を説明するにはもう少し研究が必要です。

あの「ヌードル」の購入金額も1位

カップめんのメーカーなら、もっと詳しい事情を知っているのではないか。

そこで、ことし発売50周年を迎えた「カップヌードル」を手がける日清食品に話を聞きました。

すると、新たなデータが。
日清食品ホールディングス広報部 松尾知直次長
日清食品ホールディングス 松尾次長
「取材の話をいただいて社内のデータを調べたところ、1人あたりの購入金額はやはり新潟県が全国で1位ということが分かりました。正直驚きました」
「ヌードル」の購入金額でも、新潟市を含む新潟県は全国トップと判明。

ただ、2位・栃木、3位・和歌山と法則が全く見えません。
「例えば寒い地域が上位につけるとか、どこの地域が上に来てるとか傾向が分からない。どうして新潟県が1位なのか、正直申し上げて分からない」

どうした、お米!

謎が深まるカップめん。

一方、もう1つ気になるのがコメのランキングです。
総務省の統計で1世帯あたりが1年間にコメに支出する金額が全国トップレベルだった新潟市。

しかし年々、支出額は減少し、令和2年12月までの3年間の平均ではとうとう29位に。

購入量で見ても32位と、ともに落ち込んでいます。

にわかには信じがたい数字ですが、このことをスーパーの買い物客に伝えると…。
「え?こんなに落ちちゃっているんですか?新潟って上位じゃないのかな」

「コメ買わないっていうこと?確かに安いコメ買いますよね。ブランド米は手が出ない。そんなに食べなくなってるし、コメを炊かない人もいるんじゃないですか?」
驚きの声とともに、たしかに思い当たる節があるという反応もありました。

謎を解く「3つの鍵」

右肩上がりのカップめんと、苦戦するコメ。

いったいどうしてこうなったのか?
取材班は食料経済が専門の新潟食料農業大学・武本俊彦教授を訪問。

すると、3つの仮説を示してくれました。
新潟食料農業大学 武本俊彦教授
~仮説1 手間がかかる~
「カップめんはお湯を注いで2~3分待てばいいですが、コメはといで炊いて、なんやかんや小一時間はかかってしまう」

~仮説2 買いづらい~
「工業製品的な性格をもつカップめんは単価がそれほど大きく変動しないのに対し、コメは農産物なので値段が上がることもあれば下がることもある。消費者はちょっと買いづらい」

~仮説3 日もちする~
「即席めんのたぐいは乾燥状態で日もちする。そういうものについては新潟県の人々は非常に強い嗜好をもっている」
実際、めん類だったらなんでもいいわけではなく、比較的保存期間が短い「生めん」は新潟市では苦戦しているんです。

さらに武本教授の仮説を裏付けるかのように、コメの中でも売り上げを伸ばしている分野があります。

それは「パックごはん」です。

時間がなくても、ごはんを食べたい

農林水産省によると、長期保存できる「パックごはん」の生産量は全国で年々増加。

実際、冒頭に紹介した新潟市のスーパーでも売り上げは右肩上がりなんです。
新潟市に本社を置く業界大手「サトウ食品」によると、33年前に販売を開始してからというもの、売り上げは全国でほぼ一貫して伸びています。

市場拡大の背景には私たちの生活スタイルの変化があるといいます。
サトウ食品経営企画グループ課 浅川梨乃さん
「以前は家庭で家族そろって食事をする機会が多かったと思いますが、最近は女性の社会進出や働き方の見直しなどの影響で生活スタイルが変わってきています。さらに時短で調理をしたい人や1人暮らし世帯も多くなり、おいしいごはんがすぐに食べられるという特徴が評価を得ていると思います」
また武本教授は今後、こうした食の変化が加速していくのではないかと指摘します。
新潟食料農業大学 武本俊彦教授
新潟食料農業大学 武本教授
「高齢化が進み、単身世帯も増えていくと、コメを自宅で炊くという昔ながらの方法というよりは、おいしくて手ごろな『パックごはん』に需要が大きくシフトしていく可能性はある。それをある意味、『カップめん』が先取りした姿として示していると考えるべきではないか」
コメ王国でもカップめんが1位の新潟。

残念ながら今回の取材では、どうしてカップめんが特に好まれているのか、固有の理由までは特定できませんでした。

しかし、生活スタイルなどの影響で消費者の好みが確実に変わっていることは実感しました。

日本の主食・コメについても、消費者にとって手が届きやすくなるよう、利便性を高めていくような工夫が必要になってきていると言えそうです。

皆さんはきょう、何を食べますか?
新潟放送局記者
野原直路 
平成27年入局
6年半暮らした初任地・新潟は心のふるさと
佐渡や原発などを取材
コロナ禍でカップめんとパックごはんを買う量が増えました
感染状況が落ち着いたら、ぜひ新潟の花火と食、佐渡の自然や歴史を堪能しに来て下さい
新潟放送局記者
豊田光司 
平成29年入局
大阪局で府警を3年間取材し、令和2年から新潟局へ
県政や文化などを担当
カップめんにお湯を入れて待つ間は念入りに作り方を確認しています
わたし失敗したくないので

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