“帰還事業で過酷な生活” 北朝鮮政府に賠償求め裁判 東京地裁

昭和30年代以降、在日韓国・朝鮮人と日本人の妻などが北朝鮮へ渡った「帰還事業」で、長期にわたって過酷な生活を強いられたなどとして、男女5人が北朝鮮政府に賠償を求めた裁判が14日、東京地方裁判所で開かれました。弁護団によりますと、北朝鮮政府を被告とする裁判が開かれるのは初めてだということです。

訴えているのは「帰還事業」で北朝鮮に渡り、その後、脱北して日本で暮らす男女5人です。

昭和34年から25年続いた「帰還事業」では在日韓国・朝鮮人と日本人の妻などおよそ9万3000人が北朝鮮に渡りました。

5人は当時、十分な食料も提供されず過酷な生活を強いられたなどとして、北朝鮮政府に対し合わせて5億円の賠償を求めています。

14日、1回目の裁判が東京地方裁判所で開かれ、原告への尋問が行われました。

このうち10代のときに北朝鮮に渡った70代の川崎栄子さんは「北朝鮮は『地上の楽園』だと繰り返し言われ、すり込まれていた。当初は国内を自由に行き来できたが、しだいに制限されるようになり、とうもろこしやじゃがいもだけだった配給さえなくなってしまった」と訴えました。

弁護団によりますと、北朝鮮を被告とする裁判が開かれるのは初めてで、国交がない北朝鮮政府に対し、裁判所の前に日程を掲示して伝える形式が取られましたが、北朝鮮側の出廷はなく、裁判は1回の審理で終わりました。

判決は来年3月23日に言い渡される予定です。

原告「闘い続けたい」

裁判のあと原告の5人が会見し、川崎栄子さんは「61年前に北朝鮮に渡ってから40年以上、いつ命を落とすか分からない生活が続きました。ようやく北朝鮮政府を裁判という正義のてんびんに乗せることができましたが、帰還事業で渡った人たちが自由に日本と行き来ができ、家族とも会える日が来るまで、闘い続けていきたいです」と話していました。