気象庁 緊急速報用のメール一部廃止へ「配信の役割は終えた」

災害の危険が差し迫った際、住民のスマートフォンなどに一斉に送る緊急速報用のメールについて、気象庁は大雨など気象に関する特別警報と火山の噴火警報に関し、今月下旬に配信をとりやめる方針を明らかにしました。気象庁は「自治体によるメール配信や民間のアプリなどが広がった」としていますが、専門家からは「できるだけ多くの手段で災害情報を発信する体制が整えられてきたのに、逆行する動きだ」という指摘も出ています。

災害や避難に関する情報を対象の地域の人に速やかに知らせるため、携帯電話事業者は「エリアメール」や「緊急速報メール」といった名称で、スマートフォンや携帯電話に無料で国や自治体の情報を配信するサービスを行っています。

気象庁は、6年前から始めた
▽大雨や暴風など気象に関する特別警報と、
▽噴火警戒レベルが4と5にあたる噴火警報の、
配信に関して、今月28日にとりやめると発表しました。

緊急地震速報や津波警報・大津波警報は、配信が継続されます。
取りやめの理由について、気象庁は、
▽すべての自治体が避難指示などの避難情報をメールで伝えられるようになったことや、
▽民間などによるスマートフォンのアプリで避難や気象情報の配信が拡大したとして、
「気象庁のメール配信の役割は終えた」としています。

一方、気象庁関係者によりますと、配信を継続する場合、設備更新の費用におよそ3億円かかることも、取りやめの判断の背景にあるということです。
災害情報に詳しい東京大学大学院の関谷直也准教授は「これまでは、避難し遅れる人が出ないよう、できるだけ多くの手段で災害情報を発信する体制が整えられてきた。逆行する動きで拙速に廃止すべきではない。コストパフォーマンスではなく、最低限のインフラとして、もう一度考え直してほしい」と指摘しています。

気象庁「大雨の特別警報待つのは望ましくない」

「特別警報が発表されるときはすでに災害が発生していてもおかしくない状況であり、テレビやラジオなどに加え、さまざまな手段で発信し、より多くの人に情報を伝えていきたい」

2015年11月、緊急速報用のメールに「特別警報」や「噴火警報」の配信を始めるにあたり、当時の気象庁の担当者はインタビューでこのように語っていました。

それから6年。

配信を取りやめる理由について気象庁は、民間のアプリなどで特別警報を通知するなど当時より高度なサービスが普及したことに加え、大雨警戒レベルが整理され、レベル4の避難指示の段階までに安全を確保すべきで、大雨の特別警報を待つのは望ましくないとしています。

ただ、近年の災害では線状降水帯が発生するなど非常に激しい雨が降り続いて急激に状況が悪化することもあります。

気象庁企画課の室井ちあし 課長は「開始当時は情報を広く知ってもらうことが重要な課題だったが、警戒レベル5にあたる情報だけをメールで配信する必要性が無くなった。自治体の避難情報が間に合わない事例があるのは承知しているが気象庁としても自治体の支援をしていきたい」と説明しています。

「住民に密接に関わる情報」自治体からは戸惑いの声

熊本市の防災担当者は「市の防災体制に直ちに影響があるわけではないが、線状降水帯などで急な豪雨のおそれもあり、最大級の警戒を呼びかけるメールが突然配信されなくなるのは戸惑いがある。疑問に思う住民もいるのではないか」と話しています。

また、鹿児島市の防災担当者は「気象災害をはじめ、桜島という火山も抱えているので住民に密接に関わる情報だ。誤解がないよう説明や周知をしてほしい」と話していました。

専門家「緊急速報メールは非常に重要 情報体系全体の見直しを」

災害情報が専門で東京大学大学院の関谷直也 准教授は「最終的に住民に情報を伝えるのが前提である以上、緊急速報メールという手段が確保されているというのは非常に重要だ。もし情報が多くて混乱するというのであれば情報体系全体について見直していかなければならず、気象庁単独でメールをやめればいいわけではない。認識が違うのではないか」と指摘しています。

背景に予算“理解得られるのか”議論も…

「配信を終えるにあたって特に制約は無い」と繰り返し説明した気象庁。

しかし、背景に予算の問題があることが関係者への取材で明らかになりました。

気象庁によりますと、緊急地震速報などについては携帯電話事業者が関連費用を負担していますが、気象に関する特別警報などの緊急速報メールの配信を始めた際、気象庁は設備費用などにおよそ1億円余りの予算措置をしました。

また、運営には年間およそ1200万円がかかっていたということです。

設備の更新をするにあたってセキュリティー関連費用なども加わり、経費はおよそ3億円にのぼることがわかったということです。

気象庁の年間予算は例年600億円前後でこの経費は決して少なくありません。

関係者によりますと、議論の結果「これ以上、税金を使うのは難しい」という結論になったということです。

気象庁内でも「いきなりやめることに理解が得られるのか」とか「自分たちで情報を出し続けられる仕組みを作るべきでないか」といった声があり、自前のシステムを導入して運用を続けることも検討はされたものの、膨大な予算や作業量のため、具体化はしなかったということです。

取りやめの判断に予算が影響したかについて、気象庁企画課の室井ちあし 課長は「予算が理由で配信をやめるわけではない。ただ、リソースが無限にあるわけではなく、効率的に業務を実施する必要がある」と話しています。

一方、室井課長は会見で「配信を終える期限を決めるにあたって制約は無い」と繰り返し説明してきましたが、設備の更新期限はいつか、という質問に対し、配信を取りやめる当日にあたる10月28日だと明らかにしました。

「必要とわかれば、延長は可能だ」とも話しています。