富裕層の金融所得への課税見直しめぐり論戦 参院代表質問

国会では、参議院でも代表質問が始まり、立憲民主党の福山幹事長は、岸田総理大臣が、富裕層の金融所得への課税の見直しを来年度の税制改正では取り上げない考えを示したことを踏まえ、「ぶれすぎではないか」とただしました。

これに対し岸田総理大臣は「賃上げに向けた税制の強化などまずやるべきことがある」と反論しました。

立憲民主党の福山幹事長は、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」をめぐり「自民党総裁選挙で強く主張した『令和版所得倍増計画』は、どこにいったのか。金融所得課税強化の旗も早速降ろし、いきなりぶれすぎではないか」とただしました。

岸田総理大臣は「『令和版所得倍増』は、所得を全体として引き上げるという、基本的な方向性を申し上げた。金融所得課税の見直しは、さまざまな分配政策の選択肢の一つとして掲げてきた。賃上げに向けた税制の強化など、まずやるべきことがある」と述べました。

また福山氏は、新型コロナ対策をめぐり「国民が知りたいのはワクチン接種のグランドデザインではないか。また、今後の第6波に向けてどれだけの量の経口治療薬を確保していくのか」とただしました。

岸田総理大臣は「3回目の接種は、早ければことし12月から開始することを想定して準備を進め円滑な実施に万全を期していく。自宅で使える飲み薬はコロナ対策の大きな決め手だ。国民の安全安心のため確保に最大限取り組んでいく」と述べました。
自民党の世耕参議院幹事長は、新型コロナ対策をめぐり「重症化させないことが国民の安心という観点から最も重要だ。中等症以下の患者を集約し、効率的に治療することが重要で、全国的に行うべきではないか」と指摘しました。

岸田総理大臣は「コロナ病床が十分に稼働しなかったことなどこの夏の反省も踏まえ、近日中にコロナ対応策の全体像の骨格を示すよう指示する。そのなかで、中等症以下の患者を対象とした臨時の医療施設や入院待機施設などの確保にもしっかりと取り組んでいく」と述べました。

また、世耕氏は、経済活動の再開をめぐり「『ゼロコロナ』になるまで経済の動きを再開しないのであれば経済が死んでしまう。接種証明などを活用した営業制限緩和について、どのようなスケジュールで進めていくのか」と問いました。

岸田総理大臣は「ワクチン接種証明は、速やかなデジタル化を目指しており、年内をめどに電子交付などの実現に向けた検討を進めていく。飲食やイベントなどの行動制限の具体的緩和の内容や時期は、接種証明などの活用に関する技術実証などを踏まえて早急に検討し、示していく」と述べました。

立民 福山幹事長 “総裁選公約から ぶれすぎていた”

代表質問を終えた立憲民主党の福山幹事長は、記者団に対し「率直に言って、拍子抜けするような答弁ばかりで、自民党総裁選挙で岸田総理大臣が公約したことからもぶれすぎていた。質疑を通じて、自民党と立憲民主党が考える日本のあるべき姿について、方向性の異なることがはっきりしたので、このことを衆議院選挙で国民に提示し、支持を訴えていきたい」と述べました。

自民 世耕参院幹事長 “コロナ対策の姿勢など伝わった“

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「新型コロナ対策に取り組む姿勢や決意、『新しい資本主義』の意味や中身が分かりやすく伝わったのではないか」と述べました。また、岸田総理大臣が、富裕層の金融所得への課税の見直しを来年度の税制改正では取り上げない考えを示したことについて「全体的な経済状況やマーケットの現状をみて、まずは所得を上げていくことを最優先に取り組む判断をしたということだ。タイミングを見て、いずれは踏み込んでいくのではないか」と述べました。

金融所得課税とは

「金融所得課税」とは預金や株式などといった金融商品から得られた所得に課される税金のことです。

預金であれば利子、株式であれば配当、株式を売却した際に得られた利益などが課税の対象になります。

そして復興特別所得税を除いた国と地方をあわせた金融所得課税の税率は所得にかかわらず、原則として一律で20%です。

給与所得に課される税金の税率が国と地方を合わせて10%から最高で55%と所得が多ければ多いほど税率が高くなる「累進制」となっているのとは仕組みが異なります。

背景にある「1億円の壁」とは

金融所得課税が議論される背景にあるのが「1億円の壁」です。

財務省の調べによりますと、▼年間の総所得が200万円から250万円までの人は所得税の負担率が2.6%、▼400万円から500万円までの人は4.6%、▼800万円から1000万円までの人は10.6%とどんどん上がっていきます。

そして、▼年間の総所得が5000万円から1億円までの人では27.9%に達しますが、ここがピークになり、「1億円の壁」と言われています。

壁を越えた先は、所得税の負担率はだんだん下がっていき、50億円を超える人だと16%台まで低下します。

所得の多い人ほど全体に占める金融所得の割合が増える傾向にあり、金融所得への税金が低く抑えられているためこうした現象が起きています。

このため、岸田総理も総裁選で金融所得課税の見直しを訴えてきました。

一方で、見直しにはハードルもあります。

その1つが、株式市場に悪影響が出ることへの懸念です。

税率の引き上げが決まれば、株式を売却する動きが広がったり株式に投資するお金が減ったりして、株価の下落につながるのではないかと市場関係者は警戒しています。

また、政府が掲げる「国際金融都市の確立」や「貯蓄から投資へ」という目標に対してもマイナスになるという声も聞かれていました。