大津いじめ自殺10年 生徒の父親 “子どもの命 守れていない”

平成23年に大津市で中学2年生の男子生徒がいじめを苦に自殺してから、11日で10年になります。
いじめによる子どもの自殺はその後もあとを絶たず、亡くなった生徒の父親は社会全体で対策の強化に取り組んでほしいと訴えています。

平成23年10月11日、大津市の中学2年生の男子生徒が自殺しました。

学校や教育委員会は当初、いじめと自殺の因果関係を認めていませんでしたが、その後、生徒が学校で「自殺の練習をしろ」と同級生から言われるなど、悪質ないじめを受けていたことがわかり、警察が学校や教育委員会の強制捜査に入る異例の事態となりました。

この事件をきっかけに「いじめ防止対策推進法」が成立し、いじめを受けた児童・生徒がけがをするなど、重大な被害が生じた場合、学校が調査を行い、事実関係を保護者に伝えることなどが盛り込まれました。

一方で、去年発表された全国の学校が把握した2019年度のいじめの件数は過去最多で、子どもの自殺もあとを絶ちません。

生徒の父親は10年となるのに合わせて取材に応じ「事件をきっかけに子どもの命を守る法律ができたにもかかわらず、子どもの命を守れてないという現状が今もある。いじめは人をみずから死なせてしまう恐ろしい行為だという認識を持つべきだ」と述べ、いじめ対策の強化に社会全体で取り組んでほしいと訴えています。

“なぜ 死なないといけなかったのか”

この10年について、父親は「10年ひと昔というくらいなので、かなり長い時間たちましたが、私にとっては、密度の濃い10年間でした。10年前のことをずっと毎年記憶によみがえらせて、やって来たので、そんなに昔のようには実際感じていないですが、やっぱり改めてつらいし、なぜ助けられなかったかというところ、なぜ素直に起こっていることを僕に言ってくれなかったのかと思います。なんでそこまで我慢して、死なないといけなかったのか、後悔しかありません」と話していました。
【いじめ防止対策推進法は“息子”】
男子生徒が亡くなったことをきっかけに、2年後には学校がいじめの早期発見や防止のため必要な体制を整備することなどを定めた「いじめ防止対策推進法」が成立しました。
父親は「私は手前みそですけども、息子が作った法律だというふうに認識していて、息子は法律に変わったんだと、息子の生というものは、いじめ防止対策推進法という法律に変わったんだと考えています」と話しました。
【いじめ認知件数の増加 “抜本的なものに対処できていないのでは”】
法律ができた当初は、認知されるいじめの件数が増え、教育現場でいじめへの意識が高まっていることのあらわれと受け止めていましたが、徐々に考え方が変わってきたといいます。

=生徒の父親=
「一時はいじめの認知件数が多くなるということに関しては、喜んでいました。それはいじめが『可視化』されてきたという1つのよい事象として。ただ、それも法律ができてから3年くらいまでの間です。そこから先は根本的になぜいじめが起きるんだと、抜本的なものに対処できていないことがあらわになっているのではと感じるようになりました」
【あとを絶たない いじめ自殺】
2019年度、全国の学校で認知されたいじめの件数は60万件を超え、過去最多を更新しました。子どもたちの自殺もあとをたたない現状に失望を隠せません。

生徒の父親は「子どもの命を守る法律ができたにもかかわらず、それが子どもの命を守れていないという現状が今もあると。何だったのこの10年間というか、法律ができてからのこの8年間って何だったんだろう」と思いを述べたうえで、「やっぱり亡くなる前に命を守りたい。いじめは人をみずから死なせてしまう恐ろしい行為だという認識を学校現場が持つべきだと思う」と話しました。
【子どもを守る法律を】
父親が強く訴えているのが、事件をきっかけに成立し、息子の“生まれ変わり”と考えている「いじめ防止対策推進法」の改正です。

=父親=
「息子が法律に生まれ変わったとして、でもその法律自体も生まれたての新しい法律なので子どもたちを助けられるまでにはなっていません。起きた事実に向き合おうとする学校や教育現場もあれば、相変わらず自分の息子の時のように隠蔽というか、隠そうという力が先に働いてしまう、そういう現場が今もあるのが悲しい。私の気持ちとしては、本当に今も、10年前と変わらないような学校現場がある中で頓挫している法改正を進めてほしい、それがいちばんありがたい」

父親があげるポイントは、学校が生徒から集めたいじめに関するアンケートや教員のメモなどを保存することを義務づけ、保護者の求めに応じてそれらを開示する手続きを整備することです。

法律では、いじめの中でも、命や体に重大な被害が生じたり、長期間、学校の欠席を余儀なくされたりした「重大事態」に至らない場合、学校側がいじめに関する情報を開示する義務などが明記されておらず、教職員が記録を破棄した場合の罰則もないからだといいます。

=父親=
「いじめに対してどのような対策をしていったかという経過やいろんな記録が保存されていますよね。ただ事件が発生した場合に、『記録をなくした』とか『燃やした』とか『シュレッダーにかけた』とか、ありえない話が出てくるんです。いじめの記録を保存すること、そして求めがあれば提供するということを法律で義務づけてほしいです。隠滅する行為は違法行為ですよと、明確に教師に分かってもらえるように」
【いじめにあう前に防いでやりたい】
いじめから子どもを守るには、どうすればいいのか。
法改正を求めながら、これからも、自分に、そして社会に問い続けたいといいます。

=父親=
「事件から10年たっても法律は未完成。今の法律の状態ではいじめの被害にあっている子どもたちを苦しみからは救えません。だから息子の生まれ変わりである法律を完成形にしたい。本当の意味で子どもを守るというのであれば、命を落とす前に防いでやりたい。そもそもいじめにあう前に防いでやりたい。それが今の思いです」