中国の評価めぐるIMF専務理事らの疑惑 波紋広がる

IMF=国際通貨基金のトップ、ゲオルギエワ専務理事らが、世界銀行の幹部だった際、中国の意向を受けてビジネス環境を評価する国別ランキングの中国の順位を本来よりも不正に引き上げていたとされる問題が波紋を広げています。
IMFもこの問題を調査していて、その結果が注目されています。

世界銀行は先月16日、各国のビジネス環境を毎年ランキング化する報告書の過去の数字が不正に操作されていたとして、今後、発行を取りやめると発表しました。

2018年版の報告書を作成する際、世界銀行の当時のキム総裁や現在IMFの専務理事を務めるゲオルギエワCEOが、中国の政府高官から自国の順位が低いと何度も不満を示されていたということです。

そして、ゲオルギエワ氏らが分析の担当者に圧力をかけた結果、報告書では、中国の順位が本来の85位から前年並みの78位に不正に引き上げられたとしています。

背景として、世界銀行が各国に出資金の増額を求めていた時期に、有力な拠出国である中国に配慮した可能性が指摘されています。

ゲオルギエワ氏は「調査結果に同意できない」とする声明を出し、不正を否定していますが、IMFもこの問題の調査を始め、本人から聞き取りを行っていて、その結果が注目されています。

また、IMFと世界銀行は来週11日から年次総会をアメリカ・ワシントンで開き、この一環でゲオルギエワ氏は13日に記者会見を予定していて、この問題にどう言及するかも関心を集めています。

ゲオルギエワ氏が関わったとされる疑惑とは

クリスタリナ・ゲオルギエワ氏はブルガリア出身のエコノミストで、1993年に世界銀行に入り、環境分野などのエコノミストとして17年間、勤務しました。

その後、EU=ヨーロッパ連合の執行機関の幹部などを経て2017年、世界銀行でナンバー2にあたるCEOに就任しました。

そして、2年前の2019年、IMFのトップ、専務理事に就任しました。

そのゲオルギエワ氏が深く関わったとされる今回の問題はどのようなものだったのか。

世界銀行の依頼を受けた法律事務所の調査によりますと、データの操作が行われたのは報告書の発行を間近に控えた2017年10月。

当時、世界銀行の幹部らに対し、アメリカに駐在する中国の政府高官から再三にわたってビジネス環境のランキングが低すぎるという不満が寄せられていたということです。

報告書のランキングは海外からの投資を呼び込むために各国が重視していました。

10月中旬、ゲオルギエワ氏も中国の政府高官と夕食をともにし、中国が取り組んでいる改革が報告書に適切に反映されるよう念押しされたといいます。

しかし、中国は逆に前年より順位を落とすことになり、ゲオルギエワ氏は夕食の4日後、会議で調査の担当者たちを叱責し、中国の数値を出し直すよう指示。

担当者たちは中国の数値だけを変えるのはできないと訴えましたが、結局、データの評価を見直し、翌日、中国の順位がもともとの85位から前年並みの78位に引き上げられたと結論づけられています。

世界銀行が公表するデータの不正を指摘する声も

世界銀行のチーフエコノミストを務めたこともある、経済学者のポール・ローマーさんは在任中から世界銀行が公表するデータが不正にゆがめられている可能性を指摘していました。

ローマーさんはNHKの取材に対し「世界銀行には、上層部の干渉や各国からの圧力といった、研究データを公表する機関に本来不可欠な誠実さの基準から逸脱していると考えられることがあった。また中国は多国間の枠組みやソフト・パワーを利用して自国の国益を高めることに注力していて、世界銀行のことも利用しようとしていた」と話しています。

一方、国際機関のガバナンス、統治の在り方を分析する専門家のハリー・ブロードマンさんは、ほかの国際機関にも問題が広がっていないかどうかを確認することが重要だと指摘します。

ブロードマンさんは「ガバナンスの仕組みが整っているのか、スタッフが業務に専念できるよう守るセーフガードがあるのか。組織の理事会に問題点を報告する独立した第三者を配置することが欠かせない」と話しています。