保釈中の海外逃亡防止で被告にGPS装着 法制審部会が要綱案

日産自動車のカルロス・ゴーン元会長の逃亡事件などを受けて、法制審議会の部会は、保釈中に海外逃亡のおそれがある被告にはGPSを装着させ、空港などに侵入した際は、位置情報を確認し、身柄を確保することができる制度の創設を盛り込んだ要綱案をまとめました。

近年、裁判所が保釈を認めるケースが増える一方で、日産のゴーン元会長がプライベートジェットでレバノンに逃亡するなど、保釈中の被告らが逃走する事件が相次いでいることを受けて、法制審議会の部会は、刑法などの見直しに向けた要綱案をまとめました。

それによりますと、保釈中、海外に逃亡することを防止するため、裁判所が必要と認めた場合にかぎり、被告にGPSを装着させる制度を創設し、立ち入りが禁止された空港や港湾施設に侵入したときは、位置情報を確認して、身柄を確保することができるとしています。

また、保釈中の被告らが裁判所に出頭しない行為や、裁判所が指定した住居から一定期間離れる行為について、新たに処罰の対象とし、いずれも2年以下の懲役を科すとしています。

そして、被告の親や職場の上司などを「監督者」として定めることができる制度を導入し、保釈中の被告らとともに裁判所に出頭することや、住居や職業に変更があった際は、裁判所に速やかに報告することを命じるとしています。

法制審議会は、今月下旬にも開かれる総会で要綱を取りまとめ、法務大臣に答申することにしています。

異常ない場合 位置情報の確認を禁止も

近年、裁判所は積極的に保釈を行っていて、去年、逮捕されるなどして身柄を拘束された人のうち、保釈が認められた割合は32%にのぼっています。

しかし、保釈されたあとに逃走したり、裁判所に出頭しなかったりするケースが相次いでいて、保釈が取り消された人は200人余りと、この10年でおよそ5倍に増加しています。

そこで、要綱案では保釈中の被告の海外逃亡を防ぐため、裁判所が必要と認めた場合にかぎり、被告にGPSを装着させる制度を創設するとしています。

被告がGPSを破壊したり、立ち入りが禁止された空港や港湾施設に侵入したりするなど、出国するおそれが高い行動をとった時は、裁判所や検察官が位置情報を確認して、身柄を確保することができるとしています。

一方で、被告のプライバシーなどを保護するため、保釈中の行動に異常がない場合は、位置情報の確認を禁止しています。

GPSのシステムは裁判所が管理することになりますが、実際の運用を民間に委託するかや、被告の体のどこにGPSを装着するかなど、具体的な方法については決まっていません。

また、8日の要綱案には保釈中の被告らが裁判所に出頭しない行為や、裁判所が指定した住居から一定期間離れる行為について、新たに処罰の対象とすることも盛り込まれ、いずれも2年以下の懲役を科すとしています。

保釈中に逃走した場合、国内であっても、これらの罪が適用されることから、一定の抑止力になることが期待されています。

そして、被告の親や職場の上司などを「監督者」として定めることができる制度を導入し、保釈中の被告らとともに裁判所に出頭することや、住居や職業に変更があった際は、裁判所に速やかに報告することを命じるとしています。

仮に「監督者」が違反しても処罰する規定はありませんが、裁判所は保釈にあたって納める「監督保証金」を没収することができるとしています。

逃亡防止の法改正の背景は

逃亡防止の法改正の背景には、保釈が認められるケースが増える一方で、保釈中などに被告が逃走する事件が相次いでいることがあります。

法務省の統計によりますと、勾留された人のうち保釈が認められた割合は、12年前の平成21年は15.6%でしたが、その後、徐々に増加し、3年前の平成30年には32.6%となっています。

一方で、保釈された被告が逃走する事件も後を絶ちません。

おととし12月には特別背任などの罪で起訴され、保釈中だった日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が、アメリカ軍特殊部隊の元隊員らの手助けを受けて、プライベートジェットを使って中東のレバノンへ逃亡しました。

逃亡の影響でゴーン元会長の裁判が開かれる見通しはたたないままです。

同じ年の10月には、札幌市で監禁の罪などで起訴され保釈されていた被告が、判決の日に裁判所に姿を見せずに逃走し、およそ1か月後に確保されるまで行方が分からなくなったほか、6月には神奈川県愛川町で実刑判決が確定した受刑者が、収容のため自宅を訪れた検察庁の職員などに刃物で抵抗し、車で逃走する事件が起きています。

現在の刑法では、刑務所などから逃走した場合のみが逃走罪の対象となっていて、保釈中などの場合は適用されません。

そのため逃走罪の適用の範囲を拡大することや、保釈中の被告の逃走を防ぐ対策などの必要性が高まっていました。

実効性を高められるかが課題に

GPSを使った対策では、実効性をいかに高められるかが課題となります。

8日、法制審議会が取りまとめた要綱案には、国外への逃亡を防ぐため、被告にGPS機能がついた端末を装着させ、空港や港湾施設などに立ち入った場合に身柄を確保できる制度の創設が盛り込まれました。

GPSによる行動の監視は、プライバシーの侵害を懸念する声もあるため、法務省は、24時間行動を監視することはなく、通知が来た場合に限って位置情報などを利用するとしています。

具体的な運用は今後検討されますが、GPSの通知を受け取るのは、保釈を認めた裁判所になる見通しです。

しかし、被告が逃亡を試みるかどうか事前に把握できないため、いつ届くか予測がつかない通知を確実に確認するための設備や人員が必要になります。

また、通知を受け取ったあと速やかに関係各所に連絡し、身柄の確保につなげるための態勢整備も課題となります。