財務事務次官「バラマキ合戦のような政策論」と月刊誌で批判

財務省の矢野康治事務次官は、8日発売の月刊誌に寄稿した記事で、新型コロナウイルスの経済対策にまつわる政策論争を「バラマキ合戦」と批判し、このままでは国家財政が破綻する可能性があると訴えました。現職の事務次官による意見表明は異例で、今後、議論を呼びそうです。

財務省の矢野事務次官が記事を投稿したのは、8日発売の月刊誌「文藝春秋」です。

この中で、矢野次官は新型コロナウイルスの経済対策にまつわる政策論争を「バラマキ合戦のような政策論」と例えたうえで「10万円の定額給付金のような形でお金をばらまいても、日本経済全体としては死蔵されるだけだ」などと批判しています。

また、先進国では経済対策として次の一手を打つ際には、財源をめぐる議論が必ず行われているとしたうえで「この期に及んで『バラマキ合戦』が展開されているのは、欧米の常識からすると周回遅れどころでなく、二周回遅れ」と批判し、このままでは国家財政が破綻するか、国民に大きな負担がのしかかると訴えています。

そして、経済対策については「本当に巨額の経済対策が必要なのか。そのコストや弊害も含めて、よく吟味する必要がある」としています。

鈴木財務大臣は、8日の閣議のあとの記者会見で、寄稿については麻生前財務大臣の了解を得ていることを明らかにし、手続き上は問題がないという認識を示しました。

現職の事務次官による意見表明は異例で、今後、議論を呼びそうです。

矢野事務次官とは

財務省の矢野事務次官は、昭和60年、当時の大蔵省に入り、菅前総理大臣が官房長官だった当時の秘書官を務めたほか、税制改正を取りまとめる主税局長などを歴任しました。

また、大臣官房長を務めていた際は、財務省の決裁文書の改ざん問題を受けた調査報告書の取りまとめにも携わりました。

去年7月以降は、予算編成を担当する主計局長として、新型コロナウイルス対策を盛り込んだ昨年度の第3次補正予算や、今年度予算の編成などにあたり、ことし7月に事務次官に就任しました。

矢野氏は、財務省内でも財政の健全化を強く訴える立場として知られてきました。

岸田首相 「読んでから考える」

岸田総理大臣は8日夜、総理大臣官邸で記者団に対し「そういった記事が出たということは承知している。ただ、中身をまだ、じっくり読んでいないので、しっかり読んで考えたいと思っている」と述べました。