障害者の性犯罪被害 聞き取りに配慮重ねて得た証言で有罪判決

知的障害などがある人が性犯罪の被害を訴えても証言の信用性の問題などから加害者の刑事責任を問えないケースが少なくありません。
こうした中、検察が聞き取り方に配慮を重ねることで被害者から得られた証言をもとに加害者を起訴した事件で7日、有罪判決が大阪で言い渡されました。

ことし1月、大阪市内の路上で知的障害などのある19歳の女性が見知らぬ男に無理やりホテルに連れ込まれ胸を触られるなどの被害に遭いました。

女性は家の外では家族以外と会話することができない「場面かん黙」という症状があり、検察による当初の被害状況の聞き取りでは自分の名前を話すこともできませんでした。

こうした中、検察は主治医から症状を確認したり、女性検察官に一本化したりするなどの配慮を重ね、話しやすい環境を整えて時間をかけて聞き取りを行いました。

その結果、女性から「首を振ったのに連れて行かれた」などという証言が得られ、これが決め手となって大阪 堺市の40歳の元会社員を強制わいせつの罪で起訴しました。

裁判で元会社員は罪を認め「障害を持っているから警察に言えないのかなと思った」などと述べていました。

7日の判決で大阪地方裁判所の南うらら裁判官は「何も言えないという被害者の特性を認識したうえでの卑劣で自己中心的な犯行だ」と指摘し、元会社員に懲役3年、執行猶予5年を言い渡しました。

障害ある被害者からの聞き取り 捜査機関にも課題に

法務省の調査によりますと、平成30年度の1年間に知的障害や精神障害などがある人が性犯罪の被害を訴えたものの、嫌疑不十分で不起訴となった事案は61件ありました。

被害者側の証言が「客観証拠と整合しない」「供述に変遷がある」など信用性が認められないケースが目立ち、障害がある被害者からどのようにして正確に話を聞き取るか捜査機関にとっても課題となっています。

性犯罪の被害者を支援している雪田樹理弁護士は「裁判では証言が周りの人によって誘導されていないかなど、さまざまな疑念が被告の弁護側から指摘される。それに耐えられる調書を作成する難しさがあり、刑事事件として加害者の責任を問えない人のほうが多数というのが実態です」と話しています。

女性の母親「事件を埋もれさせず知ってほしい」

今回の事件で被害にあった女性の母親が、障害のある娘が犯罪の被害を訴えるのがいかに難しいかを知ってほしいという思いで取材に応じました。

母親によりますと被害に遭った当日、いつもより遅く帰宅した娘は、動揺して震える声で事件について話したといいます。

母親は、娘の被害を聞いて、「許せないというより、許さないという気持ちが強かった」と振り返りました。

母親はすぐに警察に被害を相談し、娘の障害について家の外では家族以外の人と会話することができない「場面かん黙」という症状があることなども伝えました。

娘は、警察官から被害についてアンケートのような簡単な質問をされて、筆談で答えることができました。

しかしその後母親に検察から連絡があり、加害者を起訴するには証拠として不十分で、検察官に対して直接本人が証言する必要があると言われました。

母親は「むちゃなことを言うと思いました。『娘よりもっと重い障害の人が被害にあった時、今までどうしていたのか』と検察に聞いたら、『立件できなかった』と言われ、ショックでした」と話しています。

一方、検察も堅苦しくない部屋で女性検察官が聞き取るなど話しやすいように配慮を重ねた結果、娘は4時間以上かけた聞き取りで、自分の言葉で検察官に証言し被害の証拠となる調書を作ることができました。

7日、元会社員に有罪判決が言い渡されたことについて母親は「加害者もわからず、遠い道を行くようで果てしなく感じてくじけそうにもなりましたが、有罪判決が出たのでほっとしています。たまたま娘は証言できましたが、障害のある方の性被害では証言できないケースが多いと思います。娘が頑張って証言して立件された事件のことを埋もれさせず、世の中の人に知ってもらって考えてほしい」と話していました。