コロナ対策 専門家会合「新規感染者数 拡大前の水準に減少」

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、新規感染者数は今回の感染拡大前の水準まで減少し、重症者数や亡くなる人の数も減少が続いていると分析しました。
その一方で緊急事態宣言などの解除による行動制限の緩和で人と人との接触機会が増えることで、感染の再拡大につながる懸念もあるとして、マスクの正しい着用や1つでも密を避けるなどの感染対策を続けるよう呼びかけました。

大都市圏中心に多くの重症者が療養中

専門家会合は、全国の感染状況について「今回の感染拡大前の水準にまで減少している」としたうえで、療養者数や重症者数、亡くなる人の数も減少が続き、医療提供体制も改善傾向が続いているとしています。

多くの地域で感染者数の減少が続いていますが、大都市圏を中心にいまなお多くの重症者が療養中であることに注意が必要だとしています。

専門家会合は、緊急事態宣言などが解除されたことについて、市民や事業者の感染対策への協力、夜間の人出の減少、ワクチン接種率の向上、医療機関や高齢者施設でのクラスター感染の減少などによって、感染者数の急速な減少が続いたことで医療体制への負荷が下がった成果だと評価した一方、制限の緩和で接触機会が増えることで、感染の再拡大につながる懸念もあるとしています。

“ブレイクスルー感染” 増加も想定

専門家会合は今後、ワクチン接種がさらに進み、感染拡大を抑えることや重症化を予防することが期待されるとしながらも、ワクチンの効果が弱まってブレイクスルー感染が増えることも想定されるため、ワクチン接種を終えた人でもコロナの症状が疑われる場合には引き続き検査を行うことが求められるとしています。

また、感染対策としては、不織布マスクを着用することや消毒、1つの密でも避けること、それに換気を徹底するとともに、少しでも体調が悪ければ検査を受けるか、医療機関を受診し、飲食の際には少人数で短時間にして、食べたり飲んだりするとき以外はマスクを着用するよう呼びかけています。

さらに、国や自治体に対しては今後、今回の感染拡大と同様の規模やスピードで再拡大することを前提に、臨時の医療施設の整備や、自宅での療養体制の強化、治療薬を投与できる体制の拡大、それにワクチン接種を積極的に進めることを求めました。

脇田座長“若者で増えて若者で減った”

専門家会合のあとの記者会見で脇田隆字座長は、感染の急速な減少が続いている要因について「夜間の繁華街での人出の減少やワクチン接種が進んでいることが要因として分析されているが、それだけではこの減少の速度は説明できない部分がある。今回の感染拡大では、若い世代の間で増えた感染が、ワクチンの効果などで高齢者に移行せず、『若者で増えて若者で減った』という動きになった。これまでの感染拡大の波でも若者の感染者数は急増して急減する傾向で、高齢者に移行しなかったことで、そうした動きが全体の感染状況として現れているという可能性もある。複数ある要素がそれぞれどの程度感染減少に関わっているのか十分に解明できていないので、引き続き分析したい」と述べました。

また、脇田座長は、ワクチン接種の対象ではない12歳未満の子どもでの感染について「これまでのところ子どもの感染者数は夏休みが終わって以降もあまり増えておらず、インフルエンザのように子どもたちどうしで感染が起きて市中感染の広がりを拡大させる要因、『ドライビング・フォース』になるという可能性は想定しにくい。実際には大人から子どもに感染していることが多く、周りの大人がまず感染予防対策をしっかり行い、ワクチン接種を進めることが子どもたちを守ることにつながると考えている」と述べました。

新規感染者数 ほぼすべての地域で減少傾向

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、新規感染者数は5日までの1週間では前の週と比べて、全国では0.53倍とほぼすべての地域で1か月以上にわたって減少傾向が続いています。
先月30日を期限に緊急事態宣言が解除された地域のうち、首都圏の1都3県では
▼東京都で0.53倍、
▼神奈川県で0.51倍、
▼埼玉県と千葉県で0.54倍、
関西では
▼大阪府で0.57倍、
▼京都府で0.56倍、
▼兵庫県で0.47倍、
▼滋賀県で0.66倍、
中京圏では
▼愛知県で0.44倍、
▼岐阜県で0.64倍、
▼三重県で0.41倍と前の週の半数前後と減少傾向が続いています。
また、
▼北海道で0.45倍、
▼茨城県で0.55倍、
▼栃木県で0.61倍、
▼群馬県で0.46倍、
▼静岡県で0.35倍、
▼広島県で0.71倍、
▼福岡県で0.41倍、
▼沖縄県で0.45倍と
緊急事態宣言が出ていたすべての地域で減少傾向が続いています。

現在の感染状況を人口10万人あたりの直近1週間の感染者数でみると、感染状況が最も深刻な「ステージ4」の目安の25人を超えている都道府県がおよそ6か月半ぶりになくなり、
▼沖縄県が20.17人、
▼大阪府が16.97人、
▼兵庫県が10.21人、
▼東京都は9.14人、
そして全国でも6.91人と10人を下回りました。