なぜ? 5日間で延べ150機 中国軍機が台湾防空識別圏に進入

台湾が設定する防空識別圏に進入する中国軍機の数が今月に入って急増していて、5日までの5日間だけで延べ150機に上っています。
台湾の閣僚らは中国を非難するとともに圧力に屈しない姿勢を示しました。

戦闘機や爆撃機など 昼夜にわたって…

台湾の国防部によりますと、台湾が南西沖に設定している防空識別圏に、4日、昼夜にわたって中国軍の戦闘機や爆撃機など延べ56機が進入しました。去年9月に国防部が今の形式で発表を始めて以来、1日に進入が確認された中国軍機としては最も多い数です。

5日は日中に1機の進入が確認されたということですが、中国軍機の進入は今月に入って急増していて、5日までの5日間だけで合わせて延べ150機に上っています。

【中国軍機の種類】

台湾の国防部の発表によりますと、この4日間で台湾が設定する防空識別圏に進入した中国軍機の内訳は、多い順に、
▽殲16戦闘機 延べ100機、
▽スホーイ30戦闘機 延べ20機、
▽轟6爆撃機 延べ16機、
▽運8対潜哨戒機 延べ7機、
▽空警500早期警戒管制機 延べ6機となっています。

【飛行ルート】

中国軍機のこの4日間の飛行ルートは、多くの場合、台湾本島と、その南西沖の南シナ海にあって台湾当局が実効支配する東沙島の間を割るように中国側から入り、ほぼ同じルートを引き返すものとなっています。

台湾は、台湾海峡の中間線と防空識別圏の2種類の警戒ラインを設定していますが、今月の一連の進入では、台湾が「挑発的な意図がさらに強い」とみなす中間線を横切ったケースは確認されていません。

しかし、今月1日の夜には、戦闘機と爆撃機が台湾の南西沖からそのままフィリピンとの間の海峡を通過して台湾の南東沖の太平洋側まで回り込んでいて、台湾にとっての脅威は増しているという見方もあります。

台湾首相「中国はますます度を越してきた」

台湾の首相にあたる蘇貞昌行政院長は、5日「中国はますます度を越してきた」と非難したうえで「中国が地域の平和を繰り返し侵害し、台湾を圧迫するのを世界は見ている。簡単に武力を行使させないようわれわれ自身が強くなり、団結する必要がある」と述べました。

邱国正国防部長も「中国軍機のこれほど頻繁な進入はわが空軍と防空部隊にとって非常に大きな重圧だが、この重圧がわれわれの力となり、戦いの備えを促すことになる」と述べ、圧力に屈しない姿勢を示しました。

中国軍の動向に詳しい専門家の掲仲氏は「主力戦闘機の配備数が増え、複数の部隊が合同で作戦を行う能力やパイロットの夜間飛行の技量が上がっていることがうかがえる」として、台湾にとっての脅威は増していると分析しています。

台湾 市民の声は…

台北で聞いた市民の声です。
50代の女性は「怖くなんかありません。脅そうとしているだけです」と冷静に受け止めていました。

一方、少し不安そうに話す人もいて、40代の女性は「侵略されているような感じがします」と答えました。

中国の習近平指導部は、「1つの中国」を認めない台湾の蔡英文政権との対話に応じず、軍事的な圧力を強めていますが、20代の男性は「台湾の政権と中国の政権によい協力関係がないので、彼らの挑発が続くことになるのでしょう」と話していました。

共産党系メディア “米と関係深める蔡英文政権への警告”

中国は、今月1日から建国記念日にあたる「国慶節」の大型連休に入っています。
中国国営の中国中央テレビは、今回の進入について、「中国軍は、連休も返上で、4日連続昼夜を問わず、台湾をパトロールした」と伝え、国内向けにアピールすることで国威発揚を図るねらいもあるとみられます。
そして、「一連の飛行を通じて、中国の断固とした態度や、強力な実戦能力を示すことができる」とする専門家のコメントを伝えています。

また、共産党系のメディア「環球時報」の電子版は4日、掲載した評論記事で、アメリカと関係を深める台湾の蔡英文政権への警告だと伝えています。この中では、「中国軍の演習は、主権の主張だけでなく、台湾攻撃に必要な準備でもある。平和的統一への努力は放棄しないが、戦闘によって台湾を解放することが、次第に中国の世論の主流になってきている」とけん制しています。

専門家「圧倒的軍事力で台湾の人たちの心を屈服させるのが目的」

中国の安全保障に詳しい東京国際大学の村井友秀特命教授は、一連の進入について「中国の対外姿勢は、その9割が国内問題を反映していると言われているが、今月は建国記念日があり、さらに来年の共産党大会を控えたこの時期は、政治に対する関心が国全体で非常に高まるので、国民に対し共産党のさまざまなパフォーマンスを見せないといけない。今回のような行動は、共産党の正統性、平たく言えば人気を高めるために大事だからだ」と分析しています。

また、最近の国際情勢と関連して「中国は、アメリカが不手際のある形でアフガニスタンから撤退したと捉えているので、台湾に対して『アメリカは信用できない』、『中国は非常に大きな力を持っている』と示すいいタイミングだと判断したのではないか」としています。

そのうえで、今回の行動は中国による台湾の統一を念頭に置いているとしたうえで「中国は、圧倒的な軍事力を見せつけることで、台湾の人たちが抵抗するのを諦め、みずからの意向に従うのが理想だと考えている。軍事行動の一環というよりは軍事力を見せつけることで、台湾の人たちの心を屈服させるのが大きな目的だ」と指摘しました。

中国外務省報道官「アメリカに口出しされる筋合いない」

中国とアメリカの報道官が、それぞれ反応しています。

中国外務省の華春瑩報道官は4日、コメントを発表し、「台湾は中国の台湾であり、アメリカに口出しされる筋合いはない」と強く反発しました。

そのうえで、アメリカのバイデン政権が台湾に対して日本円でおよそ820億円に上る武器を売却することを決めたり、アメリカ軍の艦船が台湾海峡を頻繁に通過していたりしているなどと指摘し、「こうした挑発行為は中国とアメリカの関係を損ない地域の平和と安定を壊すものであり、中国は断固反対し、必要な対抗措置をとる」と強調しています。

米ホワイトハウス報道官「台湾に圧力をかけないよう求める」

これに対し、ホワイトハウスのサキ報道官は、4日の記者会見で「中国による台湾周辺での挑発的な軍事行動は、地域の平和と安定を弱体化させるものであり懸念している。中国政府には台湾に対する軍事的、外交的、経済的な圧力をかけないよう求める」と述べ、中国側に対して台湾への圧力をかけないよう、高官レベルで求めていく考えを示しました。

松野官房長官「引き続き関連動向を注視」

発足したばかりの岸田内閣の閣僚も、中国軍機の進入について反応しています。

松野官房長官は4日、閣議のあとの記者会見で「台湾防空識別圏内での中国軍航空機による活動に関する台湾当局の発表などの動向は承知しているが、こうした動きのひとつひとつについて、コメントすることは差し控えさせていただく」と述べました。

そのうえで「わが国としては、台湾をめぐる問題が、当事者間の直接の対話により、平和的に解決されることを期待するというのが、従来からの一貫した立場だ。政府として、引き続き、関連動向を注視していきたい」と述べました。

岸防衛相「しっかりと状況を注視」

また、岸防衛大臣も記者会見で「台湾は地理的に、わが国から非常に近接したところに位置している。そこで中国軍機の活動が活発化をしている状況であるので、しっかりと状況を注視していく必要はある」と述べました。