三菱電機 柵山会長が辞任 長年にわたる検査不正問題で引責

三菱電機の柵山正樹会長は、複数の工場で長年にわたり製品の検査で不正が行われていたことの責任を明確化するとして、1日付けで辞任しました。ことし7月には当時の社長も引責辞任していて、会社はトップ2人の交代で出直しを図ることになります。

三菱電機をめぐっては、長崎県の工場などで製品の検査で不正が行われていたことが明らかになり、なかでも長崎県の工場では30年以上にわたって不正が続いていました。

この一連の不正を受けて、柵山会長は「経営に対する一層の監督機能の強化を図るためには、身を引くことが望ましい」などとして、1日付けで辞任しました。

柵山氏は、2014年に社長に就任し、3年前から会長を務めていました。今回の辞任に合わせて、経団連の副会長も辞任するとしています。

三菱電機の検査不正はことし6月に発覚し、翌7月には当時の杉山武史社長が引責辞任しました。これで会長、社長がともに引責辞任する形となり、三菱電機はトップ2人の交代で出直しを図ることになります。

再発防止策を公表

一方、三菱電機は一連の検査不正などの調査を進めている弁護士などによる調査委員会から
▽長崎県にある長崎製作所と
▽岐阜県にある名古屋製作所可児工場に関する
報告書を受け取りました。

この中で一連の不正の原因について従業員の間で「品質に実質的に問題がなければよい」と正当化が行われていたと指摘しています。

そして、これらの問題を生み出した組織風土について「工場や製作所といった拠点単位の内向きで閉鎖的な組織風土が存在していた」などとしています。

そのうえで「品質部門について製造部門からの独立性を確保することが重要で、従業員が安心して声を上げることができる企業風土を構築すべきだ」などと提言しています。

これを受けて、会社は再発防止策を公表し、これまでそれぞれの製造拠点に置かれていた製品の品質を保証する部門について1日付けで独立させ、本社に社長直轄の「品質改革推進本部」を設置しました。

さらに来年4月にはこの組織を担当する執行役を外部から招き、不正が起きない体制を目指すとしています。

また
▽社内公募を行い会社を変革するプロジェクトを立ち上げるほか
▽経営の監督機能を強化するため取締役会の改革を進めるなど
組織風土も変革するとしています。

三菱電機をめぐっては香川県や広島県の工場でも検査不正が明らかになっていて、調査委員会は今後もすべての製作所での品質に関する調査を続け、来年4月をめどに調査の完了を目指すとしています。

柵山前会長「問題は経営層と現場の断絶」

長年、製品の検査で不正が行われてきたことを受けて1日、引責辞任した三菱電機の柵山正樹前会長は、東京都内で記者会見し「三菱電機が抱える問題は『経営層と現場の断絶』だ。心から責任を痛感している」と述べ、陳謝しました。

この中で、柵山前会長は「多大なるご心配、ご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます。三菱電機が抱える問題は『経営層と現場の断絶』にあり、現場の従業員にはたいへん申し訳なく思っている。マネジメントの問題で、心から責任を痛感している」と述べ陳謝しました。

そのうえで「技術系の社員は1つの工場に配属になると、そこにずっと長い間いることが多い。連帯感というものが逆に自浄作用を妨げることに働いた可能性もあると考えている」と述べ、不正が続く背景には、1つの職場に長くとどまる現在の人事制度があったのではないかという認識を示しました。

一方、漆間啓社長は、一連の不正について「現場と本社に隔たりがあるのではないかという指摘は真摯に受け止めなければならない。現場からはなかなか相談できないということがあったと聞いている。我々、執行役自身がまず反省し、しっかりとコミュニケーションをとっていきたい」と述べました。

可児工場 不正申告しなかった背景

岐阜県にある三菱電機の名古屋製作所可児工場では、ことし4月までの8年間にわたって出荷した200万台余りの電気制御機器について、必要とされる安全認証を得ていない材料で製造していました。

調査報告書によりますと、2012年に安全認証の規格が変わった際、可児工場では、新たな規格を満たす材料を使うと耐久性を満たすことができなくなることがわかり、工場長の了承を得たうえで規格に満たない材料を使い続けたと指摘しています。また、可児工場では2016年度から3度にわたって総点検が行われましたが、不正の申告はありませんでした。

従業員のひとりは調査に対して「問題の是正を行うのは工場の現場であり、本社から是正の支援・サポートを受けられるわけでもないと思った」と述べています。

そのうえで報告書は、会社の本部と現場の間に断絶が生じていたことが根底にあると指摘しています。

長崎製作所 製品の検査 必要な設備ない事例も

三菱電機の長崎製作所では、鉄道用の空調装置や列車のブレーキなどに使われる空気圧縮機の検査で、30年以上にわたり不正な検査が行われてきました。

調査報告書によりますと、工場の従業員は「実質的な品質さえよければ問題ない」として、不正を続けてきたと指摘しています。

製品の検査項目は、顧客との協議に基づいて数や内容を決めますが、中には『防水試験』を行うことになっているのに、必要な設備がないといった事例もあったということです。

顧客に対して「実施が難しい試験は除外してほしい」と求めても、過去の対応とつじつまがあわなくなるため、こうした協議は行われてこなかったとしています。

また、工場の課長クラスは、一部の試験が行われていないことを認識していましたが、適正な試験を行うためには大規模な設備投資が必要になるほか、生産スケジュールも維持できなくなるとして、不正を見逃していたと指摘しています。

経団連 十倉会長「再発防止に取り組んでほしい」

長年にわたる検査不正が明らかになった三菱電機が弁護士などによる調査報告書を公表したことについて、経団連の十倉会長は夏のフォーラムのあとの記者会見で、「この問題は言うまでもなく、日本の製造業の強みである品質保証のところを揺るがす大問題だ。調査報告書を踏まえて再発防止に取り組んでほしい」と述べ、三菱電機に対し信頼回復に努めるよう求めました。

また、ことし6月から経団連の副会長を務め、検査不正の発覚後、財界での活動を自粛していた三菱電機の柵山正樹会長が経団連の副会長を辞任したことについては、「本人もこの問題を非常に深刻に考えていた。今回の決断を重く受け止め、尊重したい」と述べました。