日銀短観 大企業製造業で5期連続改善も景況感の回復は足踏み

日銀が1日発表した短観=企業短期経済観測調査で、大企業の製造業の景気判断を示す指数は、プラス18ポイントと前回調査を4ポイント上回り、5期連続の改善となりました。ただ、先行きは悪化する見通しで、景況感の回復は足踏み感が出ています。

日銀の短観は、国内の企業1万社近くに3か月ごとの景気の現状などをたずねる調査で、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた指数で景気を判断します。

今回の調査は、8月下旬から9月末にかけて行われ、大企業の製造業の景気判断はプラス18ポイントと、前回・6月の調査を4ポイント上回り、5期連続の改善となりました。

これは、石油など原材料の値上がりを受けて製品価格への転嫁を進めた「鉄鋼」や「化学」などの素材業種を中心に景況感が改善しました。

その一方で、「自動車」では、東南アジアでの感染拡大によるロックダウンが続き、半導体など部品の調達が滞っている影響で、大手メ-カーが減産を余儀なくされ、マイナス7ポイントと大幅に悪化しました。

また、3か月後の見通しについてはプラス14ポイントと、4ポイント悪化するという見込みで、これまで着実に改善してきた大企業製造業の景況感の回復は足踏み感が出ています。
一方、大企業の非製造業の景気判断はプラス2ポイントで、前回から1ポイントの改善となりましたが、業種別ではコロナ禍で「宿泊・飲食サービス」、学習塾や介護などの「対個人サービス」で厳しい状況が続いています。

自動車メーカー各社 合わせて100万台以上の減産も

世界的な半導体不足に加え、サプライチェーンの拠点となっている東南アジアからも感染拡大の影響で部品が調達できず、自動車メーカー各社は大規模な減産に追い込まれています。主要メーカー6社の今年度の生産台数は計画より100万台以上、減る見通しです。
このうちトヨタ自動車は、今年度1年間の国内外の生産台数の見通しを、これまでの930万台から900万台レベルと、およそ30万台引き下げました。

また、スズキも今年度1年間で35万台規模、日産自動車は25万台規模、三菱自動車工業とSUBARUはそれぞれ4万台規模で生産が減るという見通しを明らかにしています。

このほかホンダも減産に伴って販売の台数が15万台、減少するとしていて、6社の今年度の生産台数は、当初の計画と比べて100万台以上、減る見通しです。

メーカー各社は、部品の調達が回復すれば休日も稼働するなど挽回生産に力を入れることにしていますが、感染がおさまる見通しが立たない中、影響が長期化することも懸念されています。

他分野で事業拡大目指す部品メーカーも

大手自動車メーカーの工場が相次いで稼働停止に追い込まれた影響は、取り引き先の部品メーカーにも波及しています。少しでも収益を改善しようと、自動車以外の分野で事業の拡大を目指す企業も出始めています。
群馬県にあるプラスチック製品を手がける会社は、車の窓枠になる「ピラー」の部品などを製造していて、売り上げの6割を自動車関連が占めています。

しかし、納入先の自動車メーカーでは、半導体不足や、感染が急拡大した東南アジアから部品をなかなか調達できなくなり、工場の稼働を一時的に止めたり減産したりしました。その余波で、この会社も、自動車向けの部品の生産ラインを断続的に止めざるを得なくなったということです。

最近では、およそ60人いる従業員のうち半数は交代で一時帰休させ、国の雇用調整助成金を使いながら雇用を維持しています。ただ、今のような状況が続けば、コロナ禍で売り上げが落ち込んだ昨年度に続いて、今年度も赤字に陥る可能性があるということです。

こうした中、会社では売り上げの減少分を補うため、この夏、医療品や化粧品向けのプラスチック容器を増産することを決め、新たな生産設備を導入することにしました。

ただ、仕入れ先のメーカーからは半導体が不足しているため、年内に設備を納入するのは難しい、という連絡を受け、コロナと半導体不足のダブルパンチで立て直しにも時間がかかる状況となっています。
群馬レジンの箱田一孝社長は「新たな設備が届くのに時間がかかるのはしかたないと思う。当面は自動車部品の比率を下げて事業を多角化して収益性を高め、変化に強くなりたい」と話しています。