緊急事態宣言と重点措置 30日ですべて解除 分科会が了承

新型コロナウイルス対策で、専門家でつくる分科会は19都道府県の緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置について、30日の期限をもってすべて解除する政府の方針を了承しました。

新型コロナウイルス対策をめぐり感染症などの専門家でつくる政府の「基本的対処方針分科会」が28日午前、開かれました。

この中で西村経済再生担当大臣は「新規陽性者の数が全国的に大きく減少し、重症者の数もピーク時の半分以下の水準まで減少している。病床使用率もすべての地域で50%を下回り、病床のひっ迫の状況にかなり改善が見られ、医療への負荷が全体として軽減されてきている」と述べました。

そのうえで、東京や大阪など19の都道府県に出している緊急事態宣言と、8つの県に適用しているまん延防止等重点措置について、30日の期限をもってすべて解除する方針を諮りました。

一方、西村大臣は「解除したあとさまざまな活動が活発になれば必ず感染者の数が増えていく。早期の感染再拡大を招かないようにリバウンドを防ぐという観点から、必要な対策を継続することとしている」と述べました。

そのうえで、宣言が解除された地域では今後1か月をめどに
▽自治体などから感染対策の認証を受けた飲食店は午後9時まで
▽それ以外の飲食店は午後8時までの営業時間の短縮を求めることを基本とし、酒の提供は認めるものの感染状況に応じて知事が適切に判断するとした方針を示しました。
そして、営業時間の短縮要請に応じる飲食店に対し協力金を支給し、国が財源の8割を引き続き支援する考えを示しました。

また、イベントの開催制限について1か月間の経過期間として収容定員の50%以内、または最大1万人とすると説明しました。

西村大臣は「宣言などを解除し段階的に対策の緩和を行うこととしているが、冬場の感染再拡大に備え今後も医療提供体制の維持と強化に取り組むと同時に、仮に再拡大の傾向が見られた場合には都道府県とも連携し、重点措置の適用を含め必要な対策を機動的にとっていきたい」と述べました。

分科会では、こうした政府の方針について議論が行われ了承されました。

これを受けて政府は衆参両院の議院運営委員会に報告し、質疑を行ったうえで28日午後5時から開かれる対策本部で正式に決定し、その後、菅総理大臣が午後7時をめどに記者会見することにしています。

これにより、東京ではおよそ2か月半ぶり、沖縄ではおよそ4か月ぶりに宣言が解除されることになり、宣言と重点措置がどの地域にも出されていない状況はことし4月4日以来、およそ半年ぶりになります。

西村経済再生相「再拡大に備え 段階的に緩和」

西村経済再生担当大臣は分科会のあと記者団に対し「特に多くの意見をいただいたのは、冬の寒い時期に再び感染が拡大していくことにしっかりと備えなければいけないということだ。去年も11月、12月、年末年始に大きな感染があった。解除して活動が活発になれば必ず感染は増えるので、リバウンドに備えるためにも段階的にさまざまな制限を緩和していく」と述べました。

そのうえで「外出や移動も引き続き注意をしていただきながら、特に混雑している場所や時間帯を避けていただくことを『基本的対処方針』に書いている。特にワクチン接種が終わっていない方はより注意をして、県をまたぐ移動の際の検査などを勧奨していくので引き続き協力をお願いをしたい」と呼びかけました。

田村厚労相「リスクの高い行動は解除後も注意喚起」

田村厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で、緊急事態宣言などが解除されたあとも、日常生活の制限は段階的に緩和する必要があるとして、感染リスクの高い行動には引き続き注意するよう呼びかけました。

この中で田村厚生労働大臣は「緊急事態宣言などはすべて解除になるが、無条件の解除ではなく段階的な緩和を求めている。新型コロナがなかったときのような行動に戻ってもらっては困り、リスクの高い行動については解除後も注意喚起しないといけない」と述べました。

そのうえで「これまで感染の波はだんだんと大きくなっており、そこも想定しないといけない。ワクチン接種が進むと重症化の率が減るなど状況が変わる。リスクを判断しながら体制を整えていく必要がある」と述べ、引き続き対策を講じていく考えを示しました。

一方、田村大臣は、新型コロナの感染予防対策に取り組む医療機関への診療報酬の特例的な上乗せについて来月以降、最大10万円とする補助金に切り替えるほか、コロナ患者の診察に対する診療報酬の拡充を発表しました。

立民 枝野代表「財政的支援をしっかりと」

立憲民主党の枝野代表は党の役員会で「今ここからが感染を抑え込めるかどうかの大きな山だ。各自治体の対応が緩んだり対応したくても財源の裏付けがないことで感染のリバウンドや次の医療崩壊が起き、飲食店が倒れていくことにつながらないよう、政府が財政的支援をしっかりと進めることを強く求めていきたい」と述べました。

また、立憲民主党の福山幹事長は記者団に対し「政権の対応は後手後手に回り、治療を受けられずに亡くなった方が少なくない。政府が機能していたら死ななくてすんだ人々がどれほどいるかと、極めて残念に思う。感染の第6波が大きなものにならないように、病床の確保やブースター接種などの対策が求められる」と述べました。

公明 山口代表「国民に対して丁寧な説明を期待」

公明党の山口代表は記者会見で「新規の感染者数の減少傾向がはっきりしており、医療提供体制が緩和されつつある状況を踏まえての判断だろう。一方で、国民の気持ちが急に緩んでリバウンドするようなことは避けなければならず、政府には国民に対してどう行動すべきか丁寧な説明を期待したい。適切な対応策を重ねながら収束に向けて努力していく必要がある」と述べました。

共産 志位委員長「多くの犠牲出たこと まさに政権による人災」

共産党の志位委員長は、記者会見で「菅総理大臣は、最後までみずからの失政の責任を認めない姿勢だった。感染拡大の第5波で大変多くの犠牲が出たことは、まさに政権による人災で、強い反省が必要だ。いま大切なのは、第6波への対策と備えの両方をしっかりとやることであり、医療と保健所の体制の抜本的強化や、事業者への十分な補償などを行うことだ」と述べました。

維新 遠藤国対委員長「対策終わりということにはならず」

日本維新の会の遠藤国会対策委員長は、NHKの取材に対し「感染して、後遺症で困っている人もまだまだ多くいて、宣言を解除したことで対策が終わりということにはならず、今後も国会などでの腰を据えた議論が必要だ」と述べました。

国民 大塚代表代行「事業者や国民への支援継続求める」

国民民主党の大塚代表代行は記者団に対し「宣言解除は一定の合理的な判断だと思う。一方で感染の第6波の懸念もあり、変異株の種類も増えているので、政府には引き続き十分な注意をはらってもらいたい。まずはPCR検査をいつでもどこでも公的負担で受けられることが大事だ。『コロナ禍』は続いているという前提で、事業者や国民への支援継続を強く求める」と述べました。