日米豪印「クアッド」 4か国の首脳会合 毎年開催で合意

クアッドと呼ばれる日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国による首脳会合が行われ、覇権主義的な行動を強める中国を念頭に自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、新型コロナウイルス対策などに加え、インフラや宇宙などの分野でも協力を強化することで一致しました。

また、4か国の首脳会合を毎年行うことでも合意しました。

首脳会合は日本時間の午前3時すぎからアメリカの首都ワシントンのホワイトハウスで開かれ、アメリカのバイデン大統領、オーストラリアのモリソン首相、インドのモディ首相が出席しました。

クアッド=4か国による首脳会合が対面で行われるのは初めてです。

会合で4人の首脳は覇権主義的な行動を強める中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて基本的価値を共有する4か国のコミットメントを再確認し、引き続きさまざまなパートナーとの連携を広げ、具体的な協力を積み上げていくことで一致しました。

また新型コロナウイルス対策で、ワクチンの生産拡大やインド太平洋地域への供給を含め協力していくことを確認しました。

さらに、インフラや宇宙、サイバー、クリーンエネルギーなどの分野でも協力を強化していくことで一致し、高速・大容量の5Gなどの重要技術についても技術の設計や開発、利用などの原則に関する声明を採択し、連携をさらに強化することになりました。
一方、気候変動の問題で菅総理大臣は、アメリカが主導する「メタン」の世界的な排出量を削減する取り組みへの参加を表明しました。

そして、4人の首脳は協力のさらなる発展に向けて首脳会合を毎年行うことで合意しました。

また、東シナ海や南シナ海の情勢をめぐり、菅総理大臣は中国を念頭に、力を背景とした現状変更の試みに深刻な懸念を表明し、4人の首脳は国際法をはじめとするルールに基づく海洋秩序への挑戦に対応するため、連携していくことを確認しました。

このほか、菅総理大臣は香港や新疆ウイグル自治区の状況に懸念を表明したほか、台湾をめぐる問題について「台湾海峡の平和と安定は重要だ」とする日本の立場を伝えました。

また、先に弾道ミサイルを発射した北朝鮮に対し、4人の首脳は国連安保理決議の義務に従い、挑発行動を控えるとともに、実質的な対話を行うよう求めることで一致しました。

さらに、中国や台湾がTPP=環太平洋パートナーシップ協定への加入を申請したことを踏まえ、インド太平洋地域の今後の国際秩序の在り方をめぐっても意見を交わしました。

一方、菅総理大臣は首脳会合の冒頭、アメリカが東京電力福島第一原子力発電所の事故のあとから続けていた日本の食品の輸入規制を撤廃したことについて「東日本大震災の復興を後押しする大きな一歩だ」と述べ、バイデン大統領に謝意を伝えました。

オーストラリア モリソン首相「ASEANとの関係を重視」

首脳会合のあとオーストラリアのモリソン首相は記者団に対し「クアッドは私たちが暮らす地域の将来を考えるパートナーを1つにまとめた、実用性の高い、前向きな構想だ。私たちは引き続き集中して必要な取り組みを進めていくことで一致した」と述べ、新型コロナウイルスのワクチンの国際社会への提供やクリーンエネルギーなどの分野で協力を進めていくことで確認したことを高く評価しました。

そして、オーストラリアが今月、アメリカ・イギリスとともに新たに創設した安全保障の枠組み「オーカス」について、クアッドを軽視することにつながらないかと問われたのに対し「2つの枠組みは互いを補強し合うものだ」と答えたうえで「クアッドでは特に、ASEAN=東南アジア諸国連合を尊重している。クアッドの各国は巨大なASEANとの関係を重視しており、世界、とりわけこの地域をASEANの視点から見ていくことが重要だ」と述べ、クアッドとして東南アジア各国との連携を強化していくことが重要だとの認識を示しました。

また、モリソン首相はツイッターに4人の首脳が並んだ写真とともに「各首脳と、自由で開かれた、強じんなインド太平洋地域のための将来の構想を共有し、変化を続ける複雑な世界で私たちが直面する課題にどのように対応していくべきかすばらしい議論を対面で行うことができた」と投稿しました。

専門家「中国との関係断ってまで対抗の決断しないだろう」

クアッドの首脳会合について、米中関係に詳しい北京大学の賈慶国教授はNHKの取材に対し「4か国が協力を深めるのなら中国も意見はないが、中国を標的にした協力ならば反対だ。イデオロギーによって、冷戦期のような連盟をつくることは歓迎しない」と警戒感を示しました。

その一方で、4か国はそれぞれ経済や貿易で中国と深い結びつきがあると指摘したうえで「4か国は同じ席に着いて、共同声明を発表しているが、中国に公然と対抗する準備はできていないと思う。アメリカも含め、中国との関係はあまりにも重要で、多くの経済的な利益を放棄することはできない。中国との関係を断ってまで、対抗する決断はしないだろう」と述べ、現時点では、クアッドの枠組みを通じて、4か国が一致して中国に対抗するのは難しいという見方を示しました。