【詳しく】QUAD(クアッド)とは?中国とどう向き合う?

「クアッド」と呼ばれる日本、アメリカ、オーストラリア、インドの新たな枠組み。24日、ワシントンで初めてとなる対面での首脳会合が開かれます。経済的・軍事的に影響力を増す中国とどう向き合うのか。それぞれのねらいをまとめました。

Q1.そもそも「クアッド」とは? なぜ連携するのか?

「QUAD(クアッド)」は英語で「4」を意味することばで、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国でつくる連携や協力の枠組みです。

「クアッド」に参加する4つの国は、民主主義などの価値観を共有していて、それぞれ連携を強めることで、インド太平洋地域で存在感を高める中国の行動を抑えたいねらいがあるとみられます。

なかでも、今回の首脳会合を主催するアメリカは、トランプ前政権が、中国に対抗していくためにおととし、4か国の枠組みで初めてとなる外相会合を主導しました。

さらに、バイデン政権は首脳レベルに格上げし、ことし3月にオンラインで「クアッド」の首脳会合を開きました。

Q2.今回の会合、ポイントは?

気候変動や新型コロナウイルス対策、それに半導体などのサプライチェーンの構築やAIなど最先端技術の研究開発といった分野での協力が議題になる見通しです。

これらの分野でどこまで連携を深めていけるか、そして、中国に対する姿勢で4か国がどこまで足並みをそろえられるかが焦点です。

Q3.日本のねらいは?

菅総理大臣は、23日ワシントンへの出発に先立ち、「4か国の間で、新型コロナウイルスワクチン、新しい技術、気候変動などの重要課題に関する会合を開き、自由で開かれたインド太平洋の具体化の道を探っていくのが、今回の訪問の趣旨だ」と記者団に述べました。

覇権主義的行動を強める中国を念頭に、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、自由や民主主義、法の支配など基本的価値を共有する4か国の連携の重要性を確認したい考えです。

そのうえで、▽途上国へのワクチンの公平な分配を含む新型コロナウイルス対策、▽高速・大容量の5Gや先端的なバイオ技術などの重要技術、それに▽気候変動対策などについて、さらに協力を進めていくことで一致したい考えです。

Q4.アメリカのねらいは?

バイデン政権は「最大の競合国」と位置づける中国に対抗していくうえで、同盟国や友好国との連携が重要だとしていて、特に「クアッド」の枠組みを重視しています。

「クアッド」の特徴のひとつは、アメリカと同盟関係にはないインドが参加していることです。

バイデン政権としては、同盟関係にある日本とオーストラリアだけでなく、インド太平洋地域の大国のインドを引き寄せて幅広い分野で協力を強化することによって、経済的・軍事的に影響力を増す中国に対処していく考えで、初めての対面での首脳会合を通じ、強固な関係を印象づけたいねらいです。

バイデン政権は半導体や5G、AI・人工知能などの分野で中国に主導権を握られることは経済安全保障上のリスクになり得るとの考えで、こうした最先端技術についての協力を重視しています。

Q5.なぜこのタイミングで首脳会合を開くのか?

アメリカは当初から対面の首脳会合をことし秋に開きたいという意向を示していましたが、菅総理大臣が退陣することになった中でも、この時期の開催にこだわりました。

その背景には、政権が最優先課題に掲げる対中国政策で、具体的な取り組みを進めていることを示すねらいがあるとみられます。

バイデン大統領は、アフガニスタンからの軍の撤退による混乱などで批判を受け、支持率も低下していて、ここで指導力をアピールしたいという思惑もありそうです。

Q6.オーストラリアのねらいは?

オーストラリアも「クアッド」の枠組みの連携を強化して、中国の行動を抑えたいねらいがあるとみられます。

背景には、オーストラリア政府が「新型コロナの発生源解明のために独立した調査が必要だ」と主張したことに、中国が強く反発して、オーストラリア産のワインや大麦に関税を上乗せするなどの措置を相次いでとったことがあります。

オーストラリアは、今月、中国を念頭にアメリカ・イギリスとともに新たな安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」を設けました。

「クアッド」については、中国に過度に依存しないサプライチェーンの構築など、経済を含む幅広い分野での連携に期待しています。

Q7.中国市場への依存見直し、視線の先は?

中国は、オーストラリアの最大の貿易相手国です。

経済界では、中国市場への依存を見直し、貿易の多角化が必要だとの認識が広がっています。

このなかで熱い視線を向けている先がインドです。

専門家のシドニー大学アメリカ研究センター ジョン・リー上級研究員は、オーストラリアにとって「クアッド」への関与は経済的なメリットも大きいと指摘します。
「オーストラリアが、クアッドで特に重視するのが、インドの存在だ。世界第2位の人口を抱え、巨大な市場であるインドの戦略的な存在感を地域で高めていくことが、オーストラリアがクアッドに込めた思惑だ」。

Q8.インドのねらいは?

インドは中国と国境を接し、去年6月には双方の軍が衝突し互いに死傷者が出る事態に発展しました。

今も国境地帯の一部で両軍がにらみあうなど、領土問題をめぐって中国との間で緊張関係が続いています。

また、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」のもとで海洋進出を強め、インド洋のスリランカやインドの隣国バングラデシュに影響力を高めようとしていることに神経をとがらせていて、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、共通の利益を持つ4か国のパートナーシップを強めたい考えです。

インドは4か国の中で唯一、アフガニスタンと地続きにあり、情勢の不安定化や領土問題で対立するパキスタンがイスラム主義勢力タリバンと接近することを警戒していて、アメリカなどと協議するとみられます。

Q9.インドとほかの国と立場に違いは?

インドにとって、経済面では中国が最大の貿易相手国でもあり、過度に刺激したくないという思惑があります。

このため、インド政府はクアッドについて「特定の国に対抗するものではない」として、いわば「中国包囲網」とみられることは避けたいのが実情です。

こうしたことを踏まえ、今回初めて首脳どうしが直接顔を合わせる会合で、モディ首相がどのような姿勢を示すのかも注目されます。

Q10.「クアッド」と「AUKUS(オーカス)」の違いは?

インド太平洋地域の安全保障問題に詳しい明海大学の小谷哲男教授は、軍事面を重視した「AUKUS(オーカス)」と「クアッド」では機能が異なると指摘します。
「クアッドはもともと、安全保障をメインに考えた枠組みだったが、中国の警戒や、東南アジアも不信感を高めてしまうということで、最近は経済安全保障を重視するようになっている。クアッドは、軍事安全保障というより、地域に対して公共財を提供するような枠組みに向かいつつあるのが実情だ。また、バイデン政権は、インド太平洋地域の問題を特定の枠組みですべて対処することはできず、いろいろな枠組みを組み合わせるべきだとしていて、クアッドとオーカスは相互補完的なものだと考えていると思う」。