重症者ゼロの秘策は 新型コロナ「ローカルの力」結集で対応

爆発的な感染拡大となった、第5波。
そうした中で、区民の重症者数をゼロに抑えているのが、東京 墨田区です(今回の緊急事態宣言が出された7月12日以降)。

その秘策は「ローカルの力」を高めることでした。

墨田区の薬局に掲げられた1枚のステッカー。
自宅療養者への支援に、薬局が対応することを示しています。

自宅で療養する人たちが重症化しないように、薬局が治療薬を届ける取り組みです。
協力しているのは、29の薬局に上ります。

薬局が自宅療養者のケアを担う

「どうですかその後、お熱は」。

電話で体調を聞き取るなど、自宅療養者の容体が急変しないか、健康観察も担っています。

(墨田区薬剤師会 金正有希子理事)
「自宅療養者で不安しかないと思うんですよね。いつでも連絡してくださいねと、相談窓口として少しでも安心感を与えられればと」

「ローカルの対応力」を結集した体制

ワクチンの2回目接種は全国では5割を超えたばかりですが、墨田区ではすでに7割近くに上っています。

対応の中枢を担う墨田区保健所の西塚至所長が、自宅療養者をケアしてきた体制について話してくれました。

強調したのは「ローカルの対応力」を強化することでした。
第5波では、地域の医師や訪問看護師が往診を行う「健康観察チーム」を発足させ、そこに薬局も加わり、在宅でも速やかに治療が始められる体制を整えたのです。
(墨田区保健所 西塚至所長)
「一見、軽症者とみられた方がある日突然、重症化していく。第5波ではひょっとしたら保健所も在宅療養者の支援ができなくなるかもしれないということを前提に、医師会、薬剤師会のほうで在宅療養の支援体制を作っていただきました」

病院では「抗体カクテル療法」専用病床を確保

重症化を防ぐ取り組みは、病院でも進んでいます。

墨田区の同愛記念病院では、7月から新たな治療薬の投与が始まりました。同時に投与することで、2種類の抗体が作用してウイルスの働きを抑える「抗体カクテル療法」です。

これまでに投与できたのは、区内で100人に上ります。
抗体カクテル療法は、発症から7日以内に行う必要があります。
しかし、病床がひっ迫しているとタイミングを逃してしまいます。

このため、墨田区では抗体カクテル療法の専用病床を確保し、多くの投与につながったのです。
(同愛記念病院 感染管理担当 鈴木謙部長)
「皆さん軽快退院をされ、それ以上重症化して予後が悪くなった方はいなかった。投与できる方を多く紹介されておりますので、連携はうまくいってるのかなと思います」

子どもたちの感染対策も「ローカルで解決へ」

一方で、新たな課題となっているのが、子どもたちの感染の増加です。

園児30人余りが感染した保育所もありました。

現在、日本では12歳未満の子どもはワクチン接種ができません。
保育や学びの場を守りながら、感染をどう食い止めるか。
ここでも、教育現場と保健所の間で連携しました。

発熱などで欠席した子どもたちの情報を共有し、それ以上感染が広がらないように地域で対応しようとしています。

(墨田区保健所 西塚至所長)
「ローカルで課題を解決していく、次の波までにさまざまな課題も出ると思いますけど、地域の皆さんに支えられながらどんなリスクも乗り越えていこうと思います」