世界各地の“株安” 要因となった中国の「恒大グループ」とは

20日の欧米の株式市場、それに連休明けの21日の東京株式市場など世界各地の株価が大きく値を下げる要因となったのは巨額の負債を抱える中国の不動産大手「恒大グループ」の経営悪化です。有利子負債は日本円で9兆円を超え、中国経済全体に影響を及ぼすことへの懸念からでした。

今回、株安の要因となった「恒大グループ」とはどんな会社なのか。そして、いわゆる「バブル」ともいわれる、過熱する中国の不動産投機をめぐる状況、そして日本への影響についてもまとめました。

サッカークラブなど不動産以外にも事業拡大

1996年に創業した「恒大グループ」は積極的な投資によるマンション開発などで急成長し、2009年に香港証券取引所に上場。中国全土で不動産事業を展開してきました。
およそ20万人の従業員を抱え、去年 2020年の年間の物件の販売面積はおよそ8000万平方メートルと業界で2位でした。

会社は不動産以外にも事業を拡大してきたことで知られ、ヘルスケアや飲料水、EV=電気自動車などの事業のほか、プロサッカークラブの「広州恒大」、今の「広州FC」の運営にも参入しています。

しかし、融資や社債の発行などに依存して事業を拡大し続けてきた結果、負債が膨れあがり、経営の重荷になっていきます。
ことし6月末の時点で有利子負債は5700億人民元、日本円で9兆7000億円余り、負債総額は1兆9600億人民元、日本円でおよそ33兆円規模に上っています。
そして、中国政府が不動産市場の過熱を警戒して規制強化を進めたことで不動産事業の採算も悪化し、資金繰りへの懸念が広がるようになりました。

このところ、各地で建設中の物件の工事が止まって取引先への支払いが滞っているほか、インターネット上では、マンションを購入したのに完成の見通しが立たず入居できないといった不満が投稿されています。

またグループは、年率10%前後といった高い利回りを約束した金融商品も発行していて、このうち日本円でおよそ6800億円分が満期を迎えているとも報じられていて、今月半ばには償還を求めて個人投資家が本社に押し寄せる騒動も起きました。

経営が悪化する中、恒大グループはEV関連などの資産売却を進めて財務の改善を急ぐ方針ですが、今のところ想定通りには進んでいません。

「ことし年末にかけて多額の社債の利払い期限」

会社の資金繰りに懸念が高まる中、今月13日には、グループが販売する金融商品の償還を求めて個人投資家が本社に押し寄せるなど、騒動も起きています。
また市場関係者によりますと、今月23日には日本円にして合わせておよそ130億円の社債の利払いの期限を迎えるほかその後も年末にかけて多額の社債の利払い期限が迫っているということです。

こうした巨額の利払いを支払えるのか懸念が高まっていて、資金繰りに行き詰まって会社が破綻した場合、従業員や取引先の企業に大きな影響が出るおそれがあります。
また、恒大グループが資金調達を急ぐため保有する物件をいわば投げ売りした場合、不動産価格の下落を通じてほかの業者にも打撃が及ぶことが懸念されています。

そして、不動産関連の融資が多い金融機関の不良債権が増え、経営体力を弱めることにつながるとも警戒されています。

工事停止の建設現場も 「資金に余裕ないことの影響」

恒大グループの拠点の1つ、南部の広東省広州の郊外では、150万平方メートルの広大な土地で、サッカー場を中心に、高層マンションや商業施設の開発が進められています。

しかし、現場では建設用の大型機械は動いておらず、建設会社の関係者などによりますと、作業は1か月近く停止していて、今後について、地元政府と建設会社などとの話し合いが持たれているということです。

市政府から派遣されたという現場の保安担当者は「工事が止まっているのは、恒大グループの資金に余裕がないことの影響だ」と話していました。

また、現場にいた建設作業員の男性は「いまは作業を休んでいる。いつ再開して、いつ完成するのか見通せない」と話していました。

現場近くに設けられたマンションのショールームには、多くの部屋が販売済みであることを示す資料が展示されていました。

マンションは来年の完成予定で、購入したという男性は「広州のような大都市は、事態がどうなっても建設を引き継ぐ業者はいるから心配はしていない。影響が出るとすれば地方都市だろう」と話していました。

高騰続く中国の不動産市場 “バブル”との指摘も

不動産市場はすそ野が広く、中国経済のけん引役となってきた反面、住宅価格の上昇を見込んだ投機的な動きも起き、いわゆるバブルの懸念が長年、指摘されてきました。
主要都市では住宅価格が高騰していて、去年12月の時点で5年前と比べて北京では47.9%、上海では56%、広州では64.4%、それぞれ上昇しています。
一方で、一部の地方都市では、需要にあわない建設ラッシュの結果、買い手がつかない在庫が膨らむ事態も起きています。

中国政府は、去年以降、不動産市場が過熱し、価格の高騰が続くことに懸念を強めていて「住宅は住むものであり、投機するものではない」などと繰り返し警告して規制の強化に動いています。
具体的には、去年8月、不動産業者に対して負債を一定の規模に抑えることなどを定めた「3つのレッドライン」と呼ばれる基準を提示し、守れなかった企業に対して借り入れ制限を導入しました。

また、ことし1月からは金融機関に対して住宅ローンの融資額などに上限を設けていて、こうした規制によって不動産開発投資の伸びは一定程度、抑えられています。
今回の恒大グループの経営悪化はこうした規制強化で借り入れが難しくなったことが影響していて、先月中旬には、金融当局が財務内容の改善などを求めて指導を行っていました。
恒大グループの今後の経営をみるうえでは中国当局の対応が焦点になります。

市場関係者の間では、中国当局としても、不動産市場や金融市場に甚大な影響が出ることは避ける必要があるため、影響を抑えるための何らかの対応をとるとの見方があります。

その一方で、中国では、政府が大企業を破綻させることはないという認識のもとで過剰な投資や債務の問題が拡大してきたことから、今回、恒大グループに対しては厳しい対応をとるのではないかという見方も出ています。

また、不動産市場の規制強化の背景には習近平指導部が、すべての人が豊かになる「共同富裕」という目標のもとで格差の是正を掲げる中で、住宅価格の高騰がさらに進んで人々の間で不公平感が強まることを防ぐ狙いもあると指摘されています。

日本では公的年金積立金を運用する「GPIF」が株式など保有か

公的年金の積立金を運用しているGPIF=「年金積立金管理運用独立行政法人」は、ことし3月末の時点で経営が悪化している中国の不動産大手「恒大グループ」の株式や社債合わせて96億円余りを保有しています。
GPIFが運用している積立金の総額はことし3月末時点でおよそ186兆1600億円にのぼります。
このうち、恒大グループとその関連会社へのことし3月末時点の投資額は時価評価で、株式が37億6500万円余り社債が59億700万円余りで合わせておよそ96億7300万円になるということです。
GPIFは、海外株式市場の株価指数と連動するファンドなどに投資していて、その一部として恒大グループの株式や社債が投資対象として含まれたとしています。

GPIFは、現時点での恒大グループの株式や社債の保有状況や運用実績について「個別銘柄の保有状況は年度末にだけ公表しており、コメントできない」としています。