人生に定年なし!90歳現役インストラクター

9月20日は敬老の日です。健康な老後のためには、適度な運動が欠かせませんが、90歳になっても現役フィットネスインストラクターとして活躍する女性がいます。タキミカこと瀧島未香さん。65歳になって初めてジムに通い始め、年をとるごとに筋力をつけ、体も柔らかくなっていったと言います。70代や80代になっても体を鍛え続け、筋力をつけることは可能なのでしょうか。古谷敏郎アナウンサーが聞きました。
(アナウンス室 聞き手 古谷敏郎、取材 白鳥哲也)

少女時代の運動はバケツリレー

(古谷)
改めて、タキミカさん、生年月日から言ってもらえますか。
(タキミカ)
1931年生まれの90歳です。
(古谷)
それが信じられないんですよね。
(タキミカ)
ああ、そうですか。
(古谷)
東京の品川のお生まれで。
実家がすし店で、少女時代の運動といえば?
(タキミカ)
何もやってませんね、ないんですもん。ただやったのは、戦争で、バケツリレーみたいなことはやりました。
(古谷)
タキミカさんは昭和6年生まれだから、10歳のときに、太平洋戦争が始まりましたよね。
(タキミカ)
はい。ブーンって遠くから敵の飛行機が来ると、「空襲警報!」って言ってね。みんなで防空ごうに行きましたね。
(古谷)
そういうお話を伺ってると、確かにタキミカさん、昭和6年生まれだなっていうのが分かってきます。説得力ありますね。
(タキミカ)
ありがとうございます。
でも、こんなこと説得したってしょうがないじゃない(笑)

ゴロゴロしてたら15キロも太った

学校を卒業したタキミカさん、昭和24年、憧れていた百貨店の仕事につきます。当時の花形の職業だったそうです。タキミカさんの担当は、子ども服売り場。お得意さんから接客の指名が入るほどの人気だったとか。


(古谷)
やりがいもあって仕事をしてきた中、24歳で結婚されたんですよね?
(タキミカ)
はい、そうです。
(古谷)
どうしてまた?
(タキミカ)
どうしてまたって、もらってくれる人が出てきたから(笑)
(古谷)
今の人だったらね、例えば、女性の社会進出だとか、働く女性とか大勢いるじゃないですか。
(タキミカ)
だって、みんな友達、結婚しちゃうんですもん。周りの友達がみんな結婚して残されちゃう。ハハハハハ。
(古谷)
そういう時代なんですね。
(タキミカ)
そういう時代ですね。私は遅いほうだったので、全くためらいなく仕事を辞めました。
(古谷)
そして、専業主婦として家事と2人の娘の子育てに専念。すっかり家に入ると。
(タキミカ)
はい、入りましたね。子どもができるとどうしても働けなかったんですよ。
おむつも替えなきゃいけない、昼間のうちに風呂へ入れなきゃいけないとかね。でも、子どもたちの手が離れたら、洗濯物はカクっと少なくなる。洗う茶わんも少なくなる。もう時間が余る。だから、やらないといけないことをやった後は、せんべい食べたり、コーヒー飲んだりしてゴロゴロ。ゴロゴロしてるうちに、太ってきちゃったんですよね。ちょっとズボンはくとチャックが上がらない、そのうちに太ももも太くなって、ジーパンが入らなくなりました。あぁ、やっぱり太ったなと。そうして気がついたら15キロ太りました。

65歳で運動に出会う

もともとは42キロだった体重が、気がつけば57キロになっていたタキミカさん。スポーツジムに通いはじめたのは、家族のことばがきっかけでした。


(タキミカ)
太ったんですよね。そしたら、お父さん(=夫)がね、ジムを探してきたんですよ。
(古谷)
スポーツジムを?
(タキミカ)
はい。「おまえ、こういうとこあるから、行け」って言うから。それで自転車で行きました。一日体験させていただいたんです。
楽しそうにやってたんですよ。何十人と踊ってるんですよね。それを後ろのほうで見て、すごいなと思いながら。でもみんな楽しそうに踊ってるから、楽しいんだろうなって思って。そのスポーツジムに次の日、行きましたよ。
(古谷)
次の日?
(タキミカ)
次の日に。「お父さん、通帳と印鑑貸してちょうだい」って。それを持って自転車で行って、10時と同時にお客さんになりました。入会手続きしました。
インストラクターの先生に「私、痩せるために来た」って話をしたんですね。すると、「痩せるのに2通りあるんです」って。「早く痩せたいか、時間をかけてきれいに痩せたいか。どっちをとりますか?」って。
「それはどういう意味ですか」って聞いたら、「早く痩せると太ったところ、よけいな肉も取れない。ブラブラが残る。じっくり時間をかければ、そういうブラブラもなくなって、ピチっとなりますよ」って。「じゃあ、私は時間をかけるほうで」って。
一般的にヒトの筋力は、20代から30代をピークに、その後は年をとるごとに衰えていきます。筑波大学大学院の久野譜也教授の調査では、女性の筋肉量は、20代を100%とすると、40代で80%、60代で60%、70代では50%くらいまで減るということです。筋力の低下は、転倒や寝たきりにつながります。若いころに比べて筋肉が大きく減っているとされる60代のときに、タキミカさんはトレーニングを始めたのです。

(古谷)
いきなりね、65歳でそういう運動を始めるのはいいですけど、筋肉痛とか、あちこち体の故障とか出なかったですか?
(タキミカ)
ありましたよ!
もちろん、筋肉痛はありましたね。足なんか3日、4日、消えないですよ。痛くて。それが続きますよね。それでも治りますよね、日にちがたてば。で、また運動すると、また痛いですよね。それを繰り返しているうちに、筋肉痛が全くなくなったんです。もう何をやっても痛くない!
(古谷)
もう大丈夫だなと。
(タキミカ)
大丈夫です。全然痛くないんです。
(古谷)
普通はね、三日坊主とかやっぱりあるじゃないですか。
(タキミカ)
でも、私の場合はすごく楽しくって、ハマってしまって、ルンルン。ルンルンってのは、オーバーかもしれないけど。だんだんきれいになっていくじゃないですか。そうすると自分でも楽しくなってきて、やめるっていうことは考えない。もっとすばらしくなりたいという欲が出てくるんですよ。
(古谷)
もっと痩せられるんじゃないかって?
(タキミカ)
きれいになるんじゃないかってね。欲が出てくる。

87歳でインストラクターに

タキミカさんは、70歳でそれまで全くできなかった水泳に挑戦。2年後には、マスターズの大会で新記録を出すほどに。同じころ、10キロマラソンも完走します。そして、87歳の時、タキミカさんは、運動を教わる側から教える側に。インストラクターになったのです。

(古谷)
なぜ、87歳でインストラクターになろうと?
(タキミカ)
なっちゃったんですよ。それまで教えてくれていたインストラクターの先生が、何の前触れもなく「ちょっとちょっと…」って言うから、「はい?」って。そしたら、「きょうここで、インストラクターとしてやってもらいます」って言うから、「ええー!?」って感じで。そんなことやったことないのに、できるわけないじゃないですか。
(古谷)
今まで生徒だったのにね。
(タキミカ)
そう。その日も私は生徒だったはずなのに。でも、仕事を持つことは楽しいですよね。人の役に立てるやりがいがうれしいですから。私たちの時代ではあまり考えられなかったけど、今は女性も社会に出て働けて、とてもすばらしいことだと思いますよ。

高齢になっても筋肉量は増える

タキミカさんのように65歳からでも筋力は上がるのでしょうか?
筑波大学大学院の久野教授は、十分可能だと話しています。高齢者も適度な筋トレを3か月行うことで、筋肉量が10~15%増加するというデータもあります。今、コロナの影響によって、外に出られず、免疫力の低下や基礎疾患の悪化などが懸念されます。久野教授は「高齢者になっても誰でも、適度な筋トレで効果は出るので、スクワットなどで下半身を中心に鍛えてほしい」と話しています。
ただ、トレーニングには注意点があります。国立長寿医療研究センターロコモフレイルセンターの松井康素センター長は、「コロナで陽に当たらない傾向がより増して、ビタミンDの不足欠乏になりやすい。日光浴の意味でも、適度に外に出ることが必要」と指摘したうえで、注意すべきこととして「一般の方は、急に量を増やさずに徐々にトレーニング量を増やすこと、転倒に注意すること」をあげています。また、「やり方によっては、かえって痛みが増してしまうこともあるので、ひざなどに痛みのある場合は、無理に行わず、痛みの出ない方法や回数に抑えてほしい」と松井センター長は話しています。

90歳 次なる夢は

現在、タキミカさんは、朝は3時半に起きて、4時からトレーニングを始めています。まだ誰もいない早朝の堤防沿いを、ウォーキングを4キロ、ランニングは3キロ、そして、後ろ歩きで1キロ。雨の日以外、このトレーニングを欠かしません。体を動かせば食べても太らなくなったというタキミカさん。朝は毎日、納豆を。夕食では、たっぷりの野菜に、肉や魚でたんぱく質をしっかりとることを心がけています。自身が続けているトレーニングをベースに、100歳まで健康に生きる体づくりを目標にした「タキミカ体操」を仲間のインストラクターと考案。コロナ禍の今は、主にオンラインでのレッスンに取り組んでいます。そして、タキミカさんの挑戦は、運動にとどまりません。


(古谷)
お話を伺っていると、タキミカさんは単に体を動かすだけじゃない、メンタルっていうんですか、心の持ち方からして違うなと思ったんですよね。
(タキミカ)
そうですか。今コロナのためにストレスがたまったとか、落ち込んでるとか、暗くなっちゃった方がいっぱいいると思うんですよね。これから先、コロナが落ち着いたら、47都道府県のそういう方を元の明るさに持っていきたいですよね。世の中を明るくしたいですよね。
それから、アメリカのほうはスポーツが盛んでしょ。新しいものが向こうから入ってくるくらいですから。どんなトレーニングなのか、やってみたいなぁと。夢ですけどね。それには、英語もできないといけないってね。だから、英語もちょっと勉強中なんですけども。
(古谷)
勉強してるんですか? 
よろしかったら、ちょっと今やってみていただけますか?
(タキミカ)
はい。I was born 1931. I am 90 years old. Age does not matter. Age is just a number. Our credo ”がんばりましょう“(私は1931年に生まれました。90歳です。年齢は重要じゃない。ただの数字です。私たちの信条は、”がんばりましょう“)
(古谷)
おおー! もうバッチリじゃないですか。
(タキミカ)
いやいや、バッチリじゃない。まだまだ勉強中です。
(古谷)
タキミカさん、今日は、元気をいただきました。ありがとうございます。
(タキミカ)
よかったです。ありがとうございました。ほんとに、元気をいただいたっていうその言葉、うれしいです。ほんと、年齢はただの数字です。絶対に諦めないでくださいね。
(古谷)
はい。
(タキミカ)
頑張りましょう!


『インタビューここから 瀧島未香』
放送は、9月20日(月)午前6時30分~(総合テレビ)
https://www.nhk.jp/p/a-holiday/ts/M29X69KZ1G/episode/te/1V56GRQN6G/