社会

ワクチン“3回目接種”実施へ 時期は?対象者は?最新情報まとめ

新型コロナウイルスのワクチンについて、厚生労働省は3回目の接種を行う方針を決めました。
▽いつ、誰を対象に行うのか?
▽効果や、気になる副反応は?
▽海外の接種状況とは…?

3回目の接種をめぐる国内外の最新の情報です。

追加接種を行う方針了承 “原則同じワクチン使用”

厚生労働省によりますと、新型コロナウイルスのワクチンは時間がたつと効果が低下することが国内外で報告され、イスラエルやフランスなどがすでに追加で3回目の接種を行っているほか、アメリカも今月から追加接種を始めることを検討しています。
厚生労働省は17日、専門家でつくる分科会を開いて、ファイザーやモデルナ、それにアストラゼネカのワクチンについて原則、同じワクチンを使用して追加接種を行う方針を示し了承されました。

1. いつから実施?

国内では2月から医療従事者、4月から高齢者への接種が始まりました。

分科会では、2回目の接種を終えて8か月以上たった人を対象とする案も示されましたが、委員から「科学的な根拠が不足している」という指摘が相次ぎ今後、科学的知見を踏まえて検討していくことになりました。

また、追加接種の時期について「すでに接種を受けた医療従事者が感染するケースが増えている」として早期の開始を求める意見が出た一方「まずは2回の接種を終えることを優先すべきだ」といった声も多く、引き続き協議していくことになりました。

2. 誰に接種?

対象者についても、全員を追加接種の対象にするか重症化リスクの高い人に限定するかなど、海外の状況などを踏まえて改めて判断することになりました。

海外の状況ですが、対象者は国によって異なります。
▽イスラエルは12歳以上
▽フランスは65歳以上の人や重度の免疫不全がある人、高齢者施設の入居者など
▽ドイツは60歳以上の人や高齢者施設の入居者、免疫不全がある人、感染者と定期的に接触する医療従事者や救急隊員などが対象です。

▽イギリスは今月から50歳以上の人や現場で働く医療従事者や介護職員、基礎疾患がある人などを対象に追加接種を始める予定です。

▽アメリカも現在、対象としている中等度以上の免疫不全がある人に加え、今月から2回目の接種を終えて8か月以上たった人も対象に加えることを検討していて17日夜、判断することにしています。

厚生労働省は対象となる人や開始する時期について今後、検討することにしています。

専門家「まずは2回の接種を終わらせること」

日本ワクチン学会の理事長で福岡看護大学の岡田賢司教授は「3回目ありきの議論ではなく、まずしなければいけないのは希望する方々に確実にワクチンを届けて2回の接種を終わらせることだ。また、WHO=世界保健機関が指摘するように1回も接種できていない世界の人たちへの視点も大事だと思う」と指摘しました。

また、通常であれば3回目の接種を行うかは日本人での臨床試験を行ったうえで判断するとしたうえで「2回接種をした人でもいわゆる『ブレークスルー感染』が起こっている中では、3回目の接種について準備をしておくことは必要だ。抗体の上がり方に個人差があるのと同じく、下がり方にも個人差がある。また、抗体とは別に細胞性の免疫が免疫の記憶を獲得していると考えられていて、細胞性免疫も半年で効果が下がるのかどうかはまだ分かっていない。今後の感染状況も踏まえながら3回目の接種を急ぐのがいいのか、遅い時期になってもいいので毎年、接種を行うやり方にするのか考えておくことが重要だ」と述べました。

全国老人保健施設協会「優先的に3回目の接種を行ってほしい」

全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は「医療従事者が最優先であることは当然だが、高齢者施設の入所者や介護従事者にも優先的に3回目の接種を行ってほしい。ワクチン接種後、高齢者施設でもいわゆる『ブレイクスルー感染』は出ているが、クラスターは激減し比較的軽症で済んでおり多くの高齢者の命が守られている。医療崩壊を防ぐためにも、重症化するリスクが高い高齢者と介護従事者には早めに3回目の接種を行う必要があると思う」と話しています。

“時間経過で感染予防効果減 デルタ株で発症予防効果も減”

厚生労働省によりますと、新型コロナウイルスのワクチンは時間が経過するにつれて感染を予防する効果が減少していく可能性があると、アメリカで指摘されています。
また、デルタ株に置き換わったことで発症予防効果も減少しているとされ以前、主流だったアルファ株に比べると
▽ファイザーのワクチンの発症予防効果が88%で5.7ポイント
▽アストラゼネカが67%で7.5ポイント
それぞれ低下するという報告もあります。

製薬会社“追加接種でデルタ株の働き抑える中和抗体増加”

こうした中、各製薬会社は3回目の追加接種によってデルタ株の働きを抑える中和抗体の値が増加するとしています。
<ファイザー>
追加接種から1か月後の中和抗体価が2回目接種の1か月後に比べて
▽55歳以下で5倍以上
▽65歳から85歳で11倍以上に
上昇したと報告しています。
<モデルナ>
追加接種の2週間後の中和抗体価が2回目接種の6か月後から8か月後までと比べておよそ42倍に増加したとしています。
<アストラゼネカ>
追加接種後に中和抗体価が増加したと報告しています。

追加接種後の副反応は?

追加接種後の副反応について海外では
▽ファイザーのワクチンでは2回目の接種に比べて「頻度が同程度か低かった」
▽モデルナでは「許容できる範囲だった」「副反応の半数以上は軽度か中等度だった」
▽アストラゼネカでは「1回目の接種後より少なかった」と
報告されています。

“追加接種に必要なワクチン 確保できる見通し”厚労省

厚生労働省によりますと、追加接種に必要なワクチンは確保できる見通しだとしています。

厚生労働省は
▽ファイザーと年内に1億9400万回分の供給を受ける契約を交わし、来年初頭からさらに1億2000万回分の供給を受けることを前提に協議を進めています。

▽モデルナからは年内に5000万回分、来年初頭からもさらに5000万回分の供給を受ける契約を結んでいます。

▽アストラゼネカとは1億2000万回分の供給を受ける契約を結んでいます。

「手が回るのか…」 課題は“自治体の負担”

懸念されているのが自治体の負担です。

▽追加接種のために会場や人員を新たに確保しなくてはならず
▽対象者のうち2回目の接種から8か月以上たった人を確実に把握して、接種券を送る作業も必要になります。

まだ、多くの自治体が2回の接種への対応に追われている中で追加接種が始まれば負担が増えるだけでなく、手続きなどが複雑になって混乱するおそれもあります。

<東京 豊島区担当者>
「2回目の接種を行っている中で今から3回目の接種の準備にまで手が回るかが心配だ。必要なワクチンがきちんと配送されるのか、接種券をどう送るのか、会場をいつから確保するのかなど課題が多い」

<東京 足立区担当者>
「接種会場を常設することなども検討する必要があるので、3回目で終わるのか今後も毎年、接種を行っていくのか国は長期的なスケジュールを示してほしい」

国内 2回目接種を終えた人は全人口の53%

政府が17日に公表した最新の状況によりますと、国内で少なくとも1回、新型コロナウイルスのワクチンを接種した人は8267万7879人で、全人口の65.3%となっています。また、2回目の接種を終えた人は6720万4659人で全人口の53.1%となりました。

追加接種 世界の状況は…

世界ではワクチンの効果を高めようと、接種が完了した人を対象に追加の接種を始める国が出てきています。

イスラエル 先月から3回目開始 デルタ株で感染者再び増加

イスラエルでは、16歳以上の8割以上が2回のワクチン接種を終えていて、一時は一日の新規感染者が1桁にまで減りましたが、感染力が強い変異ウイルス「デルタ株」の拡大に伴って再び感染者が増えたため、先月から3回目の接種を始めました。

イギリス 来週から3回目を本格開始 対象は医療従事者など

イギリスでは「ワクチンの効果を保つため」として3回目となる追加の接種を来週から本格的に始めることにしています。

対象となるのは
▽高齢者施設の入居者や
▽医療従事者
▽50歳以上の人たちなどで
臨床試験の結果、高い効果が確認されているとして基本的にファイザーかモデルナのワクチンを接種し、モデルナの場合には半分の量にするとしています。

アメリカ 2回目接種から一定期間たった人に行う方針

アメリカは、ファイザーやモデルナのワクチンの2回目の接種から一定の期間がたった人を対象に3回目の接種を行う方針を示しています。

その理由として
▽ワクチン接種から時間がたつと感染や発症を防ぐ効果が低下するとみられ、中でもデルタ株に対してこれらの効果が低下するとみられること
▽3回目の接種によりウイルスの働きを抑える「中和抗体」の値が大きく上昇するという研究結果が得られていること
などを挙げています。

FDA=食品医薬品局は17日に専門家による委員会を開いて接種の是非について検討することにしています。

独・仏・スウェーデン 高齢者など対象に追加接種を開始

このほか、ドイツやフランス、スウェーデンでも、2回のワクチン接種を終えた高齢者などを対象に追加でワクチン接種を始めました。

WHO“途上国などでの接種促進のため 年末までは行わないで”

一方で、WHO=世界保健機関はワクチンが不足している途上国などでの接種を進めるため、少なくとも年末までは追加の接種を行わないよう各国に呼びかけていて、ワクチンの供給をめぐる懸念も生まれています。

WHO・FDA“現時点で広く一般の人に行う必要認められず”

また、WHOやFDAの専門家らは13日、これまでに公開された論文やデータに基づいて追加接種についての見解をイギリスの医学雑誌「ランセット」に発表しました。

この中で専門家は
▽患者が重症化するのを防ぐ効果はこれまでの接種によって保たれているとしたうえで
▽追加の接種によってどのような効果が得られるのかまだ明確に示されていないなどとして
現時点では広く一般の人に追加の接種を行う必要は認められず、まだ接種をしていない人を優先すべきだとしています。

ワクチンの追加接種をめぐっては、どのような効果を期待するのか、誰を対象にするのかなどをめぐって専門家の意見は分かれていて、議論が続いています。

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