“感染者数減少も再拡大懸念 必要な対策を”厚労省 専門家会合

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、新規感染者数は、この3週間で60%以上減り、感染者が増える要素となっていた7月の4連休や夏休みの影響が減ったことや、医療ひっ迫の状況が伝えられたことで行動変容が起きた可能性があるなどと分析しました。その一方で、大学の授業再開や今月下旬の連休などで、ふだん会わない人との接触機会が増え、感染者数が十分減らない段階で再拡大に転じる懸念があるとして必要な対策を続けるよう呼びかけています。

専門家会合は、現在の全国の感染状況について、直近1週間の感染者数がこの3週間で64%減少するなど、全国的に減少傾向が続き、重症者も減少に転じていると分析しました。

その一方、亡くなる人は増加が続くなど、医療機関や保健所の体制は改善傾向にはあるものの、多くの地域で厳しい局面が続いていると指摘しています。

地域別に見ると、東京都では感染者数の減少が続き、
▽入院者数は20代以上で減少に転じ、
▽重症者数も減少傾向になった一方で、
▽救急医療など一般医療の制限が続いているとしています。

沖縄県は、感染者は減少傾向となっているものの、人口あたりの感染者数は全国で最も高い水準で、自宅療養者などは多い状態が続いています。

関西では感染者数が減少し、入院者数も減少に転じているほか、中京圏でも感染者数が減少しています。

専門家会合は、減少局面に入った要因として、
▽感染者が増える要素となっていた、7月の4連休や夏休みの影響が減ったこと、
▽医療のひっ迫の様子が報道されることで、危機感を持った人たちの間で行動変容が起きたこと、
▽ワクチン接種が現役世代を含めて進んだこと、
などが考えられると分析しています。

さらに、これまでの流行の後半に見られた病院や高齢者施設でのクラスターの発生がワクチンの効果で抑えられ、高齢者層への感染拡大が見られていないとしています。

その一方で、大学の授業の再開や来週から始まる秋の連休で、ふだん会わない人との接触が再び増え、感染者数が十分減らない段階で再拡大に転じる懸念があるため、すでにワクチンを接種した人も含めて、
▽できるだけ家族や、いつも会う人とだけで過ごすことや、
▽混雑した場所や時間を避けること、
▽テレワークの推進や、症状のある人は出社しないことなど、
必要な対策を続けるよう呼びかけました。

また、今後も冬に向けて、さらに厳しい感染状況になるという前提で、医療や自宅療養の体制の構築などについて、早急に対策を進める必要があると指摘しました。

新規感染者数 ほぼすべての地域で減少傾向

16日に行われた厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、新規感染者数は、15日までの1週間では、前の週と比べて、全国では0.55倍とほぼすべての地域で減少傾向が続いています。

緊急事態宣言が延長された地域のうち、首都圏の1都3県では、
▽東京都で0.55倍
▽埼玉県で0.66倍
▽神奈川県で0.50倍
▽千葉県で0.44倍

関西では、
▽大阪府で0.57倍
▽京都府で0.49倍
▽兵庫県で0.61倍
▽滋賀県で0.44倍

中京圏では、
▽愛知県で0.57倍
▽岐阜県で0.50倍
▽三重県で0.48倍と、
前の週の半分以下になった地域もあるなど減少傾向が続いています。

また、
▽北海道で0.55倍
▽茨城県で0.62倍
▽栃木県で0.73倍
▽群馬県で0.48倍
▽静岡県で0.48倍
▽広島県で0.57倍
▽福岡県で0.52倍
▽沖縄県で0.63倍と、
緊急事態宣言が出ている、すべての地域で減少傾向となっています。

現在の感染状況を人口10万人あたりの直近1週間の感染者数で見ると、
▽沖縄県が127.94人と、100人を超えているのは沖縄県のみになりました。

続いて、
▽大阪府が88.11人
▽愛知県が77.15人
▽兵庫県が57.04人
▽東京都が56.92人
▽埼玉県が51.80人
▽神奈川県が50.73人
などとなっていて、
▽全国では41.58人でした。

感染状況が最も深刻な「ステージ4」の目安の25人を超えているのは、18の都府県となっています。

脇田座長「秋の連休 外出控えて対策徹底を」

脇田隆字座長は、全国的に感染者数が減少していることについて「感染者数が増加していた時期は、7月の連休や夏休み、オリンピックなどで、若い人の行動が活発になって、人との接触が多くなったことなどが関与していたとみられる。その後、連休の影響が無くなったことや、感染者が1日5000人を超えた頃に自宅療養の厳しい状況などが広く伝えられ、感染拡大を抑える行動変容につながった。また、以前は若者世代から上の世代に感染が広がる傾向があったが、ワクチン接種が進んだことで、上の世代にあまり感染が広がらなかったため、減少のスピードが早かったとみられる」と分析しました。

また、どこまで感染者数を減らす必要があるかについて「なるべく感染者数を低いレベルに下げたほうが、次の流行を抑えられるが、感染者数が減っていても、その後、急拡大することもある。年末年始や年度の切り替わり、大型連休などのタイミングは、感染が拡大しやすいことを念頭に置いてほしい。来週には秋の連休を迎えるので、なるべく外出は控えて基本的な対策を徹底し、換気も重要だ。また、なるべく多くの人にワクチンを接種してもらいたい」と話していました。

田村厚生労働相「一般医療との両立踏まえ体制整備」

田村厚生労働大臣は、専門家会合の冒頭「新規感染者数は全国で減少が続いているが、沖縄、大阪、愛知、東京では、いまだ高い水準で、しっかりと状況を見ていかなければならない。冬場に向かっての感染拡大に十分に準備しなければならず、一般医療との両立も踏まえながら臨時の医療施設など、体制整備をしていくことが非常に重要だ」と述べました。

また、感染者への治療法で、入院や外来などに限られている「抗体カクテル療法」の往診での使用について「来週あたりには、モデル事業のような形で進めたい。そこで問題点を抽出したうえで、全国展開が図れるようにしたい」と述べました。