市中潜在の感染者 “冬を前に大幅に減らす必要あり”都の会議

東京都のモニタリング会議で専門家は、都内の新規陽性者数は依然として高い水準で、感染者が、いまだ市中に潜在している可能性があるとしたうえで「感染の拡大が懸念される冬に備え、十分に減少させる必要がある」とする認識を示しました。

会議のなかで専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

このうち感染状況について、新規陽性者の7日間平均は15日時点で、およそ1095人と、1週間前の今月8日の55%に減少したものの、依然として高い水準で、感染者がいまだ市中に潜在している可能性があるとしています。

そして、新規陽性者数が下げ止まった時の最小値は、感染拡大の波を繰り返すたびに高くなっているとして「下がり切ったところの数字が高い状況にあると、反転した時の増加スピードが著しい。感染の拡大が懸念される冬に備え十分に減少させる必要がある」と述べました。

一方、医療提供体制について、専門家は15日時点で、
▽入院患者が3097人
▽重症の患者が198人となり、
いずれも高い水準で推移していると説明しました。

さらに、人工呼吸器、またはECMOによる治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の患者が、15日時点で394人で、減少傾向が続いているものの「極めて高い水準だ」と指摘しました。

そのうえで「医療提供体制の機能不全が継続している。新規陽性者が今より大きく減少しないと、重症患者の累積により、救命医療への深刻な影響が続くと思われる」などと指摘しました。

“感染拡大の波 繰り返すたびに高く”都モニタリング会議

モニタリング会議で専門家は「新規陽性者が減少したあとの最小値は、第1波以降、感染拡大の波を繰り返すたびに前回の最小値より高くなっている」と指摘しました。

これは、感染拡大のピークを超えて減少に転じ、下げ止まった際の水準が「波」を繰り返すたびに高くなっていることを示しています。

都内では、これまでに5回、感染が拡大していて、具体的に、去年春の第1波から新規陽性者の7日間平均の推移を見ていきます。

▽第1波と第2波の間で最も少なかったのは、去年5月23日の5.9人でした。

▽第2波と第3波の間では、去年9月25日の144.6人。

▽第3波と第4波の間では、ことし3月8日の253.4人です。

▽第4波と第5波の間では、ことし6月15日の375.9人です。

専門家は「いちばん下がりきったところが高い状況になると、反転して増えた際の増加スピードが著しいということを申し上げている。そうならないようにしたい」と述べました。

モニタリング会議 分析結果

16日のモニタリング会議で示された、都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況「依然として高い水準」

新たな感染の確認は、15日時点で7日間平均が1095.1人となりました。

前回、9月8日時点の1985.7人より、およそ890人少なくなり、4週連続で減少しましたが、専門家は「依然として高い水準だ」と分析しました。

そのうえで「現在も多数の入院患者、重症患者が治療中であり、新規陽性者が増加に転じれば再び危機的状況となる」と指摘しました。

一方、ワクチン接種は、14日時点で都内の全人口のうち、
▽1回目を終えた人は59.0%
▽2回目を終えた人は47.7%でした。

専門家は「ワクチンの効果を最大限に期待するには、2回目の接種後、2週間を要する。接種を希望する都民に、速やかにワクチン接種を行う体制強化が急務だ」と指摘しました。

また、接種後も感染する人が確認されているとして「本人は軽症や無症状でも、周囲の人に感染させるリスクがあることを啓発する必要がある」として、注意を呼びかけました。

9月13日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は、
▽20代が25.3%と最も多く、
次いで、
▽30代が19.1%
▽40代が16.3%
▽50代が10.7%
▽10代が9.7%
▽10歳未満が9.5%
▽60代が4.2%
▽70代が3.1%
▽80代が1.7%
▽90代以上が0.4%でした。

10歳未満と10代の割合は合わせて19.2%で、6週連続の上昇となりました。

一方、65歳以上の高齢者の感染者数は、先週の866人から244人減って622人と、3週連続で減少しました。

感染経路がわかっている人では、
▽同居する人からの感染が69.7%と最も多く、
次いで、
▽職場が11.8%
▽保育園や学校、それに高齢者施設や病院といった施設での感染が9.3%
▽会食は1.5%でした。

このうち、職場での感染を抑え込むために「テレワーク、時差通勤、オンライン会議の推進、出張の自粛など、積極的な取り組みが求められる」と指摘しました。

「感染の広がりを反映する指標」とされる感染経路がわからない人の7日間平均は、15日時点で593.0人で、先週からおよそ473人減りました。

ただ、専門家は「依然として高い水準で推移していて、今後の推移に注意が必要だ。職場や施設の外における第三者からの感染による、感染経路が追えない潜在的な感染が懸念される」としています。

感染経路がわからない人の割合を年代別にみると、20代と30代が合わせて60%を超えていて、引き続き、行動が活発な世代で高い割合となっています。

医療提供体制「重症病床は依然としてひっ迫」

検査の陽性率の7日間平均は15日時点で8.6%となり、前の週、9月8日時点から3.7ポイント下がりました。

ただ、専門家は「高い水準で推移している。必要な都民が速やかに検査を受けられる体制整備が必要だ。冬のインフルエンザの流行への対応を、今から検討しておく必要がある」と指摘し、発熱の症状を訴える患者が増えるおそれがある冬への備えが必要だという認識を示しました。

入院患者は、15日時点で3097人で、前の週より911人減りましたが、専門家は「高い水準で推移している」と指摘しました。

そのうえで「病床と人材確保のため、緊急を要するけがや病気の患者の救急搬送と受け入れに、いまだ支障が生じている」として懸念を示しました。

保健所が、都の入院調整本部に入院先を探すよう求めた依頼件数の7日間平均は、15日時点で、およそ92件で、前の週の半分近くになりましたが、専門家は「翌日以降への繰り越しは減少傾向にあるものの、重症患者で病床が埋まっていて、重症病床は依然としてひっ迫している」と指摘しました。

15日時点の入院患者3097人うち、60代以下は全体のおよそ80%と、高い水準が続いていて、年代別では、
▽50代が最も多く、全体のおよそ24%
次いで、
▽40代がおよそ19%
▽30代以下でも、およそ26%となっています。

都の基準で集計した15日時点の重症患者は198人で、前の週から54人減りましたが、専門家は「いまだ高い水準で推移している」と述べました。

15日時点の重症患者198人の男女別は、
▽男性152人
▽女性46人です。

年代別では、
▽50代が最も多く82人、
次いで、
▽60代が45人
▽70代が28人
▽40代が25人
▽30代が8人
▽20代が6人
▽80代が4人でした。

40代から60代で重症患者全体の77%を占めています。

このほか、人工呼吸器かECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は、15日時点で394人で、前の週より111人減りました。

15日時点で陽性となった人の療養状況を前の週と比べると、
▽自宅で療養している人は、6515人減って5971人
▽都が確保したホテルなどで療養している人は、410人減って1381人でした。

また、
▽医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は、1847人減って1755人となりました。

入院患者を含めた「療養が必要な人」全体の数は1万2204人で、前の週より9683人減りました。

すべての療養者に占める入院患者の割合はおよそ25%で、前の週から7ポイント増えましたが、専門家は「低い水準にとどまっている」と指摘しています。

9月13日までの1週間で亡くなったことが報告された人は117人です。

都医師会 「医療の余裕ない 気を緩めないで」

東京都医師会の猪口正孝副会長は「新規陽性者数は減少しているが、入院患者数や重症患者数は高い状態だ。デルタ株は、ちょっと油断をすると倍々に感染を拡大させてしまう。まだ、医療提供体制は本当に余裕がある状況ではなく、非常に厳しい。通常の医療ができる状況までは戻っていないので、ぜひ、ここは気を緩めないで、新規陽性者数を低く抑えていただきたい」と述べました。

小池知事「努力が水の泡にならないよう感染抑え込む」

小池知事は「医療従事者の方々や都民、事業者の皆様のご協力のおかげで、なんとか少しずつ下がってきたが、ここが重要だ。『もう下がったよね』と手放しで行動してしまうと、また今度の感染の山は、より高くなる可能性があるとご報告いただいた。これまでの努力を水の泡に帰さないようにするため、ここでもう一段、感染を抑え込んでいく」と述べました。