相次ぐ電動アシスト自転車の事故 転倒防ぐには

日々の買い物や子どもの送迎で活躍する電動アシスト自転車。この10年間に自転車全体の事故が半減する中で、電動アシスト自転車は、普及に伴って事故が2倍に増えています。転倒して子どもが大けがをするなど、深刻な事故も後を絶ちません。転倒事故を防ぐ対策について専門家に聞きました。

5歳の娘が 頭蓋骨骨折

「幼稚園の帰り道に公園に寄って、夕方、家に帰るところでした。後ろのチャイルドシートに5歳の娘を急いで乗せて、こぎ出したところ段差にハンドルが持っていかれて、勢いよく倒れてしまいました」

東京都町田市に暮らす女性は、毎日利用する公園で娘を乗せてこぎ出したところ、段差でハンドル操作がきかなくなり、転倒しました。

女の子はヘルメットをしていましたが、倒れた際に、おでこを花壇にぶつけました。

(女性)
「慌てて自転車を起こして、ヘルメットを外したら顔の半分を覆うぐらいの出血でびっくりしました。その日は仕事帰りで疲れていたこともあり、つい焦って自転車に乗ってしまったんです」

すぐに救急車で運ばれ、5針を縫う手術となりました。

頭蓋骨を骨折していて、その後1か月間、幼稚園を休み、療養しました。

(女性)
「娘には申し訳ないのひと言です。二度とママの自転車に乗りたくないだろうと思って『怖かったね。ごめんね』と何度も謝りました。ヘルメットをしていても100%安全ではないこともすごく感じましたし、こぎ出しの時のスピードをコントロールできず、怖かったです」

総重量は100キロ超える

この10年間で自転車全体の事故が半減する中、電動アシスト自転車は、普及に伴って去年は事故件数が2600件余りと2倍になっています(交通事故情報分析センター 統計データ)。

単独の転倒事故も多く起きていて、ひとたび、転倒すれば重大な事故につながりかねません。

一般的な電動アシストの本体はおよそ30キロ。

前方のチャイルドシートに10キロの子ども、後方のチャイルドシートに15キロの子どもを乗せ、自分も乗ると総重量は100キロを超えます。

バランスをとるのが難しく、こぎ出しの時にふらついたり、走行中、段差にハンドルを取られたりと、転倒の危険があらゆる状況で潜んでいます。

「こぎ出し時」「走行中」「停車時」それぞれの場面でどのように気をつければよいのか。

交通工学が専門の中央大学研究開発機構 稲垣具志准教授にポイントを聞きました。

1.こぎ出し時のポイント:平たんな道で、ハンドルは水平に

電動アシスト自転車は、発進時は特に加速しやすく、予想以上のスピードが出て、転倒することがあります。

気をつけるべきは以下の3点です。

・ 自転車の電源をONにする時、ペダルに足を乗せない
・ 発進時に思い切り踏み込まない
・ サドルは両足のかかとがつく高さにしておく

注意が必要なのは、段差での転倒事故。

親子ともに大けがするリスクがあります。

(中央大学 稲垣具志 准教授)
「段差はハンドルを取られてバランスを崩しやすく、段差に浅い角度で進入しないことが大切です。縁石に乗り上げるときなど、段差がある場所ではスピードを落とし、段差に対してできるだけ直角にタイヤを当てて、正面から乗り越える、余裕があるならば押し歩きするようにしましょう」

2.走行中のポイント:曲がるときは大回りで

走行中の転倒で多いのは、無理な右左折やUターン時です。

(中央大学 稲垣具志 准教授)
「電動アシストの自転車は構造上、通常の自転車よりも小回りがききにくいのです。自転車の重さから一度バランスを崩すと持ち直すことは困難です。曲がりたい時やUターンをしたいときは道幅の広いところで大回りをするか、う回して戻るようにしましょう」

雨の日は視界も悪くなり、マンホールや点字ブロック、坂道や石畳などでスリップすることも増えます。

鉄板やタイルなど滑りやすいものの上を避けるなどすることでも転倒を防げます。

3.停止時のポイント:子どもは「最後」に乗せ、「最初」に降ろす

転倒事故は、走行時だけでなく停止時にも起きています。

まずは、サドルの高さはやや低めにし、両足が地面につくよう調整することで自転車そのものを安定させましょう。

そして、信号などで停止するときには、常に両足をしっかりと地面につけて自転車を支えることで停止時の転倒を予防できます。

駐輪時は平らで安全な場所に止め、子どもを乗せるのは親の乗車直前に、降ろすのは親の降車直後に行い、子どもが乗っている時間を極力短くしましょう。

特に買い物や保育園の送迎で荷物が多い時は、つい荷物を優先させたくなりますが、まず子どもを降ろしてから荷物を降ろすことを意識しましょう。

子どもが自分で乗降したがることもありますが、乗せ降ろしは必ず大人が手伝いましょう。

停止時も早めのブレーキが転倒を予防することにつながります。

(中央大学 稲垣具志 准教授)
「自転車は重たくなればなるほど、ブレーキを踏んでから止まるまでの距離が伸びるので、急には止まれません。大人1人が乗っている自転車に比べてブレーキを踏んでから止まるまでは時間がかかるので、通常の自転車より早めのブレーキを意識しましょう」

「30秒待てない?」自分自身に聞いてみて

子どもを乗せた自転車に乗っている人は、とにかく急いでいる方が多いと思います。

「保育園のお迎え時間に間に合わせないと」「電車に乗り遅れないように」「早く夕飯を作らなければ」だからこそ、ルールはわかっているけれども、ついつい一時停止を忘れて車とぶつかりそうになったり、歩行者を縫うように蛇行してしまったり、ぐずって暴れる子どもを急いで自転車に乗せて転倒なんてことも。

一つ一つのリスクを知ることが安全運転への一歩です。

「ちょっとだけなら大丈夫」「これまで危ないことはなかったから」の先に大きな事故につながること、そして自分だけでなく子どもも巻き込んでしまう可能性があることを想像することが大切なのではないでしょうか。

特に子どもを乗せた電動アシストの総重量は100キロ。

これをわかって運転するだけで、慎重に運転しようという気持ちになりました。

焦って出会い頭の事故にあったり、転倒して子どもにケガを負わせてしまったりしたら、残るのは後悔と自責の念です。

焦っている時こそ深呼吸。

「あと30秒本当に待てない?」と自分自身に問うようにしたいです。

状況に応じて押し歩きをしたり、子どもの機嫌が直ってから自転車に乗せたり、もしくはいつもより5分早く行動することも意識することで、日々のヒヤヒヤは防げるかもしれないと思いました。

電動アシスト自転車は小回りがききにくいこと、総重量が100キロあり転倒した場合も1人で立て直すのは難しいこと。

利用者だけでなく、周囲の人たちも電動アシスト自転車のこと知り、困っている人がいたら手を差し伸べてもらえたらと思います。

※NHKでは自転車事故を減らすためのアイデアを視聴者から募集し、この夏、自治体の協力のもと実証実験を行いました。番組「1ミリ革命」でご紹介します。23日午後7時半からNHK総合テレビで放送予定です。

(1ミリ革命 ディレクター 岡田 歩)