「抗体カクテル療法」 往診での使用は慎重に検討 厚生労働省

新型コロナウイルスの軽症患者などに使用できる「抗体カクテル療法」について、厚生労働省は菅総理大臣の指示を受けて往診での使用を認めるか検討を始めました。
一方、まれに副作用が疑われる重篤な症状も報告されていることから、一部の医療機関で試験的に導入し、安全性を確保できるか慎重に見極めた上で判断する方針です。

抗体でできた2種類の薬を同時に点滴で投与する「抗体カクテル療法」は、軽症患者にも使用できる初めての治療薬として、7月に承認されました。

当初は、入院患者だけが対象でしたが、8月以降、宿泊療養施設などに加え、外来での使用も条件付きで認められています。

菅総理大臣は、往診での使用も可能とするよう田村厚生労働大臣に検討を指示し、厚生労働省が具体的な検討に入りましたが、課題となるのが安全性の確保です。

厚生労働省などによりますと、8月21日までに推定で5800人余りが投与を受け、0.46%にあたる27人で▽発熱や▽酸素飽和度の低下、▽狭心症など副作用が疑われる重篤な症状が報告されています。

厚生労働省は、現在、投与から24時間は患者の容体が悪化しても把握できることなどを使用の条件にしていますが、医療関係者からは往診で使用した場合、特に1人暮らしの患者などは把握できないおそれがあると指摘されています。

このため一部の医療機関の往診で試験的に導入し、課題を検証した上で全国的に使用を認めるか判断する方針で、近く要件を示すことにしています。

厚生労働省は、「臨床データが限られていて、新しい症状が報告される可能性も否定できない。結論ありきで考えず、往診でも安全性を確保できるか慎重に見極めた上で使用の可否を判断したい」としています。

投与を受けた1.35%の79人で副作用が疑われる症状

厚生労働省や、関係企業とライセンス契約を結んでいる中外製薬によりますと、ことし7月22日から先月21日までのおよそ1か月間に投与を受けたと推定される5871人のうち、1.35%に当たる79人で副作用が疑われる症状が報告されました。

このうち重篤だったのは27人で、
▽発熱が5人、
▽酸素飽和度の低下が4人、
▽悪寒が2人、
▽狭心症やおう吐、血圧の低下や上昇などがそれぞれ1人となっています。

いずれの症状も投与との因果関係は分かっていないということで、厚生労働省などが引き続き情報収集を進めています。

複数の課題も

新型コロナウイルスに感染し自宅で療養する人の往診を行っている、東京 品川区の「心越クリニック」の岩間洋亮院長は、「抗体カクテル療法」を往診でも使用することについて「患者の重症化を防ぐ手段が増えるのは望ましいことだ」としたうえで、複数の課題があると指摘します。

患者がアレルギーを発症した場合に家族がすぐに気付けるかという懸念や、1人暮らしで見守る人がいないケースも考えられるとして、「訪問看護やヘルパーなどと連携し、経過を丁寧に見守る体制を構築する必要があるが、実現は簡単ではないだろう」としています。

また「抗体カクテル療法に使う薬は1つの瓶に2人分入っているものが主に流通していて、開封後は48時間以内に使い切らなければならない。薬は高価なので、廃棄せずにむだなく使えるよう医師の間で患者を調整するような体制も必要だ」と話していました。

医師「前向きに捉え 歓迎」

東京 大田区などで自宅療養者の往診を行ってきた「ひなた在宅クリニック山王」の田代和馬院長は「在宅でできる治療は限られていたので、効果的な選択肢が加わるという意味では前向きに捉え、歓迎している」と話しています。

そのうえで、「2つの抗体を混ぜるなど投与前の準備に時間がかかり、投与後も副作用が出ていないか経過観察をしなければならないことを考えると、1日に対応できる患者の数は限られる。病院の空き病床などを活用して複数の患者にスムーズに抗体カクテル療法を行える体制を充実させ、状況に応じて一部、在宅でも対応すれば重症化する人を減らせるのではないかと思う。今のうちから『第6波』に備えてあらゆる機関が連携して抜本的な対策を整えていく必要がある」と話していました。

医師「適正に使用するためのルールづくりも必要」

自宅療養者の往診を行っている医師のグループ「ファストドクター」の代表、菊池亮医師は「病院や宿泊療養施設といった十分な体制があるところで投与することが前提だ。ただ、入院調整に時間がかかり適切な時期に投与できないケースもあり、在宅でも対応できる体制作りは必要だと思う」と話しています。

そして、菊池医師は、往診の際に抗体カクテル療法が必要だと思った患者がいても、病床がひっ迫して入院できない状況では、治療の選択肢として患者に提案できなかったとしたうえで、「投与の選択肢がせばまってしまうことで、治療が受けられない患者が出てしまうことはよくないと感じていた」としています。

その上で「リスクの高い患者を重症化させないために有効性が高いが、使用経験の浅い薬なので、往診で使用する場合に副作用への対策をどう講じていくかなど、適正に使用するためのルールづくりも必要だ」と指摘しています。