北朝鮮 弾道ミサイル発射か 日本のEEZ外側 日本海に落下と推定

政府は、北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたと発表しました。
発射されたものは、日本のEEZ=排他的経済水域の外側の日本海に落下したとみられます。
菅総理大臣は「わが国と地域の平和と安全を脅かすもので、厳重に抗議し、強く非難する」と述べました。

政府は、北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたと午後1時前に発表しました。

海上保安庁は、2発が発射されたと発表し、いずれも日本のEEZ=排他的経済水域の外側の日本海に落下したとみられるということです。

政府は15日夕方、総理大臣官邸で、およそ20分間、NSC=国家安全保障会議の閣僚会合を開き、菅総理大臣をはじめ、岸防衛大臣や茂木外務大臣らが出席しました。

これまでに収集した情報を分析するとともに、今後の対応などを協議したものとみられます。

菅総理大臣は「ことし3月25日以来、およそ6か月ぶりの弾道ミサイル発射は、わが国と地域の平和と安全を脅かすもので言語道断だ。国連安保理決議にも違反しており、厳重に抗議するとともに強く非難する」と述べました。

そして「アメリカや韓国をはじめ関係国と緊密に連携をし、国民の命と平和な暮らしを断固として守り抜いていく」と述べました。

また、菅総理大臣は、情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対し、迅速・的確な情報提供を行うこと、航空機や船舶などの安全確認を徹底すること、それに不測の事態に備え、万全の態勢をとることを指示しました。

岸防衛相「変則的な飛しょうの可能性含め分析中」

岸防衛大臣は夕方、防衛省で記者団に対し「北朝鮮は、きょう午後0時32分と37分ごろ、内陸部から、少なくとも2発の弾道ミサイルを東方向に発射したもようだ」と述べました。

また「初期の情報に基づき日本の排他的経済水域の外に落下したものと推定されると発表したが、暫定的な評価であり、変則的な飛しょうの可能性も含め、引き続き分析中だ」と述べました。

そして「今回の発射は国連安保理決議に違反するもので極めて遺憾だ。わが国と地域の平和と安全を脅かすもので強く非難する」と述べるとともに、アメリカや韓国など関係国と緊密に連携していく考えを示しました。

一方、記者団が「ミサイルは、排他的経済水域の内側や領海内に落下した可能性もあるということか」と質問したのに対し、岸大臣は「そうしたことも含めて、分析を進めている」と述べました。
また加藤官房長官は午後の記者会見で、北朝鮮は、午後0時32分と0時37分ごろ、北朝鮮内陸部から少なくとも2発の弾道ミサイルを東方向に発射したもようだと発表しました。

そして「初期の情報に基づき、日本の排他的経済水域の外の日本海に落下したと推定されると発表したが、飛しょう距離などについては、変則的な飛しょうの可能性も含め、引き続き分析を行っている」と述べました。

また、現時点で、付近を航行する航空機や船舶の被害報告などの情報は確認されていないとして、総理大臣官邸の危機管理センターに設置している「官邸対策室」で関係省庁の情報を集約し、対応を協議していると説明しました。

加藤官房長官は発射について「日本と地域の平和と安全を脅かすもので言語道断だ。また、国連の安保理決議に違反するもので極めて遺憾だ」と述べ、北朝鮮に対し外交ルートを通じて厳重に抗議し強く非難したことも明らかにしました。

北朝鮮問題担当の日米高官が会談

北朝鮮の弾道ミサイルの発射を受け、北朝鮮問題を担当する日米の高官が会談しました。

今回の発射は日本や地域の安全保障に対する重大な脅威だとして、引き続き日米、日米韓の3か国による連携を強化していくことを確認しました。

外務省の船越アジア大洋州局長は、アメリカ国務省のソン・キム特別代表と、午後2時半ごろからおよそ30分会談しました。

そして、今回の発射は、国連の安保理決議に明確に違反しており、日本や地域の安全保障に対する重大な脅威だという認識で一致しました。

そのうえで、外交を通じた北朝鮮の核・ミサイル問題の解決や、国連安保理決議に基づく制裁の完全な履行、それに日米同盟など地域の抑止力の向上が重要だという認識で一致し、引き続き日米、日米韓の3か国による連携を強化していくことを確認しました。

このあと船越局長は、韓国外務省のノ・ギュドク朝鮮半島平和交渉本部長とも電話で会談し、今後の対応について意見を交わしました。

海上保安庁長官 “被害情報 確認されず”

北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたことについて、海上保安庁の奥島高弘長官は「弾道ミサイルの可能性があるものについては、日本海に落下したものと承知している。内閣官房からの情報で、排他的経済水域の外側と報告を受けているが、詳しい場所や時間などは、情報収集に努めている。これまでに被害情報は確認されていない」と述べました。

そのうえで「船舶への注意喚起を行うとともに引き続き関連情報の収集に努め、関係省庁と緊密に連携して適切に対応していく」と述べました。

韓国軍発表 “弾道ミサイル2発発射 飛行距離約800キロ”

韓国軍の合同参謀本部の発表によりますと、北朝鮮は15日午後0時34分と39分、ピョンヤンから北東におよそ80キロ離れたピョンアン(平安)南道のヤンドク(陽徳)付近から短距離弾道ミサイル2発を発射しました。

飛行距離はおよそ800キロ、高度はおよそ60キロだということで、韓国軍とアメリカ軍は詳しい分析を進めています。

韓国の通信社 連合ニュースは、ロシアの短距離弾道ミサイル「イスカンデル」を改良した「北朝鮮版イスカンデル」だという見方を伝えています。

北朝鮮は今月11日と12日に新たに開発した長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと、13日発表したばかりで、ミサイル開発を推し進める方針に変わりはないと示した形です。

米政府 公式な反応なし 詳細分析か

北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたことについて、アメリカ政府は、これまでのところ公式な反応を示していませんが、日本や韓国と詳細な分析を進めているものとみられます。

朝鮮半島情勢をめぐってアメリカのバイデン政権は、北朝鮮問題を担当する国務省のソン・キム特別代表を東京に派遣し、14日に日米韓3か国の高官による協議を行うなど、非核化の実現に向けて日韓両国との連携強化を確認したところでした。

北朝鮮がことし3月に弾道ミサイルを発射した際、バイデン大統領は弾道ミサイルの発射を禁じた国連安保理決議に違反すると批判し、北朝鮮が事態をエスカレートさせれば「相応の対応をする」と警告していました。

また北朝鮮が13日、長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと発表した際には、アメリカのインド太平洋軍が声明を出して「北朝鮮が引き続き軍事的な計画を進めることに注力し、近隣諸国や国際社会への脅威であることを示している」と批判し、状況を監視するとしていました。

バイデン政権 対話模索する姿勢

アメリカのバイデン政権は、北朝鮮の核・ミサイル開発などの問題について、対話を通じた解決を模索する姿勢を示してきました。

北朝鮮をめぐっては、トランプ前大統領が3年前の2018年に史上初めての米朝首脳会談の開催に踏み切り、その後も2回、開かれましたが、非核化をめぐる隔たりは埋まらず具体的な進展は見られませんでした。

ことし1月に発足したバイデン政権は、同盟国の日本や韓国などと協議を行いながら対北朝鮮政策の見直しを進め、ことし4月までに作業を終えました。

新たな政策の詳細は明らかになっていませんが、ホワイトハウス高官は「朝鮮半島の完全な非核化を実現するために外交交渉を行う用意がある」と述べて対話を通じた解決を模索する姿勢を示し、対立する中国にも協力を呼びかけてきました。

こうした中で、ことし6月、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記が「対話にも対決にも準備しなければならない」と述べて、バイデン政権発足後、初めて対話の可能性に言及し、アメリカ政府からは北朝鮮側の前向きな対応を期待する発言が相次ぎました。

ただ、北朝鮮は対話再開の前提条件として、みずからを敵視する政策を撤回するよう求めていて、アメリカと北朝鮮が互いに相手の出方をうかがう状況が続いていました。

米インド太平洋軍「日韓防衛への米の関与は確固たるもの」

アメリカのインド太平洋軍は15日声明を発表し「われわれはミサイルの発射を把握しており、同盟国などと緊密に協議している。今回のミサイルの発射はアメリカの人々や領土、あるいは同盟国への差し迫った脅威ではないと判断しているが、北朝鮮の不正な兵器の計画は地域の不安定化に影響を与えるものだ」としています。

そのうえで「日本と韓国の防衛に対するアメリカの関与は確固たるものだ」として地域の安定化に向けて日韓両国と引き続き連携する姿勢を強調しました。

中国外務省「自制を保って対話と接触を」

北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことについて、中国外務省の趙立堅報道官は15日の記者会見で「関係国には、政治的な解決のプロセスを堅持し、自制を保って対話と接触を行い、バランスのとれた解決策を見つけるため、効果的な方法を探ることを望む」と述べました。

中国外務省は、13日に北朝鮮が新たに開発した長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと発表した際にも、関係国に自制を保つよう呼びかけています。

外務省幹部「北朝鮮に目を向かせたいのではないか」

外務省幹部はNHKの取材に対し「日本のEEZ=排他的経済水域内には落下していないとみられ、日本の安全保障には影響しないと考えている。先に北朝鮮が発表した巡航ミサイルの発射実験もそうだが、国際社会の目がアフガニスタンに向いている中、挑発的な行為で北朝鮮に目を向かせたいのではないか」と述べました。

最近の北朝鮮のミサイル発射

北朝鮮は、ミサイルの発射を繰り返すことで能力の向上を図ってきました。

北朝鮮はおととし、短距離弾道ミサイルなど合わせて25発を発射し、去年は短距離弾道ミサイルを合わせて8発発射しました。

そしてことしは、3月21日に西部のピョンアン(平安)南道オンチョン(温泉)付近から巡航ミサイルと推定される2発を発射したのに続き、3月25日には東部のハムギョン(咸鏡)南道ハムジュ(咸州)付近から日本海に向けて弾道ミサイルを2発発射しました。

そして北朝鮮は今月13日、12日までの2日間、新たに開発した長距離巡航ミサイルを発射したと発表していました。

これについて北朝鮮は「わが国の領土と領海の上空に設定された、だ円や8の字の軌道に沿って2時間6分20秒飛行し、1500キロ先の目標に命中した」としていて、韓国とアメリカの情報当局が詳しい分析を進めていました。

専門家「安全保障の能力高めることやめないという政治的意味」

北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことについて、北朝鮮情勢に詳しい南山大学の平岩俊司教授は「先月の米韓合同軍事演習に反発して軍事行動を起こしていくというメッセージがある。また、北朝鮮問題を担当する日米韓の当局者協議が行われた直後で、自分たちは安全保障の能力を高めることを決してやめないという政治的な意味がある。非核化が中心的な議題になる協議には応じられないというメッセージだ」という見方を示しました。

また今回の発射が、中国の王毅外相が韓国を訪問中に行われたことについて、平岩教授は「北朝鮮としては依然、後ろ盾としての中国は必要だが、北朝鮮の意思を無視した形で関係国と協議し協力することに対して、ある種のけん制になる。国防力の強化を優先する姿勢を中国にも伝える意味合いもある」と分析しました。

今後の北朝鮮の出方について、平岩教授は「アメリカに対して、単にアメリカ本土に届く核・ミサイル能力だけではなく、在韓や在日アメリカ軍なども視野に入れた形での国防力を強化していくのが基本的な姿勢だ。アメリカの北朝鮮に対する姿勢が依然、不透明な部分もあるので、アメリカの動向を見ながら、例えば、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルの実験の成功など体系的な国防力をつけることを目指していくだろう」と述べ、ミサイルの開発を引き続き継続する可能性を指摘しました。