「ゲノム編集」で品種改良のトマト 一般への販売開始 国内初

遺伝子を自在に操作できる「ゲノム編集」の技術を使って品種改良されたトマトの一般への販売が、15日からインターネットを通じて始まりました。ゲノム編集で品種改良された食品が一般に販売、出荷されるのは国内では初めてです。

販売が始まったのは、ゲノム編集の技術を使って、血圧を下げるとされる「GABA」と呼ばれる成分を多く含むように品種改良されたトマトです。

ゲノム編集の技術を使った「ゲノム編集食品」は「遺伝子組み換え食品」とは異なり、別の遺伝子を組み込むなどしていないことから、従来の品種改良と安全性は変わらないとして、厚生労働省に届け出をすることで流通できるようになっています。
今回のトマトは東京の種苗会社「サナテックシード」が去年12月に厚生労働省に届け出を行い、熊本県内の契約農家が栽培していました。

会社によりますと、トマトの収穫ができる状態になったため、15日からインターネットを通じて一般からの注文を受け付け、出荷を始めるということです。

価格は3キロでおよそ7500円などとなっていて、会社では、パッケージに「ゲノム編集技術で品種改良をしました」と書かれたシールを貼って出荷するということです。

「ゲノム編集食品」の一般への販売と出荷は、国内では初めてです。

「サナテックシード」の竹下達夫会長は「ゲノム編集食品に対しては、まだ十分に理解されていない部分もあって、商品として売るのは大変だと思ったが、事前に募集したモニターに苗を育ててもらった際には評判がよかった。万全を期して販売に踏み切った」と話しています。

ゲノム編集とは

「ゲノム編集」は、遺伝子をまるで文章を編集するように自在に操作する技術で、世界中で研究が進められています。

この技術によって、特定の遺伝子の一部だけを働かなくさせることや、従来の遺伝子組み換え技術よりも正確に別の遺伝子を組み込むことなどができるようになりました。

この技術の新たな手法を開発した研究者は去年のノーベル化学賞を受賞しています。

ゲノム編集の応用が期待されている分野の1つが食品の開発です。

これまで農作物などの品種改良を行うには、期待される性質を獲得するまでに何世代も掛け合わせる必要があり、長い時間がかかっていました。

ゲノム編集の技術を使えば、このプロセスを大幅に短縮することができます。

特にゲノム編集の中でも、別の遺伝子を組み込むことなく、狙った遺伝子の一部だけを働かなくさせるなどして求める性質を強める方法は、これまで偶然の要素が強かった品種改良を効率よく進めることができ、従来の品種改良と比べても区別できないとされています。

日本では主に、こちらの方法による食品のゲノム編集が行われていて、
▽今回、販売が始まる血圧を下げるとされる成分を多く含んだトマトのほかにも、
▽収穫量の多いイネ
▽食中毒を起こさないジャガイモ
▽身の量の多いマダイや、
▽共食いしないサバなど、
いずれも、別の遺伝子を組み込まずに、品種改良のプロセスを促進する方法で開発が進められています。

「トマト」ゲノム編集で品種改良

今回のトマトはゲノム編集の技術を使って血圧を下げるとされる「GABA」と呼ばれるアミノ酸を多く含むように品種改良したものです。

トマトには、もともと「GABA」を作り出す遺伝子が備わっていますが、水が少ないなど、特殊な環境以外では働きが抑えられています。

開発した会社によりますと、今回のトマトは、ゲノム編集によって「GABA」ができるのを抑える遺伝子の一部が働かないように品種改良されたということで、大きさや色など見た目は変わりませんが「GABA」の含有量は、通常のトマトに比べて4倍から5倍に増えているということです。

開発した食品の流通ルール

ゲノム編集の技術を使って開発された食品の流通には、国がルールを定めています。

ゲノム編集の技術を使うと、遺伝子を自在に操作することができますが、このうち、もともとある遺伝子の一部を働かなくさせるだけで、別の遺伝子を組み込むなどしていない場合については、従来の品種改良と安全性は変わらないとして厚生労働省に届け出をすることで流通できるようになります。

この場合は、事前に厚生労働省と相談し、
▽遺伝子をどう改変したかや、
▽アレルギーの原因物質や毒性がある物質が増えていないか、
などの情報を届け出ることになっていて、ゲノム編集食品であることを表示する義務はありません。

この届け出は法律で定められた義務ではないものの、届け出なかったり、虚偽の届け出をしたりした際には、厚生労働省が、その事実を公表する場合があるということです。

一方、ゲノム編集の技術を使っていても、別の遺伝子を組み込む場合は「遺伝子組換え食品」とみなされ、国の食品安全委員会による安全性の審査を受けることが義務づけられています。

また、販売する際には、遺伝子組換え食品であることの表示が義務となっています。

消費者庁 義務ないものの 自主的表示求める

「ゲノム編集食品」について、消費者庁は、流通の際の表示のルールを公表しています。

その中では、今回販売が始まったトマトのように、ゲノム編集を行っていても別の遺伝子が組み込まれておらず、品種改良をしただけであれば、通常の食品と区別ができないため、表示をする義務はないとしています。

一方で、事業者に対し、ゲノム編集食品であることを自主的に表示したり、ウェブサイトなどで情報提供したりすることを求めています。

これについて消費者庁の伊藤明子長官は「販売が始まったトマトは、事業者がゲノム編集食品であることを消費者に明確に説明したうえで販売すると聞いている。ゲノム編集食品かどうかを知りたいというニーズが消費者に強くあることから、厚生労働省に届け出があれば、事業者に対して積極的な表示などを強く求めていきたい」と話しています。