接種後に死亡の3人 “因果関係 評価できず” ワクチン回収問題

モデルナの新型コロナウイルスワクチンから金属片が見つかり、およそ160万回分の回収が進められている問題で、厚生労働省の専門家部会は、接種後に死亡した3人の男性について、接種との因果関係は評価できないとする現時点の調査結果を公表しました。

先月、モデルナのワクチンの一部にステンレス製の製造部品の破片が混入しているのが見つかり、全国900の会場で合わせて161万回分の回収が進められています。

このうち、破片は見つかっていないものの、混入の可能性が否定できないとして回収が進められているワクチンをめぐって、すでに接種を受けていた男性3人が死亡し、厚生労働省は、10日に開いた専門家部会で現時点での調査結果を公表しました。

この中で、遺体の解剖を行った医療機関などからの報告を示し、38歳の男性は不整脈を起こして死亡した可能性が高く、30歳と49歳の男性の死因は不明で、引き続き調査が行われていることを明らかにしました。

そのうえで、部会で3人の死亡と接種との因果関係について検討し、現時点では情報不足などで評価できないと判断しました。

仮にワクチンに金属片が混入していたとしても、死亡との関連を評価できないとしています。

厚生労働省は、現時点で接種体制に影響を与える重大な懸念は認められないとして引き続き接種を進める方針です。

死亡した男性の遺族「安全性が審議されたとはいえない」

モデルナの新型コロナウイルスワクチンを接種したあと死亡した広島県に住む男性の遺族は、厚生労働省の専門家部会が接種と死亡との因果関係は評価できないとする現時点での調査結果を公表したことについて「ワクチンの安全性が審議されたとはいえない」としたうえで、安心して接種できる態勢をつくることが必要だと訴えています。

広島県に住む岡本裕二さんは8月、息子の裕之さんを(30)亡くしました。

亡くなったのは2回目のワクチン接種から3日後で、裕之さんには基礎疾患はなく健康に問題はなかったといいます。

岡本さんによりますと、裕之さんはワクチンを接種した日の夜に40度ほどの熱が出て解熱鎮痛剤を飲み、翌日会社を休んだということです。

接種から2日目の朝には熱が下がったため出社し、帰宅後に夕食をとり就寝しましたが、翌日自分の部屋で亡くなっているのが確認されたということです。

裕之さんが接種したワクチンと同じ工場で製造されたワクチンからは金属片が見つかりおよそ160万回分が回収されています。

10日開かれた厚生労働省の専門家部会は、裕之さんの死亡と接種の因果関係については評価できないとする現時点での調査結果を公表しました。

これについて岡本さんは「関連性がわからないという発表だけでは、安全性が審議されたとはいえない」としたうえで「悪いのはコロナで安心して接種が受けられるよう接種後、3、4日フォローできる態勢をつくることが大切だ」と訴えています。

「副反応報告制度」とは

「副反応報告制度」では、厚生労働省がワクチン接種を行った医師や医療機関に対し、副反応が疑われる症状が確認された場合、予防接種法に基づいて報告するよう求めています。

報告が求められるのは、アナフィラキシーや血栓症のほか、医師が「接種との関連性が高い」と判断し、かつ入院や死亡、障害などにつながった症状です。

報告の際は、症状の名前に加え、接種したワクチンの種類や接種日、診断や検査の結果の概要などを報告書に記載して提出します。

接種との因果関係についても、
「関連あり」、
「関連なし」、
「評価不能」の3種類から選んで報告します。

製薬会社も、副反応が疑われる症状について医療機関などから情報を収集し、医薬品医療機器法に基づいて報告します。

報告を受けるのは、独立行政法人の「PMDA」=医薬品医療機器総合機構で、報告書をもとに、接種前後の状況などを医師から聞き取り、医師や薬剤師などの専門家が因果関係を評価します。

情報収集は医療機関などからの報告に基づいて行われ、厚生労働省やPMDAが医療機関に出向いて、直接、カルテを確認したり、本人や家族に聞き取りをしたりすることはありません。

評価の結果は、すべて厚生労働省の専門家部会に報告され、医師や感染症の専門家などが内容が妥当かを検証します。

厚生労働省は10日に開いた専門家部会で、ファイザーとモデルナのワクチンを接種したあとに死亡が報告された人が、8月22日までに合わせて1093人報告されたことを明らかにしました。

専門家部会で因果関係を検証した結果、
▼「否定できない」が0件、
▼「認められない」が8件、
▼「情報不足などで評価できない」が1085件でした。

厚生労働省は「現時点では接種との因果関係があると結論づけられた事例はなく、死亡との因果関係が統計的に認められた症状もない」としています。

一方「情報不足などで評価できない」とした事例については、同じような事例がその後も報告されないか専門家部会で注視します。

のちに因果関係が認められて評価が変更されることもあるということです。

専門家部会の部会長を務める東京医科歯科大学の森尾友宏教授は「個別の事例に関する因果関係の評価は常に難しい」としたうえで「全体の副反応の傾向をモニタリングして接種を継続するかどうかなど方向性を考えるのが主な目的で、症例が大量のデータとして集まってくることで、将来的に関連があると分かってくる可能性がある。国内外を合わせてできるかぎりの情報を集め、問題がある副反応のシグナルがないか検討していきたい」と話しています。

一方、厚生労働省は、個別の事例に対する救済制度を設けています。

本人や家族などから市町村に申請があれば、専門家部会でカルテを確認するなどして個別の因果関係をより詳しく調査し、因果関係があると認定されれば医療費などが支払われます。