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「学校つらい…私がおかしいの?」~不登校の原因は校則でした

勉強は好き。部活も楽しい。先生も友だち関係も問題ない。でもなぜか、学校に行きたくない…。
女子生徒がそう思い始めたのは中学1年の2学期のころ。その理由は、学校の「校則」にありました。
いま、校則などの学校のきまりをめぐる問題が何らかの要因となり、不登校になった小中学生や高校生は年間5000人を超えています。学校に通えないまま中学3年生になった女子生徒が体験を語ってくれました。
(社会番組部ディレクター 藤田盛資 / 社会部記者 能州さやか)

“男子は短髪”性差に苦しむ人いないの?

「私は現在中学3年生で、校則や学校の構造・風潮が原因で不登校になりました。変えたいと思う校則、書ききれないほどありますが、先生に何度問いかけても『気持ちは分からんでもないけど中学生が服装や髪型、持ち物を縛られるのは当たり前。規制されて当たり前』というような態度で返されます。私がおかしいのか、私がわがままなのかと思い、何度もひどく悩みました」
ことし7月、NHKの校則取材班に届いた1通のメール。
関西地方で暮らす中学3年生のサヤさん(仮名)からでした。
話を聞きたいと連絡を取ると、中学1年生の2学期から2年近く不登校が続いていると話してくれました。
リモートでの取材に応じるサヤさん(パソコン画面)
小学校の頃は学級委員を務め、中学校に入っても勉強や友だちとの人間関係に悩んだことはなかったサヤさん。

そんな彼女が「学校しんどいな…」と思うようになったのは中学1年の2学期のころ。
だんだん、朝起きて制服を着て、学校までの道のりを行くのがつらくなっていきました。
最初は自分でも理由が分からなかったそうですが何がいやなのか考えていくと、“校則”や“制服”がしんどいのだと気付いたといいます。
サヤさんは中学校に入ってから、LGBTQなど性的マイノリティーの存在について学び、男女の区分だけでは単純に分けられないこと、多様な立場の人たちがいることを学びました。
それまでいわゆる“女の子らしい”格好が好きでしたが、パンツスタイルも好きになり、「女性」ではなく「人」としてありたいと考えるようになったといいます。
しかし、サヤさんの学校では、女子は髪を伸ばせますが「男子は耳にかからない短髪」「制服は女子はスカートのみ、男子はスラックスのみ」などと性差がはっきりある校則でした。
また髪型以外にも夏は半袖しか認められず、気温の低い日や冷房で寒いときもカーディガンなどを羽織ることさえ認められていません。

次第に、「校則」は誰かを苦しめたり、人権を踏みにじったりしているのではないかと感じるようになりました。
中学3年生のサヤさん(仮名)
サヤさん
「この校則があることで男子で髪が長い、あるいは伸ばしたい人や、LGBTQ、特にこの問題に関してはトランスジェンダーの生徒などが排除されてしまうのではないかと思いました。また夏は半袖のみで、自分の健康管理もできない制服や校則ってどうなんだろう?と、違和感がつのっていきました」

先生に相談したら…『制服アレルギーみたい』

その後も、制服が“不合理な校則の象徴”のように思え、納得できないまま着ることがつらくなっていったサヤさん。
午後だけの登校や休むことも増えていきました。
何とか登校したいと考えていたとき、追い打ちをかけたのは教員の対応でした。
サヤさん
「校則や制服に矛盾を感じ、先生に聞いてみましたが『分からんでもないけど、こういうもんだし』という微妙な反応でした。『制服だとしんどいんです』と訴えてみましたが、取り合ってもらえませんでした。思い切って『ルールが何かを考えないで、ただ守らせることが大事なんですか』と聞くこともありました。先生は『“個人”としては中学生がピアスしようがメイクしようが気にならないけど、“先生”としては気になる』と言われ、えーっとなりました」
その後、親を含めた担任との3者面談で言われたのは、「“制服アレルギー”みたいになってるな」ということば。
意味もなく制服にこだわっているのではなく、日頃から「多様性が大事」「差別をしないように」と教わってきたからこそ、制服や校則に矛盾を感じたことを理解してもらいたかったサヤさん。
その気持ちは届きませんでした。
中学3年生のサヤさん(仮名)
サヤさん
「制服を全面的に否定したいわけじゃなくて、着たい人は着たらいいと思うんです。同時に着たくない人や着られない人にも選択肢があってほしいなと思って。個人の自由を規制するなら理由や効果、規制される側の同意が必要なはずなのに、学校はそうじゃないですよね。縛られて当たり前、多少理不尽でもそれが普通なんだと」
信頼している別の教員に相談しようとしましたが、一日中忙しそうな様子を見て、負担になると考えやめました。

制服や校則への違和感に、教員の対応が重なり、その後も学校には通えないまま2年近くが経過しました。
サヤさん
「校則を変えるには、きっと先生を巻き込んで、先生の意見を変えて、校長先生や教頭先生にお願いして…という風になると思うんですが、今の私にはすごく難しい。大きな壁を感じます。中学生にとっての社会は、基本は学校と家しかないんです。学校に居場所がなかったら全部終わりなんだなって思いました。私の場合は、SNSでいろんな考えの大人がいると知ることができ、居場所はここだけじゃないと思えるようになったので高校は楽しみですが、中学校は諦めます」

“校則などで不登校”年間5000人超

サヤさんのように校則や制服がきっかけで不登校となるケースは少なくありません。
文部科学省の調査では、校則といった「学校の決まりなどをめぐる問題など」が、何らかの理由となって不登校になった子どもは、2019年度は小学生で1279人、中学生で3153人、高校生は1140人と、合わせて5572人に上ります。

私たちに寄せられたメッセージにはこんな声も。
青森県 10代女性
「私の高校は実習があって、そこで下着検査があります。同性の先生ですが本当にやめてほしいです。コロナ禍になり色つきマスクあり、猛暑のため授業中の水分補給あり、体操服登校あり、中学ではこの3つがコロナ禍で改善されました。しかし高校では授業中の水分補給が認められません。マスクや猛暑の関係で息苦しくてお茶を飲んだら怒られました。倒れてからでは遅いのですと言いたいです。本当に許可してほしい。校則で苦しい人はたくさんいます。現に私も学校に行きたくないです」

大人からも…「刑務所のよう」「寒さで下痢や生理痛」

校則に違和感があるのは子どもたちだけではありません。
保護者や教員からも、理不尽さや不合理さを訴える声が寄せられています。
岐阜県 40代母親
「入学して少し経ち、ツーブロックで指導があり更にカットしにいき、おかしな髪型になった。靴下のワンポイントも認められない。学校が遠いので自転車通学をお願いしたが却下。掃除が始まり1分間音楽が流れるとその場で黙とう。そして静かに掃除。刑務所のようでビックリした。不登校になる理由が色々みえてくる」
大阪府 40代女性
「コロナでマスクが必須になり、炎天下でランドセルを背負って、熱中症のリスクの中で通学はおかしい。冬は換気で凍えるなか、木製の椅子で体が冷え、下痢や生理痛になる子がいるのに防寒対策もせずに座布団使用許可も出さない学校がある事もおかしい」
東京都 20代
「私は都内私立高校の教員です。都議会での議論を機に、都立高校ではブラック校則を見直す動きがありますが、私立高校にはまだ広がっていません。校則で禁じる合理的な理由を説明できないため困っています」

始まった“校則見直し”の動き

大人も子どもも理不尽さを感じることがある校則。
改めて注目される中で、実はいま校則改革の波が広がっているのです。
NHKが全国の都道府県の教育委員会に、管轄する公立高校についてアンケート調査をしたところ、教育委員会として「校則を見直した」「見直す予定」は合わせて19と4割を占めました。
それ以外にも「学校単位で校則見直しの動きがある」というところも26あり、全国的な動きとなっています。
一方で、人権上問題などと指摘がある「下着の色を指定」する校則がある公立高校は、都道府県の教育委員会が把握しているだけで少なくとも181校あり、今後、さらに見直しの動きは加速するとみられます。

“#その校則、必要ですか” 皆さんの声を聞かせてください

今回、中学3年生のサヤさんは、メールの最後にこう書いてくれていました。
中学3年生のサヤさん(仮名)
サヤさん
「いろんな人が、その人のまま、学校という教育の機会から排除されなくていいような、より多様な人を受け入れられるような学校になっていけばいいなと思います」
サヤさんから話を聞く中で感じたのは、令和の時代の中学生らしい、現代的な人権感覚や多様性が当たり前のように備わっていること。
だからこそ、これまでは見過ごされてきた校則や制服の矛盾に気付き、納得できずに苦しんだ気持ちが伝わってきました。
皆さんも「なんでこんな校則あるんだろう?」とか「この校則、苦しいな」などと感じることはないでしょうか?
取材を進める中で、校則を見つめ直すことは、“1人でも多くの生徒が過ごしやすい学校”そして“よりよい社会をつくる”大事な一歩のように感じています。
私たちと一緒に校則について考えてみませんか?
以下のサイトから皆さんの体験やご意見をお待ちしています。
社会番組部ディレクター
藤田 盛資
2011年入局
去年から学校現場を取材
校則に関しては
“置き勉禁止”を破って
職員室で
たたかれた思い出が
社会部記者
能州 さやか
2011年入局
文部科学省担当
高校時代の校則は
厳しくなく
髪型や服装は自由でした

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