都道府県の4割が公立高校の校則の見直しを進める

生徒に生まれつきの髪の色を証明させる「地毛証明書」の提出など、行き過ぎた校則が問題となる中、都道府県の4割が公立高校の校則の見直しを進めていることが、NHKの調査でわかりました。一方で「下着の色の指定」や「地毛証明書」の校則がある学校もまだ多く、校則の見直しはさらに進むとみられます。

学校の校則については、4年前に大阪の府立高校の女子生徒が頭髪指導をめぐって訴えを起こしたことをきっかけに、各地で見直しの機運が高まり、ことし6月には、文部科学省が社会常識や時代に合わせて積極的に見直すよう全国に通知しています。

NHKは先月までに、全国の47都道府県の教育委員会に公立高校の校則についてアンケート調査を行いました。
その結果、教育委員会として、
▼校則を「見直した」と回答したのは岐阜県や佐賀県など14、
▼「見直す予定」が5と、
都道府県の4割を占めました。

このほかにも、
▼「学校単位で見直しの動きがある」と答えたところが26と半数を超え、
全国的に見直しに向けた動きが広がっていることがわかりました。

見直しのきっかけを複数回答で聞いたところ、最も多かったのが、▼「世論の高まり」で18、
▼「文部科学省の通知」が13、
▼「生徒や保護者など現場からの要望」が11、
▼「大阪の府立高校の頭髪指導をめぐる裁判」が7、
などとなりました。
一方で、生まれつきの髪の色を証明させる「地毛証明書」を提出させる学校があると回答したのは25の都道県で、教育委員会が把握するだけで272校あり、奇抜な髪型だといった理由で「ツーブロック禁止」の学校があるのは30都道府県、少なくとも208校、「下着の色を指定」する学校があるのは25都県で、少なくとも181校となっています。

これらの校則について、人権上の問題があるなどとして多くの教育委員会が見直す方針だと回答していて、今後、校則の見直しはさらに進むとみられます。

熊本市では生徒主体で校則を見直し

熊本県では調査に対し「学校単位で見直しの動きがある」と回答しています。

このうち熊本市では、教育委員会の呼びかけで児童や生徒が主体となり、校則を見直す取り組みが、今年度からすべての学校で始まっています。

熊本市教育委員会では去年、学校改革の一環で、全学校の児童・生徒と教職員、それに保護者にアンケート調査を行った結果、児童や生徒の3人に1人が「校則の見直しが必要だ」と回答したということです。

これを受け、教育委員会はオンラインで生徒や教員、保護者を集めた座談会を開くなど、意見集約を進めたうえで、校則見直しのガイドラインを各学校に示しました。

この中では「校則は必要かつ合理的な範囲で制定する」として、生まれ持った性質や性の多様性を尊重できない校則は必ず改定することや、子どもたちの主体性を育むため、児童・生徒が校則について考える場を設けて、少なくとも年1回、見直しを行うよう求めています。

これにより児童・生徒主体の校則見直しに向けた議論は、今年度から熊本市立のすべての小中学校と高校137校で一斉に始まっています。

このうち熊本市中心部にある白川中学校では、生徒会の役員や各クラスの学級委員ら生徒の代表20人余りをメンバーに、教員や保護者も加わって、校則を見直す委員会が設置されました。

7月に開かれた初めての会議では、ふだんの学校生活で抱いてきた“違和感”について、意見を出し合いました。

この中では1人の男子生徒から「体育の授業などで男子には着替える更衣室がないのはおかしいのではないか」と指摘が出されたのに対し、女子生徒からも「ジェンダーレスが叫ばれる中、女子だけ特別扱いするような状況は変えるべきだ」と賛同意見が出されました。

意見が分かれる場面もあり、新型コロナの影響で換気の機会も増える中、冬場、女子の防寒着は教室内でもボックスコートか部活のウインドブレーカーしか着用が認められていないことについて「ボックスコートは生地が分厚くて、腕を曲げにくく字も書きづらいので、別の上着も幅広く認めてほしい」という意見が出た一方、別の生徒からは「暖房も整備されたので、中に着込むなどの対策で十分だ」といった声も聞かれました。

学校では、今後も生徒による話し合いを続け、今年度中に校則の見直し案をまとめることにしています。

議論に参加した2年生の女子生徒は「校則に疑問を持つこともあり、自分たちで校則を決めるからこそ、守りがいがあると思うので、話し合う機会があってよかった」と話していました。

また、3年生で生徒会長の川添諒平さんは「生徒一人ひとり、校則に対する考え方が違うこともわかったので、校則で規制する範囲を有意義なものにしていきたい」と話していました。

議論を見守った大橋英材校長は「校則の見直しは、これまでの学校現場の常識を覆す取り組みで、生徒の主体性を生かす、非常にいい題材だ」としたうえで「社会に出て、政治的なことや身の回りの不都合や差別に気づき、みずから意見を言って解決していく力を身につける機会にしてほしい」と話しています。

校則見直しの具体的な内容は

校則を教育委員会として「見直した」「見直す予定」「学校単位で見直しの動きがある」と回答した、45都道府県の教育委員会に、具体的な取り組みの内容を聞きました。

▼最も多かったのは、見直しに向けて校則への意識や実態などの「アンケート調査を実施」で、都道府県のうち30、
▼各学校で見直しについて「生徒自身の議論を促すよう要請」が28、
▼「教育委員会として通知を発出」が26、
▼「校則の公表を要請」が17、
▼「特定の校則の廃止を要請」は7でした。

「見直した」と回答した岐阜県では、これらのすべてを実施していて、廃止を要請した校則として「下着の色の指定などルール順守の確認行為自体が新たな人権問題になりかねないもの」や「生徒の私生活の事柄について学校が許可や承認を必要としているもの」などを挙げています。

また、制服についても、男女どちらの制服でも選択できるようにしています。

現在、校則の実態を調査中で結果を受けて、今後、見直していくという自治体も複数ありました。

校則見直し「良かった」多く

公立高校の校則について、都道府県の教育委員会として「見直した」もしくは「学校単位で見直しの動きがある」と回答した40の教育委員会を対象に、その後について聞きました。

この中で、見直しの結果をどう評価するか聞いたところ、回答があったうち、
▼「見直して良かった」が29、
▼「どちらともいえない」は2つにとどまり、
▼「良くなかった」と回答したところはありませんでした。

学校が荒れるなどの悪影響があったかについては、
▼「なかった」が16、
▼「どちらとも言えない」が11、
▼悪影響が「あった」と回答したところはありませんでした。

また、生徒の主体性が増すなどのよい影響については、
▼「あった」が15、
▼「どちらともいえない」が14、
▼「なかった」と回答したところはありませんでした。

校則の見直しにあたり、難しさを感じた点として「保護者や地域から理解を得るのに懸念がある」とか「人権侵害にあたる疑いがある校則について十分見直しが図られていなかったり、教職員間で共通理解が図られていなかったりする」といった点を挙げた教育委員会もありました。

見直しの困難さや意義も

今回のアンケート調査では、校則見直しの困難さや見直しの意義についても声が寄せられました。

難しさとしては「教職員に繁忙感がある中、子どもたちの主体性を育み、社会背景も考慮して見直すことは難しい」とか「各学校への指導では校則の有無に終始してしまい、実際の指導で見直しの意図を浸透させることができないこともあった」といった声があげられています。

また、見直しが進むことに不安を感じている教育委員会もあり「就職先や進学先の求める生徒像や価値観を考えたとき生徒の不利益とならないか心配だ」とか「生徒の自主性を促すことが過度な自由に繋がり、校則の教育的意義への影響が懸念される」といった声もありました。

一方で、手応えを感じている教育委員会からは「学校は見直しにより荒れるといった悪影響を懸念しているようだが、現時点で報告はない」とか「生徒指導を行ううえで最も重要な『子どもの将来の社会的自立を考える』という観点を再度確認することができた」といった声も寄せられました。

識者「非常に大きな変化 前向きに捉えたい」

学校現場の問題に詳しい名古屋大学大学院の内田良准教授は「校則は校内暴力のあった1980年代ごろに厳しくなり、そのまま徐々に全国的に細かく厳しくなってきた。校則が子どもの頭からつま先まで、学校の中から外まで管理している現状だが、ようやく世論の高まりを受け、学校や自治体が見直す動きを始めたことは、非常に大きな変化で前向きに捉えたい。一方で依然として残る、明らかに人権侵害とみられる校則は、一刻も早く変えなければならない」と話していました。

そして、見直した結果を肯定的に捉える回答が多かったことについて「厳しい校則が長い間維持されてきた理由は、校則を緩めたとたんに学校が荒れるに違いないという不安意識が背景にあったが、校則を見直しても学校が荒れていないという回答で、主体性が増すなど、よい点も見えてきている。今までの校則は教員が逸脱した子どもを管理するという仕組みだが、そうではなく、教員も子どもも、お互いを信頼して学校生活を送る仕組みが必要だ。校則見直しの機運が高まるよう、取り組みが広がっていってほしい」と話しています。