都内新規陽性者 依然極めて高く 対策徹底を モニタリング会議

東京都のモニタリング会議で、専門家は、都内の新規陽性者は依然として極めて高い値で、入院患者や重症の患者も高い水準にとどまっていると説明したうえで「医療提供体制がひっ迫している中、再び増加に転じれば危機的な状況になる」として、徹底した対策を続けるべきだという考えを示しました。

会議の中で専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

このうち感染状況について、新規陽性者の7日間平均は8日時点でおよそ1986人と、1週間前の今月1日の60%に減少したものの、依然として極めて高い値だと説明しました。

そのうえで「新学期が始まったことから、通学による接触機会の増加を契機とした、子から親への感染といった家庭での拡大が危惧される」として、学校などで感染防止対策を徹底するよう呼びかけました。

また、都内ではワクチン接種の対象となっている12歳以上のうち、2回終えた人が7日時点で49.8%となった一方、接種後に陽性となった人も確認されているとして「接種後も感染リスクの高い行動を避け、マスク着用などの対策を念入りに行う必要がある」としています。

一方、医療提供体制について専門家は、8日時点で入院患者が4008人、重症の患者が252人となり、いずれも高い水準にとどまっていると説明しました。

また「自宅療養中に容体が悪化した患者の救急搬送や入院の受け入れが困難な状況が続き、緊急を要するけがや病気の患者の救急搬送や受け入れにも大きな支障が生じている」と指摘しました。

そのうえで「医療提供体制がひっ迫している中、新規陽性者が再び増加に転じれば危機的な状況になる」として、徹底した対策を続けるべきだという考えを示しました。

小池知事「行楽の秋も 不要不急の外出を控えて」

モニタリング会議の中で、小池知事は「例年であれば、9月はとてもよいシーズンで行楽の秋を迎えるが、今は不要不急の外出を控えていただき、やむをえず出かける際はマスクを正しく着用し、手洗いなど基本的な感染防止対策を入念にお願いする。ワクチンの接種を完了した人も気を緩めることなく、対策を徹底していただきたい」と呼びかけました。

病床6583床を確保も目標に届かず

東京都は、新型コロナウイルスの患者のために確保した病床が、9日時点で6583床となったことを明らかにし、目標の7000床の確保に向けて引き続き医療機関に協力を求めていくことにしています。

都と国は8月23日、感染症法に基づいて都内の医療機関に病床のさらなる確保などの協力要請を行い、8日までにすべての医療機関から回答を得ました。

その結果、確保病床は、8日までの6319床から264床増えて、6583床になりました。

このうち重症の患者用の病床は503床で、8日までの492床から11床増えています。

ただ、全体の病床は目標としている7000床には400床余り届いておらず、都は引き続き医療機関に協力を求めていくことにしています。

都内の感染状況と医療提供体制

9日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況 3週連続減少も “依然極めて高い値”

新たな感染の確認は8日時点で、7日間平均が1985.7人となりました。

前回、9月1日時点の3290人より、およそ1304人少なくなり、3週連続で減少しています。

ただ、専門家は「依然として第3波のピーク時のおよそ1816人を上回る極めて高い値だ」と指摘しました。

また、新規陽性者の増加比は先週のおよそ60%と、3週連続で100%を下回ったものの、専門家は「災害レベルで感染が猛威を振るう医療非常事態が継続している」と強く呼びかけました。

また「ワクチン接種後の陽性者が確認されている。2回接種したあとも感染し、本人は軽症や無症状でも周囲の人に感染させるリスクがあることを啓発する必要がある」と指摘しました。

9月6日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は、
▽20代が26.2%と最も多く、
次いで、
▽30代が19.9%
▽40代が16.0%
▽50代が11.2%
▽10代が10.3%
▽10歳未満が8.8%
▽60代が3.8%
▽70代が2.2%
▽80代が1.2%
▽90代以上が0.4%でした。

6月中旬以降、50代以下の割合が全体の90%以上を占めています。

また、10歳未満と10代の割合は合わせて19.1%で、先週から1.4ポイント増え、5週連続の上昇となりました。

専門家は「新学期を迎えた学校生活での感染防止対策の徹底が求められる。社会全体で『子どもを守る』という意識の啓発が必要だ」と指摘しています。

一方、65歳以上の高齢者の感染者数は866人で、1231人だった先週から365人減り、2週連続で減少しました。

ただ、新規陽性者に占める割合は0.4ポイント上昇し、5週連続の上昇となりました。

専門家は「医療機関や高齢者施設などでの発生が引き続き報告されていて、ワクチンを2回接種した職員も厳重な感染防止対策が必要だ」と指摘しています。

感染経路がわかっている人では、
▽同居する人からの感染が69.1%と最も多く、
次いで、
▽職場が13.0%
▽保育園や学校
▽高齢者施設や病院といった施設での感染が7.0%
▽会食は1.8%でした。

専門家は「部活動や学校行事を含む学校生活や学習塾などでの基本的な感染防止対策を、改めて徹底する必要がある」としています。

さらに、職場での感染も極めて高い水準で推移しているとして「テレワーク、時差通勤、オンライン会議の推進、出張の自粛など、3密を回避する環境整備に積極的な取り組みが求められる」と指摘しました。

「感染の広がりを反映する指標」とされる、感染経路がわからない人の7日間平均は8日時点で1066.3人で、先週からおよそ820人減りました。

増加比は8日時点で56.5%と、15.6ポイント低下しています。

ただ、専門家は「感染経路がわからない人の数は依然として高い水準で推移していて、今後の推移に警戒が必要だ。職場や施設の外における第三者からの感染による、感染経路が追えない潜在的な感染が懸念される」としています。

感染経路がわからない人の割合は、およそ55%で、前の週から3ポイント下がりましたが、高い水準で推移しています。

20代と30代で60%を超えていて、引き続き行動が活発な世代で高い割合となっています。

医療提供体制 “重症患者の病床 空いてもすぐに満床”

検査の陽性率の7日間平均は、8日時点で12.3%となり、前の週、9月1日時点の17.1%から4.8ポイント下がりました。

専門家は「陽性率は低下したが、依然として高い水準で推移している。検査を迅速に受けられないことで多数の感染者が潜在している可能性がある」と指摘しました。

入院患者は8日時点で4008人で、9月1日より263人減少しました。

ただ、専門家は「新規陽性者数が減少しているにもかかわらず、今月4日には過去最多を更新した。医療提供体制がひっ迫する中、新規陽性者数が再び増加に転じれば危機的状況になる」と指摘しました。

保健所が、都の入院調整本部に入院先を探すよう求めた依頼件数の7日間平均は、8日時点でおよそ180件でした。

1日時点のおよそ414件の半分以下になりましたが、専門家は「非常に高い水準だ」と指摘しました。

そのうえで「翌日以降への繰り越しは減少傾向にあるものの、重症患者のための病床がひっ迫していて、空いてもすぐに次の患者が入院し、満床となる事態が続いている」として、医療提供体制のひっ迫が続いていることに危機感を示しました。

8日時点の入院患者4008人のうち、60代以下は全体のおよそ81%と、高い水準が続いています。

年代別では、
▽50代が最も多く、全体のおよそ24%
次いで、
▽40代がおよそ20%
▽30代以下でも、およそ26%となっています。

専門家は、70代以上の入院患者が増加しているとして「高齢者は入院期間が長期化することが多く、医療提供体制への負荷を軽減するためには、高齢者層の感染を引き続き徹底的に防止する必要がある」と指摘しました。

都の基準で集計した8日時点の重症患者は252人で、1日時点から34人減りました。

専門家は「新規の陽性者数が減少したにもかかわらず、累積した重症患者は極めて高い水準で推移している。新規陽性者数が再び増加に転じれば危機的状況に直面する」と指摘しました。

8日時点の重症患者252人の男女別は、
▽男性202人
▽女性50人です。

年代別では、
▽50代が最も多く97人
次いで、
▽60代が61人
▽40代が38人
▽70代が34人
▽30代が15人
▽80代が4人
▽20代が3人でした。

専門家は「40代から60代で重症患者全体の78%を占めている。ワクチン接種は重症化の予防効果と死亡率の低下が期待されることを啓発する必要がある」と指摘しています。

このほか、人工呼吸器かECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は、8日時点で505人で、今月1日時点より19人減りました。

8日時点で陽性となった人の療養状況を9月1日時点と比べると、
▽自宅で療養している人は、7311人減って1万2486人
▽都が確保したホテルなどで療養している人は、389人減って1791人でした。

また、
▽医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は、3268人減って3602人となりました。

入院患者を含めた「療養が必要な人」全体の数は2万1887人で、8月1日時点より1万1231人減りました。

全療養者に占める入院患者の割合は、およそ18ポイントで、前の週から5ポイント増えましたが、専門家は「依然として低い水準にとどまっている」と指摘しています。

また、9月6日までの1週間で自宅療養中の死亡が9人報告されたと説明し「深刻な事態が続いている。フォローアップ体制をさらに強化して、自宅療養中の重症化を防ぐ必要がある」と指摘しました。

一方、9月6日までの1週間で、新型コロナウイルスに感染した83人が亡くなりました。

このうち、
▽40代以下は8人
▽50代が13人
▽60代が20人
▽70以上が42人でした。