北朝鮮 キム総書記出席し閲兵式 弾道ミサイルなど兵器登場せず

北朝鮮では、建国記念日にあたる9日、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が出席して閲兵式が行われました。民兵組織などが行進しましたが、弾道ミサイルなどの兵器は登場しませんでした。

北朝鮮は、ピョンヤン中心部にあるキム・イルソン(金日成)広場で9日午前0時から行った閲兵式の映像を、国営の朝鮮中央テレビを通じて公開し、キム・ジョンウン総書記が出席したと伝えました。

参加したのは民兵組織の「労農赤衛軍」や国営企業の労働者などで、正規軍である朝鮮人民軍の参加は伝えられていません。

また、弾道ミサイルなどの大型の兵器は登場しませんでした。

閲兵式でのキム総書記の発言は伝えられず、壇上で演説した幹部は「心を一つに団結して難局を打開していく」と呼びかけました。

北朝鮮は、新型コロナウイルスへの感染対策として国境を封鎖し貿易を厳しく制限する中で、経済が大きな打撃を受けていると伝えられています。

このため北朝鮮としては、国民を動員して閲兵式を行うことで、内部の結束を強化するねらいがありそうです。

「労働新聞」閲兵式を大々的に伝える

9日付けの朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は、閲兵式について、100枚近い写真を掲載し大々的に伝えています。

このうち1面トップに掲載された写真では、スーツ姿のキム・ジョンウン総書記が幹部とともに閲兵式を眺める様子が捉えられています。

会場となったキム・イルソン広場はライトアップされ、大勢の市民が国旗を手に持って集まり、花火が打ち上げられたことも確認できます。

また閲兵式の写真では、オレンジ色の防護服にマスクをかぶった人たちが隊列を組んで行進する様子が捉えられています。

「労働新聞」は、民兵組織や国営企業の労働者に加え、感染対策にあたっている保健や検疫の機関の関係者も参加したと伝えています。

一方、弾道ミサイルなどの大型の兵器の写真は確認されていません。

過去2回の軍事パレードも夜間に

北朝鮮では過去2回の軍事パレードも夜間に行われました。

このうち、去年10月10日の朝鮮労働党創立75年に合わせて行われた軍事パレードは、異例の午前0時の開始で、ドローンなどを使って高層ビル群の夜景やライトアップされた会場が映し出されたほか、鮮やかな色の花火が打ち上げられました。

ことし1月14日の朝鮮労働党の党大会を記念した軍事パレードも夜に行われ、会場がライトアップされる中、新型の弾道ミサイルが登場しました。

韓国軍合同参謀本部「詳しく分析中」

韓国軍合同参謀本部のキム・ジュンラク広報室長は、9日午前の定例会見で「北朝鮮が閲兵式を実施した状況を、韓国軍は綿密に追跡している。具体的なことについては、米韓の情報当局間の緊密な協力のもと、詳しく分析中だ」と述べました。

記者からは、時間や規模、新型兵器を公開したかどうかなど問われましたが、具体的な説明はありませんでした。

専門家「国民を鼓舞するためと考えられる」

北朝鮮が閲兵式を行ったことについて、北朝鮮情勢に詳しい南山大学の平岩俊司教授は「弾道ミサイルが登場したということもなさそうで、規模も控えめだったという報道があることから、国際社会に対するメッセージというより、経済的に厳しい状況が続く中で国民を鼓舞するためだと考えられる」と分析しています。

また、閲兵式に民兵組織の「労農赤衛軍」や国営企業の労働者などが参加したことについては「仮に朝鮮半島情勢が緊張した場合、一般の国民も含めた北朝鮮全体として危機に対処していくということや、新型コロナウイルス対策も国民が一丸となってやらなければいけないという意味もあるのではないか」と指摘しています。

加藤官房長官「重大な関心持ち 情報収集 分析」

加藤官房長官は午前の記者会見で「北朝鮮をめぐる動向は、重大な関心を持って、情報収集、分析を行っているところだ。引き続き分析をしっかり行いながら、アメリカなどともよく連携をとって対応にあたっていきたい」と述べました。

キム総書記 顔の血色よくなった?

キム・ジョンウン総書記をめぐっては、ことし6月ごろから韓国メディアやアメリカのCNNテレビなどが、痩せたように見えると伝えていました。

9日の閲兵式に出席したキム総書記について、北朝鮮情勢を研究しているアメリカのグループ「38ノース」のマーティン・ウィリアムズ氏は、ツイッターに「写真を見ると、キム総書記がいかに健康的になっているか目をひきます。彼がどのようにしているのか諸説ありますが、数か月前よりもずっとよくなっているようです」と投稿しました。

一方、韓国の大手紙「中央日報」の電子版は「顔の血色がよくなり、ズボンはすそがなびくほど余裕があった。ダイエットに成功し、体重をキープしながら健康を維持している兆候だ」と伝えています。

また、ことし6月、北朝鮮の朝鮮中央テレビがキム総書記について「やつれた姿を見ると胸が痛い」と語る市民のインタビューを放送したことに触れ「去年の台風による被害で食糧事情が悪化する北で、キム総書記が激務をいとわず、市民の生活のために痩せたと印象づけようとしている」という見方を伝えています。

国営テレビも放送

北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、9日未明に行われた閲兵式の映像を、9日午後5時から2時間近くにわたって特別番組で放送しました。

映像では、ライトアップされたキム・イルソン広場に大勢の市民が集まり、音楽に合わせて国旗を振ったり手拍子したりしている様子が映っていますが、マスクを着用した人の姿はほとんど確認できません。

会場の上空ではパラシュートからつるされた大きな国旗を空中で広げる演出も見られました。

キム・ジョンウン総書記はスーツ姿で会場に登場し「万歳」と叫ぶ市民や隊列を組んで行進する参加者に手を振って応じていました。

行進していた人たちの中には、銃を持った男女やオレンジ色の防護服にマスクをかぶった人たちの姿も確認できました。

国営テレビは、民兵組織や国営企業の労働者に加え、感染対策にあたっている保健や検疫の機関の関係者も参加したと伝えました。

キム総書記は時折笑顔を見せ、番組のナレーションを担当した看板アナウンサーとみられる女性などと談笑する場面もありましたが、演説や肉声は放送されませんでした。

また弾道ミサイルなどの大型の兵器の映像もありませんでした。