日常生活“制限緩和”へ考え方 時期はいつ? 何が変わるのか…?

今月12日が期限となる21都道府県の緊急事態宣言は、東京や大阪など19都道府県で今月30日まで延長されることが決まりました。
一方、政府は、今後の日常生活の回復に向けた考え方を決定しました。ワクチンを接種した人や検査で陰性が確認された人は、飲食店の利用や県をまたぐ移動の制限を緩和するなどとしています。暮らしはどう変わるのか、詳しく見ていきます。

“宣言”は19都道府県

新型コロナウイルス対策で、政府は、今月12日が期限となっている21都道府県の緊急事態宣言について東京や大阪など19都道府県で今月30日まで延長する一方、宮城県と岡山県は、まん延防止等重点措置に移行させることを決めました。

<各地の声>
「延長した方がいい。ワクチンの接種率が上がり感染者が減ったら解除すればいいと思う」(札幌 70代男性)
「宣言が解除されれば感染のリスクが高まると思う。政府も国民も、もう一度、真剣に対応しないといけない」(東京 30代男性)
「病床のひっ迫など医療状況が改善されるまでは、厳しくしていてもいいのではないか」(名古屋 50代女性)

“まん延防止措置”は8県

また、現在、重点措置が適用されている12県のうち富山、山梨、愛媛、高知、佐賀、長崎の6県は解除し、そのほかの地域は今月30日まで延長することも決定しました。これにより宣言の対象地域は19都道府県に、重点措置の適用地域は8県になります。

<各地の声>
「気持ちが緩んでいる人もいると思う。重点措置になっても一人一人が感染対策に気をつけることが必要だ」(仙台 男子大学生)
「重点措置に変わってもこれまでの生活は変わらない。できる感染対策はきっちりやっていきたい」(岡山 60代女性)

対処方針変更 “まん延防止措置” 酒類提供 午後7時半まで

政府は、新型コロナウイルス対策の基本的対処方針を変更しました。

「まん延防止等重点措置」の適用地域では、知事の判断により、自治体から感染対策の認証を受けるなどした飲食店で午後7時半まで酒類の提供ができるとしたほか、地域の感染状況などを踏まえて午後9時までの営業も可能とするなどとしています。

一方で重点措置の対象地域でも依然、多くの感染が起きているとして、混雑した場所への外出を半減させるよう住民に強力に呼びかけるとしています。

“行動制限緩和”へ考え方 何が変わるのか…?

さらに政府は、今後の日常生活の回復に向けた考え方を決定しました。ワクチンを接種した人や検査で陰性が確認された人は、緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置の対象地域でも飲食店の利用や県をまたぐ移動の制限を緩和していくなどとしています。

政府は9日の新型コロナウイルス対策本部で
▽ワクチンを接種した人や
▽検査で陰性が確認された人など
他の人に感染させるリスクが低いことを示す「ワクチン・検査パッケージ」という仕組みを活用した、今後の日常生活の回復に向けた考え方を決定しました。
●飲食店
自治体などから適切な感染対策を講じていると認証を受けた飲食店では、営業時間や酒の提供、会食の人数に関する制限を緩和するなどとしています。

●旅行など
ワクチンを接種した人や検査で陰性が確認された人は、旅行を含め県をまたぐ移動の自粛要請の対象とせず、観光振興策の実施も検討するとしています。

●大学など
大学などでは部活動や課外活動も原則、可能にするとしています。

●イベントの開催
イベントについては、感染を防ぐための計画の策定やQRコードを活用した感染経路の追跡といった対策を講じたうえで、宣言や重点措置の地域でも人数制限などの緩和を検討し、それ以外の地域では緩和や撤廃をするとしています。

そして、こうした緩和を本格的に実施するまでの経過措置として、必要な技術の実証や一部の事業者への部分的な緩和を行い、影響を検証しながらその後の緩和を最終的に判断するとしています。

一方、新たな変異ウイルスなどによって医療提供体制のひっ迫が見込まれ、宣言のもとでさらなる行動制限が必要となる場合などは強い制限を求めることがあるとしています。

分科会 尾身会長「行動制限緩和は宣言解除が前提」

「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は報道陣の取材に応じ、行動制限の緩和について「一部ではすぐにいろいろな制限を緩めるべきだという風潮があるが無条件に緩和できるということではない。他の人に感染させるリスクが低いことを示す仕組み『ワクチン・検査パッケージ』を導入できる11月ごろに備えて、国民的な議論などしっかりと準備を進めておく必要がある。行動制限の緩和は緊急事態宣言が解除されることが前提だ。宣言が出ている中で人々の行動を緩めることはすべきではない。間違ったメッセージになるからやめましょうと国にも伝え、そういうことはないということを何度も確認した」と述べました。

東京都 小池知事 “制限緩和”「今後の方向性について検討」

政府の方針について、東京都の小池知事は記者団に対し「感染防止対策と社会経済活動を両立するため医療提供体制の状況やワクチン接種の進捗(しんちょく)なども踏まえ、今後の緩和の方向性について検討を進めていく」と述べました。

そのうえで、現在、9万店を超える都の点検や認証を受けた飲食店を対象に緩和の在り方を検討していく考えを示しました。

また、記者団が「制限の緩和は最も早ければ来月1日に実施できる用意があるのか」と質問したのに対し、小池知事は「感染状況や医療提供体制、専門家の意見なども参考にする一方で、どうやって社会経済を動かしていくかバランスを考えながら進めていきたい。『緩和』ということばが独り歩きすると同じことを繰り返すことになり、皆さんの努力がもったいないことになるので、そこを考える必要がある」と述べました。

また、小池知事は「今の医療非常事態から脱するためにも『今、私たちは分水れいに立っている』という意識を共有していく。ワクチンの接種も順調に進み、救急搬送や発熱相談も減少し、抗体カクテル療法は増えてきている。都民や事業者に協力をいただきながら行動の積み重ねで難局を乗り越えていく」と述べました。

神奈川県 “制限緩和” 認証店から酒の提供再開認める考え

神奈川県は午後6時から対策本部会議を開き、飲食店の酒類の提供停止や営業時間の短縮、それに県立学校の分散登校など現在行っているすべての要請や対策を今月30日まで延長することを決めました。

この中で黒岩知事は、国が緊急事態宣言が解除されたあとの行動制限の緩和策を示したことを受けて、神奈川県ではマスク飲食を徹底していると県が認証している店から、酒の提供の再開などを認める考えを示しました。

会議のあと黒岩知事は「新規感染者は大幅に減ってきているが、きょうも800人を超えていて医療現場のひっ迫度は簡単には低下しない。今はまだ宣言を解除できる状況ではないが、ようやくおぼろげながらも出口が見えてきたので、県民の皆さんには今しばらく我慢と協力をお願いしたい」と述べました。

大阪府 吉村知事 “制限緩和”は「ワクチンが大前提」

大阪府は対策本部会議を開き、吉村知事は「府民や事業者の協力で感染の減少傾向は少し見られているが、医療提供体制は非常にひっ迫した状況が続いている。緊急事態宣言の延長で『またか』と思うかもしれないが、感染減少を確実なものにして医療のひっ迫を解消させていくため、引き続き感染対策の徹底をお願いしたい」述べました。

そして、会議では、宣言の延長に伴い酒類を提供する飲食店への休業要請など今の措置を継続することを決めました。

また、政府が決定した今後の日常生活の回復に向けた考え方について、吉村知事は府の対策本部会議のあと記者団に対し「基本的には賛成だが希望する人全員にワクチンが届いていることが大前提だ。『ワクチン差別』の問題もあるので、終わりの時期をきちんと定めたうえで期間限定の措置にすべきだ」と述べ、時限的な措置とすることが望ましいという考えを示しました。

愛知県 大村知事「対策徹底し入院状況の改善を」

愛知県は現在、飲食店に対し酒の提供を終日、取りやめたうえで、営業時間を午後8時までに短縮することを要請するなどの感染防止対策を行っています。

これについて愛知県の大村知事は記者会見で、緊急事態宣言の新たな期限となる今月30日まで継続させると発表しました。

そして「新たな感染者の数が1000人を超える厳しい状況で、宣言の解除にはならない。引き続き感染防止対策の徹底をお願いしたい」と述べました。

そのうえで「今週・来週が重要な時期だ。県民にはもう少し我慢してほしい。まずは入院状況を劇的に改善させたうえで、新たな感染者の数を抑え込んでいきたい」と述べました。

飲食店からは…

“制限緩和” 東京 銀座のバー「不安はあるが ようやく希望」

一方、自治体から感染対策の認証を受けた飲食店に対する酒類の提供や営業時間の制限の緩和について、都内の飲食店関係者からは歓迎する声が出ています。
東京 銀座で6つのバーを経営している保志雄一さんはクラブやバー、スナックなどの経営者およそ1000人でつくる「銀座社交料飲協会」の会長を務めています。

自身の店では入店前の検温や消毒、店内の二酸化炭素濃度の測定のほか、バーテンダーと客の間、また客どうしの間にパーテーションを設置するなどできるかぎりの感染対策を取ってきました。

制限の緩和について保志さんは「お客さんが戻ってきてくれるのか不安はありますが『緩和』ということばを聞いてようやく希望を持てます。お酒を提供しても感染は広がらないという実績が積み重なれば、堂々と営業できるようになると思います」とほっとしたような表情で話していました。

観光関係者からは…

三重 伊勢神宮周辺「感染収束せず受け入れるしか」

緊急事態宣言の延長について、三重県の伊勢神宮周辺では「残念だがしかたない」といった声が聞かれました。

伊勢神宮では緊急事態宣言の発出を受けて参拝時間を1時間短縮し午後5時までとしているほか、近くにある市営駐車場も閉鎖していてます。内宮の近くの土産店などが並ぶ通りでは多くの店が休業し、通りを歩く人たちもまばらになっています。

緊急事態宣言の延長について、雑貨店の店長をしている28歳の男性は「残念ですがしかたないかなと思います。休業も考えましたが少しでも来てくれるお客さんをおもてなししたい」と話していました。

また、人力車を引いている31歳の男性は「去年の秋のように観光客が戻るのではと期待していました。感染が収束しないので受け入れるしかありません」と話していました。

神奈川 箱根「限界だ “制限緩和”は紅葉シーズンに間に合えば」

緊急事態宣言の延長が決まり、神奈川県有数の観光地、箱根町の土産物店からは「限界だ」という声が聞かれました。

箱根町では客足が減り、土産物店や飲食店の休業が目立っています。このうち強羅駅前の土産物屋の「中村屋」では、ことしの売り上げは例年の半分以下にとどまり、店は
▽これまで週に1度だった定休日を2日に増やしたほか
▽アルバイトの雇用を一時的に中断するなどして
経費を抑える努力を続けているということです。

緊急事態宣言の延長を受け店主の中村雅昭さんは「やむをえないことだとは思うが、何回も宣言が繰り返され先行きが見えず不安で、精神的、肉体的に限界に達している。宣言はこれで最後にしてほしい」と話していました。

また、政府で検討を進めている行動制限の緩和について「ワクチンを済ませて観光していただけるのであれば迎える側も訪れる側も安心だ。紅葉のシーズンに間に合えばうれしい」と話していました。

はとバス ツアー中止に “制限緩和”は「やっと回復の兆し」

都内のバス会社の中には、宣言の解除を見越して計画していたバスツアーを中止せざるをえない見通しだというところもあります。

東京 大田区に本社がある老舗のバス会社「はとバス」は、緊急事態宣言を受け大半のバスツアーを取りやめていますが、今月13日から今月末までの間については緊急事態宣言が解除されることを見越して、都内を発着して関東近郊の観光地などに向かう12種類、合わせて44便のツアーを計画し参加者を募集していました。

しかし、緊急事態宣言の延長によって県境をまたぐツアーの開催は難しくなり中止する見通しだといいます。

ただ今後、県境を越える移動などの行動制限が緩和される見通しになったことから、会社では新たなツアーの検討を始めることにしています。
「はとバス」広報室の本田寛奈さんは「祝日の多い今月後半に少しでも運行したいとツアーを設定したので、宣言の延長は残念で心苦しい思いです。ただ、行動制限が緩和されれば旅行需要は増えると思うので、かなり期待感を持っています。『やっと回復の兆しが見えてきた』という思いです」と話していました。

経済界からは…

緊急事態宣言の延長と今後の日常生活の回復に向けた考え方について、経済界の反応です。

経団連 十倉会長「政府の方針を高く評価する」

政府が緊急事態宣言の延長と今後の日常生活の回復に向けた考え方を決めたことについて、経団連の十倉会長は「新規感染者の数は減少傾向にあるものの医療現場は厳しい状況が続いており、宣言の延長はやむをえないものと受け止めている。ワクチン接種の進展に伴ってかつての日常生活を段階的に取り戻しながら、社会経済活動の活性化を目指す政府の方針を高く評価する」などとしたコメントを発表しました。

経済同友会 櫻田代表幹事「悪くない判断だ」

また、経済同友会の櫻田代表幹事は夏のセミナーのあとの記者会見で「医療崩壊を避けながら経済をどう守るかのバランスを取る中で悪くない判断だと考えているが、社会に受け入れられることが大事だ」と述べ、政策の実行には国民の理解が欠かせないという考えを示しました。

自工会 豊田会長“経済対策の拡充など求める”

日本自動車工業会の豊田章男会長はオンライン会見で、たび重なる緊急事態宣言の延長による経済への影響について「緊急事態宣言の期間は自動車業界も含め多くの我慢と犠牲を強いられ、仕事を失っている人も多くいる。真面目に働いている国民や企業が報われず、ばかを見るというのが今の日本の現状であり、そんな国には絶対にしてほしくない」と述べました。

そのうえで豊田会長は「真面目に働いている国民が『きょうよりあすはよくなるんだ』と感じられる国にしたいと希望しているので、それを経済対策などに活用いただきたい」と述べ、政府に経済対策の拡充などを求める考えを示しました。