タリバン「勧善懲悪省」を復活 かつて女性の権利抑圧した機関

アフガニスタンで権力を掌握した武装勢力タリバンは、旧政権の幹部などを主要ポストに登用する暫定政権の名簿を発表するとともに、かつて女性の権利を抑圧したとされる政府機関を復活させることを明らかにしました。

暫定政権には女性やほかの勢力の代表は含まれず、今後の統治への不安が広がっています。

タリバンの7日夜の発表では、最高指導者アクンザダ師に近いアフンド師が首相代行として暫定政権を率い、アメリカとの和平交渉にあたったバラダル師が副首相代行として支えるとしています。

いずれも同時多発テロ事件を引き起こした国際テロ組織アルカイダをかくまい、アメリカなどの軍事作戦で崩壊した旧タリバン政権で幹部を務めていました。

また、旧政権でイスラムの規範に従っているかどうか国民の行動を監視し、とりわけ女性の権利を抑圧したとされる「勧善懲悪省」を復活させるとしています。

タリバンは包括的な政権を目指すと繰り返してきましたが、暫定政権には女性や、ほかの勢力の代表は含まれていません。

暫定政権の顔ぶれについてアフガニスタンでは、今後の統治への不安が広がっています。

首都カブールに住む男性は「タリバンは、多くのことを約束したので期待していたが、包括的ではなく、タリバンだけの政権になってしまった」と落胆した様子でした。

また、勧善懲悪省の復活について、別の男性は「20年前にお祈りのことで殴られたことなど、悪い記憶しかない」と話していたほか、女性の1人は「リスクを避けるため、頭髪を覆うヒジャブをかぶって外出するしかないです」と話していました。

「勧善懲悪省」とは

勧善懲悪省は、20年前に崩壊した旧タリバン政権のもとに置かれ、イスラム教の極端な解釈をもとに女性に対し、全身を覆うブルカの着用を強制したり、外出を制限したりしました。

また、映画や音楽などの娯楽も禁止するなど、市民の暮らしに厳しい規制を敷いて、違反した市民には、公開の場で暴力を加えるなど、旧タリバン政権の圧政の象徴的な存在だとして欧米諸国から非難されました。

このため、タリバンが今回、政府機関の1つとして勧善懲悪省を置いたことについて、国際社会からの懸念が強まるものとみられます。

専門家 “1990年代に戻った”

タリバンが発表した暫定政権の陣容について、アフガニスタン情勢に詳しい慶應義塾大学の田中浩一郎教授は「1990年代の前のタリバン政権の顔ぶれが戻ってきていて、タリバン運動から外れることなく、ずっとそこに身を置いている人が中心だ」と指摘しました。

そのうえで、追加の閣僚を加えて幅広い勢力が参加する政権になるかどうかについては「今回の発表が最終形に近いものだと思う。国際社会が納得するような包摂的な政権にはならない」と述べて否定的な見方を示しました。

また、アメリカ政府がテロ組織に指定する強硬派、ハッカーニ・グループのシラジュディン・ハッカーニ幹部が国内の治安を担当する内相代行に任命されたことについて「ハッカーニの一族は昔から極めて高い戦闘能力を持っているため、タリバンとしては、ハッカーニを切ることができなかった。警察などの組織を使って、全国津々浦々にハッカーニネットワークの影響力を広げる可能性すらあり、アフガニスタンの行く末が非常に案じられる」と述べました。

さらに、女性の登用については「女性がタリバンの中枢に加わったことは、これまでもなかったし、今回、タリバン以外のほかの勢力が閣僚に含まれていないことからすれば、今後、女性が入ってくることは、ほぼない。女性が活躍しやすい社会、これまで20年間アフガニスタンが目指してきたような社会の変革を期待することはできない」と指摘しました。

中国「復興に必要な一歩」と歓迎

中国外務省の汪文斌報道官は、8日の記者会見で「3週間以上に及ぶアフガニスタンの無政府状態を終わらせ、国内の秩序回復と復興に必要な一歩だ」と述べ、歓迎しました。

そのうえで「新しい政権が暫定期間中に各民族やグループから幅広く意見を聞いて、国民の願いや国際社会の期待に応えるよう望む」と述べました。