大豆が価格高騰 豆腐など値上げの動き コンテナ不足も要因

豆腐や油揚げなど日々の食卓に欠かせない商品に値上げの動きが出ています。
原料の大豆の価格が高騰し、輸送に必要なコンテナも不足していることが要因で、豆腐メーカーの中にはすでに取引先のスーパーと値上げの交渉を始めているところもあります。

豆腐や油揚げなどの原料になる大豆の取引価格は国産・輸入ともに高騰していて、国産品は大雨による天候不順、輸入品は中国の輸入の増加やバイオ燃料としての需要の高まりなどが主な要因になっています。

また、経済活動の正常化に伴って輸送に必要なコンテナが不足し、運賃も高騰しています。

農林水産省によりますと、豆腐の小売価格はこれまで10年以上値下がりの傾向が続いていましたが、豆腐メーカーでつくる日本豆腐協会などはことし7月「急激なコストアップで企業努力だけでは経営の維持が困難な状況にある」として、スーパーなどの小売業界に対し14年ぶりに窮状を訴える文書を出しました。

豆腐メーカーの中にはすでに取引先のスーパーと値上げの交渉を始めているところもあります。

さいたま市に本社がある豆腐メーカーは、ことし6月からスーパーなどの取引先およそ150社に対し、国産大豆を使った豆腐や油揚げなどの一部の製品について、5%から10%程度の値上げを要請しました。

値上げの要請は12年ぶりで、メーカーによりますと、取引先のおよそ8割からは値上げに応じるという回答が得られたということで、今月以降、出荷価格を上げていくことにしています。

また、輸入大豆を使った豆腐についてもアメリカの先物価格の上昇やコンテナ不足などから今後、値上げを検討せざるをえないとしています。

豆腐メーカー「アサヒコ」の岩崎洋執行役員は「豆腐は30年間、販売価格がほぼ変わらない『物価の優等生』で、小売側としてはライバルより1円でも安く販売したい商品だと思うので出荷価格に反映させないよう企業努力をしてきた。しかし今回は原材料費や物流費が過去に類を見ないほど急激に高騰していてメーカーとしての限界を超えている」と話しています。

大豆は国産・輸入ともに高騰

農林水産省によりますと、大豆の取引価格は国産・輸入ともに高騰しています。

国産大豆の2020年産の平均価格は60キロ当たり1万1295円で、前の年より9%上昇しました。

健康志向の高まりで豆乳や納豆などの大豆製品の需要が伸びた一方、大雨による天候不順の影響で生産量は伸び悩み、3年連続で値上がりしています。

また、食用大豆の国内需要のおよそ80%を占める輸入品も、中国の輸入の増加、バイオ燃料としての需要の高まりなどが影響し、国際指標であるアメリカ・シカゴ商品取引所の大豆の先物価格は去年の夏より一時、60%以上、値上がりしました。

値上げの動き 世界的なコンテナ不足が拍車

豆腐の値上げの動きに拍車をかけているのが世界的なコンテナ不足です。

豆腐の原料になる輸入大豆の多くはアメリカ西海岸の港からコンテナ船で運搬され、日本に届きます。

その後、コンテナ船の一部は中国に向かい、中国で家電や自動車部品、家具などアメリカへの輸出向けの商品を積み込んで再び、西海岸に戻ります。

しかしコロナ後の経済の急回復で世界の物流を支えるコンテナの需給のバランスに異変が起きました。

世界の海運を調査している日本海事センターによりますと、いち早く経済が回復したアメリカの活発な個人消費を背景に、ことし1月から7月にアジアからアメリカに運ばれたコンテナの量は去年の同じ時期に比べて33%増加。

これに伴ってコンテナの運賃も高騰し、中国の上海から西海岸のロサンゼルスに向かう航路の運賃はことし7月、40フィートのコンテナ1個当たり1万1150ドルと感染拡大前の去年1月に比べ6倍に上昇しました。

一方、ロサンゼルスから横浜に向かう航路の現在の運賃は2820ドルで、アメリカ向けと日本向けの運賃には4倍近い開きがあります。

このため海運会社の間では運賃の安い日本向けの航路ではなく、より収益が上がるアメリカ向けの航路にコンテナを集中させる動きが広がりました。

アメリカに荷物を運んだあと、コンテナの多くは日本に向かわず、空の状態のまま中国に戻されます。

空のコンテナを運んでも運賃を稼ぐことはできませんが、荷降ろしの時間などがかからず、通常より早くアメリカ向けの航路に回せるため海運会社は十分に収益を上げることができるのです。

このため日本に向かうコンテナの数が足りなくなるという状況が生まれていて、日本企業の間ではアメリカからの輸入ワインの数を確保できず、販売を休止するなどの影響も出ています。

コンテナの手配を行う物流会社「日新」の中島剛室長は「日本がコンテナを『取り負け』『買い負け』していて、日本にコンテナを持ってくるのが難しい状況だ。およそ30年間、海上輸送に携わっているがこれほどのコンテナ不足は初めてで、サプライチェーンの回し方が変わり、過去の経験が通用しなくなっている。現地の情報をしっかり取ってサプライチェーンを止めないように努めたい」と話しています。

専門家「来年まで運賃高止まり続く」

アメリカに向かうコンテナの運賃が高騰していることについて、国際物流に詳しい拓殖大学の松田琢磨教授は「新型コロナの発生によって中国では多くの商品の生産が停止し、コンテナ貨物の流れもいったん止まったが、去年の夏以降、アメリカで巣ごもり需要が発生したことでコンテナ輸送が一気に増え、価格高騰のきっかけになった。コロナ禍の中で港で荷物をさばいたり、トラックで荷物を運ぶ労働力を十分に確保できない状況もあり、需要が供給を上回り運賃が過去最高水準に達する状況が長期化している」と話しています。

そして、今後の見通しについては「アメリカのクリスマス商戦までは荷動きが活発で、コンテナ不足や運賃の高止まりは続き、価格が正常に向かうのは中国の春節でアメリカへの輸出が少なくなる来年2月ごろになる可能性が高いのではないか。豆腐や納豆などのように販売価格が比較的低く、輸送コストの比率が高い生活必需品は値上げに踏み切らないと苦しくなる場面も出てくるのではないか」と分析しています。