“宣言”解除判断の新指標 政府分科会示す 医療ひっ迫重視

緊急事態宣言の解除を今後、判断する際の新たな指標を新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会が示しました。
感染者数が2週間ほど続けて減少していることを前提に、中等症の患者や自宅療養者の人数、それに救急搬送が困難なケースが減っていることなど、医療がひっ迫していないことをより重視するとしています。

新たな指標は、8日開かれた政府の分科会でまとめられました。

それによりますと、緊急事態宣言の解除を判断する際には、感染者数を考慮するとともにいままで以上に医療がひっ迫していないことを重視する必要があるとしていて、「新型コロナウイルスに対応する医療への負荷」と「一般医療への負荷」の2つの側面での検討が必要だと指摘しています。

そして、判断の際の具体的な指標として、
▽「新規感染者数」が2週間ほど継続して安定的に下降傾向にあることを前提に、
▽「病床使用率」と「重症病床の使用率」がそれぞれ50%未満であること
▽すべての療養者に占める入院できている人の割合、「入院率」が改善傾向にあること、
▽「重症者数」や「中等症患者の数」の減少傾向が続いていること、
▽特に大都市圏では、「自宅療養者と療養などを調整中の人を合わせた人数」が人口10万人当たり60人程度のレベルに向かって確実に減少していることを挙げました。

また、「一般医療への負荷」を見る指標として
▽「救急搬送が困難なケース」が大都市圏で減少傾向にあることを挙げています。

さらに、こうした指標とともに
▽自治体や地域の専門家の意向を考慮することや
▽宣言解除後に感染の再拡大が起きることに備えて慎重に判断することが求められるとしています。

そのうえで総合的に判断するとしています。

政府の分科会はこれまで宣言を解除する際の考え方として、感染や医療の状況が「ステージ3」になり、解除後に「ステージ2」まで下げられる見通しがついていることなどを挙げ、総合的に判断するとしてきました。

今回、分科会は感染の第5波でワクチンの接種が進む一方で、感染力の強いデルタ株が主流になり、重症者より軽症や中等症の患者が増加して医療のひっ迫が起き、自宅療養者も増加したことを受けて、新たな状況に応じた考え方を示しました。

分科会では、今後「ステージ」についても、ワクチンが行き渡る時期に向けて新たな考え方を提案するとしています。

田村厚労相「臨時の医療施設など整備進めたい」

田村厚生労働大臣は分科会の冒頭「今回の大きな波での感染者数は減少傾向になってきているが、重症者や亡くなった人の数はまだ非常に高く、引き続き注意しなければならない。いつまた上昇に転じるか分からず、冬場に向けて、都道府県と連携し、臨時の医療施設など医療提供体制の整備を進めていきたい」と述べました。

西村経済再生相「いまやるべきは医療の強化」

西村経済再生担当大臣は分科会の冒頭で「新規感染者数は全国的に減少傾向が見られるが、重症者数は依然として極めて高い水準が続いている。自宅療養や入院調整中などの方が全国で16万3000人強いて、医療体制は引き続き厳しく、危機感を持って対応しなければならない状況だ。いまやるべきは医療の強化で、自治体と連携しながら取り組みたい」と述べました。

そのうえで、今月12日が期限となっている緊急事態宣言の扱いについて「専門家で議論を重ね、自宅療養や入院調整中の方の指標も加味しながら、判断する必要があるという考え方が整理されたと聞いている。各都道府県と意思疎通を図りながら、医療提供体制などをよく分析、共有し『基本的対処方針分科会』で対応を議論していただきたい」と述べました。

そして、分科会のあと西村経済再生担当大臣は記者団に対し「感染や医療の状況を示す『ステージ』の考え方、そのものを変えるわけではないが、新規陽性者数も重要だが、より医療提供体制を重視して判断すべきだという専門家の考え方のもとで提言がまとめられた。重く受け止め、各都道府県の医療提供体制の状況をよく分析し、共有をしながら緊急事態宣言の取り扱いについて判断していきたい」と述べました。

そのうえで「都道府県と連携し、臨時の医療施設や酸素ステーションの整備を進めながら感染対策も徹底し、感染者数の減少傾向を確実にしていくことが大事だ。合わせてワクチン接種を着実に進めることで国民の命と健康を守り、危機を乗り越えていく決意だ」と述べました。