社会経済活動正常化へ 経団連が提言 接種者の隔離措置免除など

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、経団連はワクチンを接種した人への帰国や入国後の隔離措置の免除など、政府に対して社会経済活動の正常化に向け必要な対策をとるよう求める提言を発表しました。

経団連は、6日午後の会見で新たな提言を発表しました。

提言では足元の感染拡大や医療体制のひっ迫の解消に向けまずは総力を挙げるべきだとする一方で、「今後も一定水準の新規感染が生じる傾向は続くと想定される。社会経済活動の再開・活性化が可能となるよう今から必要な対策の検討などを始めることが重要だ」と指摘しています。

そのうえで、ワクチン接種が進む欧米では海外との往来も活発になっているとして帰国や入国後の隔離期間を現在の14日間から最長でも10日間に短縮するほか、接種した人に対する隔離措置の免除や接種証明のある外国人へのビザの発給などを早急に検討すべきだとしています。

また、重症化率や死亡率の低下を前提に一般の病院やクリニックでも治療できるようにすることなども求めています。

会見のあと、経団連の十倉会長は、総理大臣官邸を訪れて菅総理大臣に提言を提出しました。

十倉会長は、「ワクチン接種などがさらに進み、重症化率が下がり、医療崩壊を防ぐことができたら10月から11月ごろにはワクチン接種を受けた人から社会経済活動を立ち上げていくべきだ」と述べました。

大手商社 入国時の隔離措置緩和を求める声

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、入国時に14日間の隔離措置が取られていることについて、大手商社からは海外との往来が制限され、新規のビジネスを進めることが難しくなっているとして、緩和を求める声が上がっています。

大手商社の「三井物産」は、感染拡大を受けて在宅での勤務を強化し、不要不急の海外出張については見合わせを続けていますが、欧米などが入国時の隔離措置を緩和しているため、ビジネスで出遅れるのではないかと焦りを募らせています。

人事担当役員が必要と判断した案件については、特例で海外出張を認めていますがワクチン接種を2回済ませていても日本に戻ると、自宅などで14日間待機しなくてはなりません。

さらに、水際対策として政府が定めている外国人の入国制限もあり、海外企業の関係者を日本に招いて新規の商談を進めることが事実上、不可能となっているのです。

実際に、この商社で、医薬品事業への投資などを担当する社員は、この夏、相手先であるロシアの企業経営者を日本に招くことができませんでした。

このため、ワクチンの接種証明がある人を対象に隔離措置が緩和されている第三国のイタリアまで行き、交渉を行ったということです。

この社員は、「大型の買収案件は、ひざをつき合わせて長期間、対面でやる必要がある。コロナ禍でも世界のビジネスは回っていて、日本に関心がある企業とのやり取りでは一つの障害となっている」と話していました。
経団連の副会長も務める三井物産の安永竜夫会長は、「日本経済は海外市場やサプライチェーンとつながって運営されている。ビジネスの次の一手をしかけるには、オンラインでは限界がある。日本経済が孤立するのはよくなく、安全管理を前提としたうえで一定の緩和を目指すべきだ」と述べ、隔離措置の緩和などを求めていました。

隔離措置の免除など 旅行会社からも期待の声

経団連が提言に盛り込んだワクチンを接種した人を対象にした帰国や入国後の隔離措置の免除などについては、旅行会社からも期待の声が上がっています。

企業の出張手配などを手がける東京都内の旅行会社は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、取引先の企業のほとんどが1週間から10日程度の短期の海外出張を見合わせていて、現在は、依頼の大半が長期出張や海外赴任の手配に限られています。

このため、会社のことし4月から先月までの取扱高は感染拡大前のおととしの同じ時期より8割程度落ち込んでいるということです。

渡航先の国や地域によっては、PCR検査での陰性確認やワクチン接種などの条件付きで隔離措置が免除されていますが、取引先の企業からは、出張期間に加え、日本に帰国したあとの14日間の隔離期間などを含めると、社員が不在となる期間が1か月にも及び、簡単に出張させられない、といった声が多く寄せられているということです。

需要が落ち込む中、会社では、去年7月から取引先の企業に代わって、アメリカや中国などに滞在する現地スタッフが展示会に参加したり、商品を買い付けたりするサービスを行っています。

ただ、本業の売り上げをカバーするまでには至っておらず、会社としては、隔離期間のさらなる短縮を期待しているということです。

IACEトラベル東日本統括営業部の瀧上大輔部長は「帰国後14日間が1週間以内などになると、企業の動きも多少変わると思う。隔離措置が緩和されればうれしい状況ではあるが、取引先の企業がどう判断するかなので、私どもとしては最新の情報を提供し、安心して渡航できる状況を作っていきたい」と話していました。