「UDタクシー」東京パラ後も増やす方針 相次ぐ乗車拒否も課題

5日、閉幕する東京パラリンピックにあわせ、バリアフリー化を進めてきた国は、車いす利用者も乗りやすいよう設計されたタクシーを今後5年で9万台に増やし取り組みを加速させる方針です。
ただ、車いす利用者に対する乗車拒否も相次いでいて、ハード面の整備に加え、運用面の取り組みが大会後の課題となっています。

東京大会の開催にあたり、主要な鉄道の駅や道路などのバリアフリー化が進められ、タクシー業界では、車いす利用者も乗りやすいよう設計された「ユニバーサルデザインタクシー」が広がり、招致が決まる前の数百台程度から2019年度にはおよそ2万1700台に増加しています。

国土交通省では、東京大会のあとは地方でも導入を加速しようと、今後おおむね5年で、▽各都道府県のタクシーの25%程度まで増やし、▽福祉タクシーと合わせておよそ9万台に増加させる方針です。

一方で、車いすの利用者が乗車を拒否されるケースは相次いでいて、国は2017年度から昨年度までにタクシー事業者への行政処分や指導を36件行っています。

車いすの利用者に、道路運送法で禁じている乗り降りの介助の追加料金を設定している事業者もいて、国土交通省は、▽正当な理由なく乗車拒否をしないことや、▽適切な料金の取り扱いを求める通知を出しています。

東京大会を機にハード面の整備が加速する中、今後は▽知識習得や意識改革のための事業者や運転手への研修の充実のほか、▽車両の改良や開発など、障害のある人が利用しやすい運用に向けた取り組みが課題となっています。

新たな研修始めたタクシー会社

東京大会を機にハード面のバリアフリー化が加速する中、タクシー事業者の中には、実際の場面で適切に運用できるよう新たな研修を始めた会社もあります。

愛知県にあるタクシー会社は、去年8月、駅のタクシー乗り場付近で、電動車いすの利用者が「ユニバーサルデザインタクシー」の乗車を希望した際、運転手が重量の関係で乗せられないと勘違いして乗車を断ったため、国土交通省から行政処分を受けました。

会社ではそれまでも車いすの乗り入れの実習などを行っていたということですが、この事案を受け、▽すべての運転手が年に2回は実習出来るよう研修の機会を増やしたほか、▽電動車いすの乗り降りの手順などを写真付きでまとめたマニュアルも独自に作成しました。

パラリンピック期間中も営業所では実習が行われ、地元の福祉団体の職員も初めて参加する中、運転手およそ20人が団体が用意した電動車いすを使って、乗り降りさせる手順などを実践的に学んでいました。

電動車いすを使った実習はこの日が初めてで、焦りから手順を間違えたり、固定するベルトの締め付けが不十分だったりする場面もみられました。

団体の職員は、
▽スロープで車両に乗せる際は勢いで押し込まないことや、
▽利用者が不安にならないようこまめに声をかけること、
▽車いすを扱う際の具体的なポイントなどをアドバイスした上で、「車いすの利用者はタクシーによって生活の幅が広がることに期待を持っているのでぜひ理解を深めてほしい」と呼びかけていました。

参加した運転手からは、「実際にやってみると早くしなくてはと、焦って手順を忘れてしまった。不安を取り除くため定期的に練習したい」とか、「気付いた点を次に生かして、障害のある方に安全に気持ちよく、そして遠慮なく使ってもらえるようにしたい」と話していました。

タクシー事業部の加藤水竹部長は、「以前、乗車拒否をしてしまい申し訳なく思っています。福祉団体の協力を得ながら、実践的な研修で運転手に慣れてもらい今後は乗車を断ることが絶対にないようにしたい。東京大会の開催でUDタクシーが増える中、公共交通機関の一員として、障害のある人もない人もすべての人がよりより移動ができるよう共生社会を追求していきたい」と話していました。

障害者団体「障害ある人もない人も同じ乗り物に」

障害のある人たちで作る団体は、東京大会で高まった共生社会を目指す機運を、さらに前に進めていくことが大切だと話しています。

障害のある人たちで作る団体、「DPI日本会議」がおととし、「ユニバーサルデザインタクシー」について、車いす利用者に調査したところ、120件中、27%にあたる32件で乗車を断られたケースがあったということです。

利用者への聞き取りでは、
▽運転手が手順を把握していて対応がスムーズだったとか、
▽親切だったといった声もあった一方で、
▽研修を受けていても、乗せたことがなく方法がわからないと言われたり、
▽車いすの乗り降りは時間がかかるため受け付けていないと言われたりして、乗車を断られた例もありました。

団体では、乗車の際に座席をたたんだりスロープを用意したりする工程が複雑で、運転手の負担が大きいという課題もあるとして、自動車メーカーに改良や開発も求めているということです。

自身も車いすを利用する「DPI日本会議」の佐藤聡事務局長は、「東京大会を契機にユニバーサルデザインタクシーの数が大幅に増え、街なかで見かけることが日常の光景となり利便性が良くなりました。ただ、いまも乗車拒否はありまだまだ利用しにくいので、当事者の思いも含めて理解してもらえるよう、事業者には研修を繰り返し行ってもらいたいです」と話していました。

その上で、「障害のある人もない人も、同じ乗り物に乗れ、同じように会社で働け、学校で学べることが目指す社会だと思います。東京大会でバリアフリーや共生社会への意識は広がり、一緒に生きていく社会を作るきっかけになりました。これを止めることなく継続し、前に進めていくため、残った課題に取り組んでいくことが大切だと思っています」と話しています。