パラリンピック「手話の人しか勝たん」で話題の人

「手話の人めっちゃ好き 表情豊かでいいね」

「オリンピックの手話の人しか勝たん」

パラリンピックの開会式、またオリンピックの閉会式でも豊かな表情と大きな身ぶり手ぶりの手話通訳にネット上で多くの反響がありました。

話題の手話の人は幼い時に聴力を失った戸田康之さん。

聞こえない中でどうやってアナウンサーのコメントを通訳したのか、そして通訳への思いを答えてくれました。

手話通訳のチームプレイ

戸田さんはNHKの手話ニュースのキャスターも務めています。

1歳の時に中耳炎が原因で聴力を失い、反響の多さなどについてはメールで答えてくれました。

「多くの方がオリンピックやパラリンピックをきっかけに手話やろう通訳に関心を持っていただいたことはとても喜ばしいことだと思います」
聴覚に障害がある中での通訳はチームプレイでした。

まず手話通訳士の資格を持つフィーダーと呼ばれる健常者がアナウンサーのコメントや会場でどんな音がしているのかを手話で戸田さんに伝えます。

すると、ろうの人の感覚や習慣、文化的な背景を考慮して、もういちど手話に通訳し直すのです。

「私に音声情報を伝えてくれるフィーダーの存在はとても大切です。お互いに役割を分担しチームで通訳を行っています」

手話の人しか勝たん

ネット上ではパフォーマーと一緒に踊ったり、楽器を演奏したりするような戸田さんの身ぶりや手ぶり、目を見開いたり眉毛をつり上げたりする豊かな表情に注目が集まりました。
「手話の人がわあ!って驚いててかわいいと言うか一緒に見てるみたいで楽しい。笑」

「閉会式の手話の人めっちゃ好き 表情豊かでいいね」
若い人が使うこんなことばで、ツイートした人もいました。

「手話の人 紅蓮華のとき鬼瓦してて大草原wwwwww」

「オリンピックの手話の人しか勝たん」

豊かな表情は文法のひとつ

ネット上の反応に対して戸田さんは「表情を豊かにしようと思ってやっている訳ではないんです」と答えてくれました。

「眉毛の動きや目の開き具合、上体の動きなど含めて、手話を構成する重要な文法のひとつなんです。例えば眉毛をつり上げると疑問を表すように、眉毛の動きひとつ異なるだけで意味が異なります。文法を駆使して通訳をしていたということです」

テレビをじっと見つめていたのは

また通訳をせず、モニターの画面を静かに眺めている様子も関心が集まりました。

その理由は…。

「手話は視覚言語です。目を合わせて話をします。画面越しに私に見つめられていると『何か話し出すのではないか?』と思われてしまいます。そこで、会場の音声がないときには『今は音声情報はありません、会場をみてください』という意味を込めてモニターを見るという方法をとりました」

聴覚障害の私が通訳をする意味

戸田さんは聴覚障害がある人が通訳を担当することの大切さも教えてくれました。

戸田さんによると「手話」とひとことで言っても日本語に手話の単語を一語一語あてはめている「日本語対応手話」と日本語とは文法構造が全く異なる手話言語「日本手話」に分けて考えられるそうです。
「日本手話」はろう者にとっての母語にあたり、聴覚障害がある人が通訳を担うことで、より細かな情報やニュアンスを伝えることができるということです。

「聴者通訳でも日本手話が巧みな通訳者もたくさんいます。ただ、ろうの文化やろう者の価値観、日本手話の特徴、独特な言い回しなども含めて、同じろう者の通訳だと安心感が高いということもあると思います」。

画面の隅でなく

オリンピックもパラリンピックも通訳者たちは画面の隅に出るのではなく、大きく映し出されました。

戸田さんは「大きく映ったことで、ろう者にとって見ていて疲れることなく、楽しむことができたのではないかと思います。実際に『最初から最後まで楽しむことができた。感動をありがとう!』と言ってくれた人もいます。手話通訳者が大きく映るレイアウトが今後増えてくれることを願っています」と伝えてくれました。