東京以外の地域から医師 都内でコロナ患者の往診を支援

新型コロナウイルスの感染拡大で自宅で療養する人が増える中、都内の医療機関では、東京以外の地域から医師に来てもらい往診に参加してもらう取り組みを始めました。

都内などで新型コロナウイルスの感染者の往診を行っている東京 港区の「悠翔会」では、先月中旬以降、感染者への往診の依頼が相次ぎました。

感染者以外の往診を制限しても対応しきれないほどで、理事長の佐々木淳医師がSNSを通じて全国の知り合いの医師などに協力を呼びかけました。

呼びかけには全国の30人余りの医師が応じ、先月下旬からはその最初のケースとして岐阜県から来た医師が往診に参加しています。

この日は、吐き気などの症状がひどく入院を待っている都内の女性の自宅を訪問して、症状を観察し、点滴を行いました。

感染対策で短時間しか滞在できないため、その後も、電話で、女性の中学生の娘に、点滴中の注意点などを教え「大変だけどよくなるときが来るからもう少し頑張ってね」などと声をかけていました。
岐阜県から来た市橋亮一医師は「1人でも多くの患者を助けたいという気持ちで業務を分担してもらって来た。岐阜県でも感染が増加していて、今後、症状の重い人を在宅で見なければならない可能性もあるので、今回の経験を生かしたい」と話していました。

「悠翔会」の佐々木淳理事長は「首都圏では災害のような状況が続いていて、全国の医師と連携する態勢を作ることで1人でも多くの人に医療を提供したい」と話しています。

自宅療養の増加に対応 往診は1日3チーム稼働

この医療機関では、常勤、非常勤合わせておよそ70人の医師がいて、通常の往診に加え、先月から新型コロナウイルスに感染した患者の往診も行っています。

これまでは複数の医師で手分けして往診を行ってきましたが、感染の拡大で自宅で療養する人が増える中、応援の医師も加え、感染した患者の対応を専従で行う態勢を取ることにしました。

医師、看護師、ドライバーの3人1組のチームを作り、1日3チーム稼働させます。
それぞれ往診用の車に乗って都内に分散して待機し、依頼が入ると、オフィスにいるメンバーが、依頼先の最も近くにいるチームに連絡し現地に向かってもらいます。

さらに、一度診察をして経過観察が必要な患者が100人近くいるため、体調が急変したときに24時間相談できる電話センターを設けたほか、1日数回、健康状態を確認するための電話をかけるチームも作りました。

このほか、酸素の吸入が必要な患者にいち早く酸素濃縮装置を届けるため独自に装置を確保して運搬する専門のチームも作りました。

こうした態勢を来月末まで維持することにしていますが、運営に必要な人件費や機器の確保や運搬などで1200万円ほどの赤字が見込まれるということで、不足分はクラウドファンディングで募ることにしています。
「悠翔会」の佐々木淳理事長は「こうした態勢は、より患者が安心できる環境を整備したいという医療従事者としての思いでやっている部分もあり、すべてを行政に負担してもらうのは難しいと考えている。一方、医療機器がひっ迫することで確保に費用や手間がかかることもあるため国や自治体には酸素濃縮装置などの確保を要望したい。ふだんから在宅医療を専業としてやっている私たちの社会的な使命だと思っていて、周囲の協力も得ながら持続可能性を担保していきたい」と話しています。